月別アーカイブ: 2019年2月

推薦文(2) 慈善週間

〜推薦文(2)『慈善週間または七大元素』〜

極めて謎めいたタイトル『慈善週間または七大元素 (小説)』に魅かれて手に入れた古書は、文章を読む小説ではなく、コラージュ作品に編まれた物語を読む作品で、マックス・エルンスト《コラージュ・ロマン》シリーズの三作目でした。巧みに切り貼られた銅版画の陰影と、そこに生じる不気味なぎこちなさは、睡眠時に見る整合性に欠いた映像を想起させ、ページを繰るたびにそれは甦る。……..
七大元素〈泥・水・火・血・黒・視覚・未知〉によって構成された一週間『慈善週間』とは何だろう?理性の昼から解放された不条理の闇。ブルジョア婦人の降霊術。変な夢を見た後ろめたさ…。古雑誌と七大元素の魔術的合成は、慈善家のようなお節介さで無意識を暴露する。〈見える詩〉の断片を繋いだコラージュは、滑稽でおそろしい夢の尻尾をとらえた物語(ロマン)なのです。

『慈善週間または七大元素(小説)』
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マックス・エルンスト
巖谷國士:訳  野中ユリ:装丁
河出書房新社 (1977年発行)

火曜日 元素—火 例—竜の宮廷
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入りたまえと彼は言ったが明かりがつくと誰もノックなどしてはいなかった.
(トリスタン・ツァラ『狼が水を飲むところ』)

推薦文(1)未來のイヴ

今年は閏年でないので2月は28日が最終日。そしてこの日をもって銀座蔦屋書店で展開していた〈予感の帝国:かざまランドフェア〉も終了します。特設コーナーでは作品集『予感の帝国』をはじめ、缶バッヂ/階級ハンコ文字の布袋/サバイバルこけし等が展示販売され、私の推薦図書5種も書下ろし推薦文とともにディスプレイされてました。これらはあと2日後には書架から姿を消すと思われますが「陳列に気がつかなかった」或いは「読むのが億劫」などの理由で未読の諸氏の為に、改めてここに(無理やり読ませる魂胆で) 文章を掲載しま〜す。

〜推薦文(1)『未來のイヴ』〜
人命よりも発明を優先する冷酷な科学者エディソン博士は、唯一恩人と敬う青年貴族エワルド卿の〈恋人が絶世の美女なのに頭が空っぽ〉という深刻な悩みを解決すべく、完全無欠の人造人間「ハダリー」に、恋人の外見をそっくりそのまま複写する計画を実行に移すが…(さて如何に?)。
….究極の知性を持つ高貴な霊体・ソワナを甲冑に宿した機械の貴婦人ハダリーは、目には見えない「無限世界」を雄弁に語り、現世的な「理性」と「常識」を罵倒する。彼女にとって俗世に生きる者、生みの親である博士も(愛するエワルド様ですら!)軽蔑の対象である。元恋人の美貌を完コピしたハダリーが、人間エワルド様のプライドを傷つけて逆上させる場面は最高です!優美な文章に織り込まれた、合理主義に対する痛烈な皮肉と笑い。その先見性は、SF小説の先駆け以上の価値があります。

《 無常ヲ觀ジテ以ッテ永遠ヲ探求セヨ 》
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電氣學者の手は何物かの上に壓しあてられたが、エワルド卿にはそれが何であるか、しかとは見分けがつかなかつた。……..
——ハダリー!(と遂に彼は大聲で叫んだ。)

『未來のイヴ』
ヴィリエ・ド・リラダン
齋藤磯雄 :訳(創元ライブラリ)

