月別アーカイブ: 2019年1月

トークは2月11日

昨年末から年をまたぎ、正月を過ぎてもまだ読んでいた、中尾拓哉さんの長編論考『マルセル・デュシャンとチェス』を読み終えました。この本では、デュシャンがなぜ《(通称)大ガラス》の制作を中断してチェスに没頭し、そして秘密裡に遺作《1.落ちる水 2.照明用ガス、が与えられたにせよ》を制作し突如発表したのか?という謎について、デュシャンのチェス哲学に沿って推理していきます。私の頭脳ではチェスのルールが理解できず、さらに話が幾何学にまで及ぶと、なんともお手上げ状態ですが、持ち前の想像力と曲解術を駆使して、 チェス盤にデュシャン脳が交差するダイアグラムの迷路をどうにか(たまに飛ばしながら) 脱出できました。それはちょっとした達成感…。
「重要作品は5点あれば良い」とデュシャン自身が語ったように、タブローとの決別、レディメイドの誕生、未完の大ガラス、沈黙〜からの〈遺作〉と要所を見極めた無駄のない活躍。なんと完成度の高い芸術家人生!と驚嘆しつつも、この完璧な美の賢者にも何処かスキがあるはず、と探りながら読むのも楽しい『デュシャンとチェス』です。

〈そして〉この著者である中尾拓哉さんと2月11日、銀座蔦屋書店にてトークイベントを開催しま〜す。デュシャンよりもピカビアを愛する私ですが、デュシャンについて触れ、そしてかざまランドについてもお話しする予定。是非ともご観覧くださいませ!

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「チェスとデュシャンは無関係だという根拠なき風説がこの国を覆っていた。」
…そのようなデマ拡散の事実を知らずに私は安穏と暮らしていた(今は違う)。

★告知★
『予感の帝国』刊行記念トーク会 &サイン会
かざまランドへようこそ!〜サチコとアートと〇〇と。

場所:銀座蔦屋書店ブックイベントスペース
日時:2月11日 (月)  19:30〜21:00
*要申込*参加料 2000円
→詳細情報はコチラ

スーパームーン

先週月曜日の夕暮、街を歩いていると通常より巨大な月が出ていることに気がつき「これがスーパームーンか!」と驚いて、こんなにも月が不気味に明るく大きいので、きっと街の人もスーパームーンの噂をしているはずと期待し、路上で立ち話をしている二人の中年男性の会話に耳を攲てると「動物のアブラを全部溶かす薬品はどこで手に入るか?」という相談をしていた。聞いてはならないことを聞いてしまったような….うっかり他人の話を盗み聞きするものではない。動物の脂を全部溶かす必要にせまられる事態とは?(まさか動物とは人間を指す隠語ではないよね?) 満月は人心に悪いさざ波を起こさせるという。巨大満月ともなればその数倍の魔を呼ぶに違いない。

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(これがスーパームーンだったのか定かではないが)真正スーパームーンは来月19日に昇るという。そしてその日は奇しくも私の誕生日に当たる。巨大満月の影響を受けないように、おとなしく過ごそう。

芸術新潮は今日発売です

本日25日発売の『芸術新潮』2月号〈奇想の日本美術史〉特集にて、我がディスリンピック競技場の中央部分が掲載されました!
「平成の曾我蕭白になりたい」という私の夢は平成終了までの3ヶ月以内に実現されることはなく(否、永遠に無理だろう)、それでも平成ギリギリ〈奇想の系譜〉に名を連ねることが叶い、このように印刷物に名前が残れば、後世の読者が私のことを奇想の画家と認知してくれる望みはある(かも)。

『ディスリンピック2680』全画面に描かれた人間(と人間みたいな奴)は総勢約2.400人で、今回誌面に採用された中央部分には1.200人。これは足立元さんがカウントしてくれた人数で、作者である私はこの大人数にほとほとウンザリし数える気力がなかった。特に中央の人文字(マスゲーム)は、下絵段階でパースに苦戦し、彫りと刷りでは周囲の描写との調和に苦労した。丸木美術館で徹夜して、それでもオープニングに間に合わなかった箇所がまさにこの人文字地獄!

全体主義、統制社会、逆ユートピアの呪いとお祭りを表現するのに不可欠だった動員人数は2.400。芸術新潮でご覧いただけるのは、そのうちの1.200。掲載されてない左右の場面は画集『予感の帝国』観音ページを参照、もしくはこれから国内2カ所で巡回予定の本作『ディスリンピック2680』の展示を待たれたし!

