日別アーカイブ: 2019年2月27日

推薦文(1)未來のイヴ

今年は閏年でないので2月は28日が最終日。そしてこの日をもって銀座蔦屋書店で展開していた〈予感の帝国:かざまランドフェア〉も終了します。特設コーナーでは作品集『予感の帝国』をはじめ、缶バッヂ/階級ハンコ文字の布袋/サバイバルこけし等が展示販売され、私の推薦図書5種も書下ろし推薦文とともにディスプレイされてました。これらはあと2日後には書架から姿を消すと思われますが「陳列に気がつかなかった」或いは「読むのが億劫」などの理由で未読の諸氏の為に、改めてここに(無理やり読ませる魂胆で) 文章を掲載しま〜す。

〜推薦文(1)『未來のイヴ』〜
人命よりも発明を優先する冷酷な科学者エディソン博士は、唯一恩人と敬う青年貴族エワルド卿の〈恋人が絶世の美女なのに頭が空っぽ〉という深刻な悩みを解決すべく、完全無欠の人造人間「ハダリー」に、恋人の外見をそっくりそのまま複写する計画を実行に移すが…(さて如何に?)。
….究極の知性を持つ高貴な霊体・ソワナを甲冑に宿した機械の貴婦人ハダリーは、目には見えない「無限世界」を雄弁に語り、現世的な「理性」と「常識」を罵倒する。彼女にとって俗世に生きる者、生みの親である博士も(愛するエワルド様ですら!)軽蔑の対象である。元恋人の美貌を完コピしたハダリーが、人間エワルド様のプライドを傷つけて逆上させる場面は最高です!優美な文章に織り込まれた、合理主義に対する痛烈な皮肉と笑い。その先見性は、SF小説の先駆け以上の価値があります。

《 無常ヲ觀ジテ以ッテ永遠ヲ探求セヨ 》
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電氣學者の手は何物かの上に壓しあてられたが、エワルド卿にはそれが何であるか、しかとは見分けがつかなかつた。……..
——ハダリー!(と遂に彼は大聲で叫んだ。)

『未來のイヴ』
ヴィリエ・ド・リラダン
齋藤磯雄 :訳(創元ライブラリ)