ポーランド予習

遠い遠い見知らぬ土地、ワルシャワに渡航するにあたり、私はパスポート更新を済ませ、そしてポーランドの歴史と文化を予習するためにポーランド装甲車図鑑を入手しました。
1930年代、ソ連の次に装甲列車を所有していたポーランド共和国は、自動車を武装改造した装甲車も豊富!この本では第二共和国時代 (1918〜1939年)の素敵な装甲車の数々が、ひどく不鮮明な写真で紹介され、私には読むことのできないポーランド語で解説が書かれています。(暗い写真を見よう)

(最近ヤフオク戦利品)
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装甲車図鑑と恐竜図鑑キーホルダーとポーランド装甲列車ハガキ
鉄板と砲塔で武装した装甲列車は、兵士/兵器/物資などの輸送で活躍したが、軌道上しか移動できないのでレールを破壊されただけで走行不能になり、また恰好の爆撃対象になる長い巨体がたたり(恐竜のように)絶滅。灰色の装甲列車車両が、不気味な流線型列車とともワルシャワ鉄道博物館で屋外展示されているという(が、たぶん見にいく時間がない)。

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魅惑のポンコツ感

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不安感を誘う造形

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伝書鳩を収容する車ではない、側面の方眼は何か?

ディスリンピック津々浦々

昨年の12月下旬に受けた共同通信社によるインタビュー取材の記事は、1月17日付から全国の地方新聞に配信され、北から南に、秋田さきがけ新聞/山形新聞/日本海新聞/茨城新聞/埼玉新聞/千葉日報/信濃毎日新聞/大阪日日新聞/徳島新聞/長崎新聞/沖縄タイムズ…と多数の新聞に掲載されました。
爆笑顔の私とディスリンピック画像の掲載されたその記事には、人間の愚行に憎悪する反面、基本的にトーチカとか戦車の形体が好きなことなどが書かれています。
文中では「トーチカ (コンクリート製の防御陣地)」とカッコ付きで丁寧な注釈がついているので、トーチカ予備知識を得た全国の皆様は、日本各地に残存するコンクリート製の不思議な構造物を見て「これがトーチカか?」と興味を持たれることでしょう。

(行ったことのない見知らぬ土地で)
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掲載された新聞の数は合計11紙!

(時には虚偽のポーズで…)
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『マカロニほうれん荘』に登場しそうなコミカルな風態のカメラマンの要望で、作業机に向かい何か描いているフリをしている私は、過去に「きんどーちゃんに似ている」と言われたことがある。

中年時代は狂王気分で

CDや本を1点づつ揃えず、セットや全集でまとめ買いするのは、中高年に見られる傾向だと思っていましたが、本日(2/19)誕生日を迎え、中年ど真ん中というべき年齢である私も、この購買行動がいよいよ顕著になってきた!今年に入り「サティ作品集CD13枚セット」「ブーレーズ指揮:ニーベルングの指環DVD7枚セット」を立て続けに購入したことは、歳をとるごとに一年が短く感じられるようになり、何かにつけせっかちになった証拠です。
20数年前に生まれて初めて買ったクラシックCDはエリック・サティのピアノ曲集で、付属のミニ本に書かれた、諧謔とエスプリに富んだサティの散文を読んで「こんな立派な変人になりたい!」と夢見たものです。そして、美しい芸術に親しんで暮らしたい、という中学時代からのデカダン願望は、先日届いたバイロイト音楽祭のDVD7枚セットで、ほんのちょっとですが叶いつつあります。狂王ことルートヴィヒ2世がワーグナーに建ててあげた、ワーグナーによるワーグナーのためのバイロイト祝祭劇場で上演された壮大な楽劇は、毎夜かざまランド執務室TVで再生され、この四畳半に神々の黄昏が訪れる夕辺は近い!