世界をディ刷る風間サチコ vs デロリ・テロ!!!
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煉獄山(ディスリンポス)の乙女を総動員しても甲斐庄楠音の地獄美女に太刀打ちできそうも無い。

滅亡諸説

森美術館『カタストロフ展』の最終日、来場者が展示室の壁やボートに「未来へのメッセージ」を寄書きしていくオノ・ヨーコさんの作品に、私は亡の字(なくなる君)を書いてきた。閉館までの数時間のうちに上書きされてなくなる可能性もあり、なくなる君の未来は危うい。

最新の研究によると、温暖化の影響で北極圏の永久凍土が溶けて、氷に封じ込められていた数万年前の古代ウイルスがゾンビのように蘇り、この未知の病原体によって世界的パンデミックが起きる可能性があるという。また凍った大地に眠る累々の屍が溶解すると大量のメタンガス、二酸化炭素などの温室効果ガスが発生し、さらに気温が上がり氷が溶けるとの予測も…。現在地球上に君臨する人類が、いついかなる原因で滅亡するか知れず、恐竜のように絶滅することだってあながち有りえないことではない。

恐竜からの警告(火の用心)
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この博物画カードには、ボーボーと火を吐くプラチオザウルスとヒプシロホドンが描かれている。さもあれば数多くある恐竜滅亡の学説に〈失火による山火事説〉も追加しなければなるまい。

(亡〜)
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どこにいるかわかるかな?

あなたへのおすすめ履帯

先日またもヤフオクから変なコレクションをおすすめされた。今回のおすすめの逸品は【実物/wwⅡドイツ軍4号戦車38cm履帯/連結ピン付き】お値段は定額4万5千円!実戦で使用した本物なら価値があり、お買い得なのかもしれない (けど私は買わない) 。ヤフオクと連携する電脳組織は、蓄積されたデーターによってユーザーの人物像を勝手に割り出し、虚像〈あなた〉の嗜好に合う品を選んでくれているのだろう。今までのおすすめコレクション〈液化鉱物・古いアンプ・廃車・戦車部品〉などを総合し見えてくる像は《ゴミの好きな中年変人(ヒマ人)》でこれら商品は欲しくないが、分析は遠からず当たっていると言える。

あなたへのおすすめの…
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履帯1ピース4万5千円(連結2ピース12万円)

本物4号戦車よりも…
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4万5千円をベニヤ資金にして、写真右上の模擬戦車を実寸大スケールで作りたい。

(そして本当に)あなたへおすすめの本
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本日より銀座蔦屋書店にて
『ようこそ!かざまランドへ!』フェア開催
特設本棚に於いて真におすすめの優良書籍をご紹介!我が『予感の帝国』と併せておすすめしま〜す。

販売促進2019

初作品集『予感の帝国』は恵比寿ナディッフでのフェアに続き、明後日21日より、銀座蔦屋にて販売促進活動を開始します。特設ミニコーナーでは『予感の帝国』のほか、私の推薦図書(計6冊)を陳列販売予定で〜す。これらの本に添える解説文を年末から書き続け、一昨日やっと書き上げて提出。この文章はおそらく本の横あたりに掲示されるはずです。

「解説文が難しい」「読めば読むほどわからない」と評判の私の作品集は、企画当初は解説文無しの予定だったが、作品鑑賞のヒントがあった方が親切だ。という編集氏らのご意見によって〈解説付き〉に変更。わかりやすさを重視し、本人執筆を回避できそうな空気だったのに、いつの間にか私自身が書くことに…。かくして私が書いた大量の解説文は、説明するほど理解から遠ざかる不条理な存在となった。《散文詩あるいはダダやシュルレアリズムがやった、あの「言葉遊び」や「自動記述」に近いムードに感じ取ってくだされば、なおありがたいと思う。(絵画者★あとがきより)》とご自分の文章に対し謙遜をされた中村宏先生の弁を借りて、私の文章も「自動記述」と同様に理解する必要がなく、なんとなく読んでいただければありがたい。(この窓外の黒化粧も)

皆様におすすめする本
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(偶然) 表紙が青っぽい推薦図書(の新装版)は銀座蔦屋で (1/21~2/28) 購入可能

ペタンコ元年

新元号予想アンケートの結果、1位「平和」、2位「和平」、3位「安久」だったという。平成との混同をさけるため「平」の使用はまず無いだろう。3位の安久は〈あんきゅう〉と読むのだろうか?あんこがキュウっとはみ出たペタンコの餡パンを連想させるが悪いかんじはしない。

平成28年の海洋調査で、ものすごく平らでちっちゃい新種カニが小笠原海域で発見された。そして昨年のちょうど今頃『ペタンココユビピンノ』という可愛い名前がつけられた。ペタンコは平ら、コユビは小指。ピンノとは何だろう?私はこの名前がとても気に入ったので、フラットな新時代到来を切に願う皆様のためにも、ペタンコを新元号に採用していただき、ペタンコ元年を祝したい。

路面で車両に轢かれてペタンコになったリベット/ワッシャー/アルミの蓋などの円形の金属類が、近眼の私には小銭が落ちているように見える。小銭でないことを確認したのち、拾ってポケットにしまう。たぶん本物小銭であっても拾い、ポケットに収めオマワリさんに届けず使用する(かも)。