ベックリン絵画そっくりの巨大な舞台装置
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(私の好物である) ダム、ベックリンの死の島、製鉄所など、本来の設定とは異なるイメージが素晴らしいセット。神様は19世紀の地主風。ジークフリートはわんぱくオヤジのような風体で、粗暴さばかりが目立ち英雄らしさゼロ。この楽劇全編の鑑賞には15時間近くを要する(私はみた)。

〈誕生日プレゼント有難う〉
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(私の好物である) プンパニッケル/ツナ缶/アボカド

WSの朝に…

〈昨日夢の中で〉小池都知事が差向けた刺客から逃れるために偽装入院 (なぜか吉祥寺の母校が病院) していたが、潜伏場所がバレていよいよ追っ手がそこまで迫って来た。ベットの下に身を隠していたが、これではすぐに見付かってしまうので、裏口から抜け出し西荻窪に向かって逃走する。駅前の雑踏に紛れ「これで大丈夫」と安堵していたら、背後から「風間さんですよね」と声をかけられ振り向くとカジュアルな服装の男が二人…!腕を掴まれ拘束されそうになった刹那、私は周囲の人々に大声で訴えた「私は風間サチコという美術作家です!都知事に拘束されそうになってます!助けてください!ネットで私を検索してください!私は無実です!このような弾圧は許されません!…」必死に叫んでいる場面で枕元のスマホが鳴り、母からの電話でこの悪夢は中断した。

悪夢から救ってくれた朝8時のモーニングコールは、国立新美術館でのワークショップ『ぼんやり階級名刺を作ろう』の仕事に遅刻しないように母に依頼していたもので、おかげで都知事の手下に捕まる前に目を覚まし、約束の時刻に間に合い、無事に講師を務めることができました。

(素晴らしい皆様のぼんやり名刺)
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(12時の位置から時計回りに)
処理済/呑んだくれネコ/ジェラシティガール/ドキュメンタリー/修活中/博士中期課程/マイッカ同盟/水玉作戦/ビギナー/家ぽん族/ケバブ/最速おっとり/あまアシ/めぐろ女子/マイゴ21/MAZIME/兄/策士/ネコトレ/鬼ぐんそう/白髪祭/TANUKI/担当p/住処不定/殺人願望
….実用向きの名刺から実用不向きの名刺まで総数25点の作品ができました!

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味わい深い「白髪祭」と「鬼ぐんそう」は素敵なレディたちの作品(こんな銘柄のお酒がありそう)

凡T(シャツ)販売中!

2/9より開催の森美術館:六本木クロッシング2019に、私が芸名を与えた毒山凡太郎君が参加しています!建築デザイン事務所(だったかな?)に勤務していた見るからにカタギのさわやか青年が、何故こんな浮き草稼業(美術界)に転身を?と初対面のときに受けた不可解な印象から〈毒山凡太郎〉という素晴らしい名前を思いつきました。
普通(=凡)の好青年という外見を、いい意味で裏切る「毒」を持って欲しい…。命名に託した期待通りの活躍を見せ、この度いよいよクロッシングという大舞台に登場!これを祝しTシャツ用文字を作って毒山君にプレゼントしました。この文字使用の不穏なムードのコラボTシャツは、会場出口付近のショップで販売中です。売り上げは (一切私の収益にはならないが) おそらく毒山君の作品制作の飛行機代などに使用されるはずです。

(凡と毒を象って…)
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「凡」の字は凡庸なる大衆=細胞をイメージ
「毒」の字は金正男暗殺の実行犯が、手からVXガスを発散させながら逃走する様を描写。

クブシュ

先日のトークで述べた「形体の優れた物体ほど高度な魂を所有する。デュシャンの便器も然り。」という不可解な持論で提議したかったことは、あの世の芸術家と死没100年後の鑑賞者をつなぎ、交感を可能とさせる〈永久機関〉となりうる作品の徳性、物体の発するアウラの有無の問題である。かざまランドのマスコットボーイ・四次元ボーヤも、この高度な魂とアウラの所有者であると私は確信している。それは過去の持ち主たちの認めた美の価値と愛着が石に残存し、その残留思念のような何かが、時間を超えた交感を促し続けているからで、この念のような何かが、優れた美術作品、骨董および工業製品に共通するアウラではなかろうか。
我が愛石命名の由来である、杉浦茂マンガのキャラクター「四次元ボーヤ」を中尾拓哉さんがご存知だったのはとても嬉しい交歓でした。嬉しさのあまり喋りすぎてタイムテーブル記載の〈今後の予定〉を話す時間がなくなるほどでした(中尾さんスミマセン…)。なので追記。