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子供でも拾わないが私は拾う。

昔ばなし

『まんが日本昔ばなし』のナレーションをしてた市原悦子さんの訃報をニュースで知りました。昨年夏に亡くなられた常田冨士男さんとともに、日本の鬼の話しを聞かせてくれたお二人が鬼籍に入られたわけですが、地獄極楽の審査の際には、まんがのような閻魔様にお会いできたでしょうか?
小さい時から『日本昔ばなし』を土曜の夕方に毎週欠かさず見ていたはずなのに、恐ろしい話しの回ばかりが記憶に残り、ほのぼのとした物語はほとんど忘れてしまいました。(夕食どきだったので、食卓のオカズに集中してたせいでもある。三人兄弟なのでうかうかしてられない!)
もののけ/呪い/因果応報/仇討ち/祟りなどの話も多く、子供向けにしてはハードな面のあるこのテレビ漫画は、あの昭和の大フィクサー川内康範先生の発案だと知りました。さすがは死ね死ね団の作者。暗黒面も公平に扱う康範先生です!

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隣家の屋外駐車場に『まんが日本昔ばなし』のミニ絵本が多数陳列されているのを見た。野良猫が読むにはちょうどよいが、字の読めない猫は絵をながめるしかない。

逃げ、破壊する。

千種総合教室の洋裁指導者が敵視する《着崩れ》とは一体なんなのか?
…それは『手を挙げると上着の前が開いてしまう』現象のことなのだ。

日常生活での何気ない動作、例えば電車の吊革につかまる、バンザイをするなど、そんな腕の上げ下げによって生じる「前とじの開き」を指導者は、〈逃げ破壊する〉着崩れた醜態だと糾弾している。私たちが腕を上げたその時、上着の左右の前合わせは「逃げ」そしてだらしなく開き「破壊」してしまう…無意識に繰り返されてきた現代衣服の敗走と破壊活動。世紀末的なこの状況を打開し勝利せんと、かの指導者が発明したのが『特許』であり、いまだ着崩れを許す大衆にむかって革命(特許)を宣傳したのがこの看板群である。

〈ハイセンスな羨望の素敵な魅力〉
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「此の開きを変える事出来る」
素敵な明日が見えてくる
あらゆるヒントと答えに出逢える
深く、美しく本物、時が贅沢に流れる
(上着を閉じれば…そこから理想郷が広がる)

〈逃げ 破壊する〉
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(理想を謳う革命家は、白を黒だと断言する勇気を持たねばならない。)
左の現代悪を示す破壊した着衣例と、特許スタイルのポーズは明らかに違う。
悪=一般の女性は手を頭より高く挙げ、善=特許の女性は脇を締め気味に、手は肩付近までしか挙げていない。要するに、条件が違うので全く比較になっていないと言えるが、これより腕が上がらない設計の (窮屈な) 上着である可能性もある。

〈人生勝利の源泉〉
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ちょうどこのとき自作の上着を着ていたので、門を叩き指導を仰ぐべきだったような気がする…(がそんな勇気は無い)。細かい採寸で体にピッタリ (窮屈) なこの服は、腕を上げても逃げ破壊しない!

人生勝利の源泉

今から27年前、武蔵美学園油絵科友人の実家(名古屋市)に遊びに行き「さっちゃんに見せたい場所があるの…」と案内された友人一推しの名所は、『千種総合教室』という名の人生勝利の源泉でした。洋裁教室から泉のごとく湧き出た発明と説諭(上着に関する愛憎)は、古ぼけた長屋のアウトサイドまで止めなく拡張していました。さすが一目置いていた友人が「ぜひ見て!」と推奨する物件。「わぁ!すごーい!!」という驚嘆の声を押し殺して、ヒソヒソ声で(これは素晴らしいね)と感想を述べながら、静かに勝利のヒント集を写真機に記録し現場を後にしました。

〈服は人間のパスポート〉
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「特許技術を廻せば 無限のデザインが生まれる 服は人間のパスポート わが身を包む服」二階の看板に大書きされたポリシー

〈宝の山〉
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特許洋裁の真理を通行人に啓蒙する展示品の数々

〈自由タイム〉
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「生徒募集:特許この宝の山本物の力どこよりももっと進んだ技術学ぶことの素晴らしさ自由タイム3ヶ月知恵こそ人生勝利の源泉です」

〈時代の音〉
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「基礎原型の発明/ほんとうの時代1991年がここから始まる。」

…楽聖らしき人物が「時代の音」を予言するこの看板には、旧来の上着の欠点『着崩れ』を駆逐し本物の豊かさを手に入れよう。という洋裁指導者の綱領が書かれている。
制圧すべき『着崩れ』とは何か?(真相は次回)