《今後の予定》3月末:無人島P転居記念展、現美リニューアル記念展参加。4月:ワルシャワ展参加。6月:東京ディスリンピック。  秋(?月): ウィーン展参加。10月:黒部展(コンクリート組曲)…

今現在このような予定です。奇しくも四月には四次元ボーヤの生みの親、杉浦茂先生のお誕生日(4/3)にワルシャワに亡命ではなく出張することが決定。初のヨーロッパ旅行で緊張しちゃうけど、私は〈クブシュ〉見学に目的をすり替えてポーランドを夢見る!(無論仕事を忘れてはいない)

(クブシュとは?)
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1944年ワルシャワ蜂起のシンボル的存在である即製装甲車〈クブシュ〉
民間トラックを改造したこの変な車は一台しか製造されず、その貴重な実車が(なんと!)ポーランド軍事博物館に展示されているという。(バリケードに使われて大破した鹵獲ヘッツァーも展示!)

来場者皆様ありがとう

一昨日の銀座トークに来場の少数先鋭参加者の皆様、寒い中お集まりいただき誠に有難うございました!デュシャンが百年後の鑑賞者のために用意した未完の謎、仮想地底王国・かざまランドの実態など、現世社会では全く役に立たないお話に2000円を支払ってくださったお客様に感謝です。
置物だらけの室内風景、石の写真を見せられ、そのうえ「版画のできる女スパイになりたい」などの迷妄発言を聞かされた皆様の反応が心配でしたが、アンケートには概ね好評の感想が書かれており安心しました。
しかしそのアンケートの集計で、あまり知りたくない事実を私は知りました。「イベントを知ったきっかけは?」という質問の回答大半がツイッターと中尾さんの紹介で、当ブログで知った人は皆無、即ちゼロ人だということ。なので私がここで謝辞を述べても〈誰にも届いていない〉。
来場者皆様の読まない窓外の黒化粧に書かれた謝意は、四次元空間を漂いながらいつかはきっと貴方のところに届くはず!と私は信じる。

(かざまランド作業室近影をご紹介)
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秘密の王国が借家の一階部分であった事実に皆様はガッカリしたことだろう

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まだ1ページも読んでいないリラダン全集などが並ぶ書棚

明日トーク会決行!

参加申込者ゼロという窮状から「無観客試合か中止か?」と開催が危惧された明日11日のトーク会は、少数の方々のお申込みによりゼロから脱し、どうにか開催されることが決定!申込者様、どなたか存じ上げませぬが有難うございました。
明日はデュシャンが作品として「物」を選ぶ行為と、私が石を拾って眺めたりする暇人趣味とを関連づけたりと、中尾さんと色々なお話をするつもりです。私の語る内容は自己完結ではあるが難しくない(はず)。《予約なしでも入場可能》ですので、接待ゴルフが急遽中止になったとか、連休最後の予定に空きができた皆様は、是非ともお気軽に(有料だけど)お越しください!よろしくお願いいたします。

〈トーク観覧者限定オマケ〉
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夜なべの内職作業にて袋に封入された粗品たち

【最終告知】
『予感の帝国』刊行記念トーク会 &サイン会
かざまランドへようこそ!〜サチコとアートと〇〇と。
中尾拓哉・風間サチコ

2月11日 (月)  19:30〜21:00
銀座蔦屋書店ブックイベントスペースにて
*参加料 2000円*オマケつき!

《予約なしでもOK!》
→詳細情報はコチラ