日別アーカイブ: 2019年2月28日

推薦文(2) 慈善週間

〜推薦文(2)『慈善週間または七大元素』〜

極めて謎めいたタイトル『慈善週間または七大元素 (小説)』に魅かれて手に入れた古書は、文章を読む小説ではなく、コラージュ作品に編まれた物語を読む作品で、マックス・エルンスト《コラージュ・ロマン》シリーズの三作目でした。巧みに切り貼られた銅版画の陰影と、そこに生じる不気味なぎこちなさは、睡眠時に見る整合性に欠いた映像を想起させ、ページを繰るたびにそれは甦る。……..
七大元素〈泥・水・火・血・黒・視覚・未知〉によって構成された一週間『慈善週間』とは何だろう?理性の昼から解放された不条理の闇。ブルジョア婦人の降霊術。変な夢を見た後ろめたさ…。古雑誌と七大元素の魔術的合成は、慈善家のようなお節介さで無意識を暴露する。〈見える詩〉の断片を繋いだコラージュは、滑稽でおそろしい夢の尻尾をとらえた物語(ロマン)なのです。

『慈善週間または七大元素(小説)』
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マックス・エルンスト
巖谷國士:訳  野中ユリ:装丁
河出書房新社 (1977年発行)

火曜日 元素—火 例—竜の宮廷
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入りたまえと彼は言ったが明かりがつくと誰もノックなどしてはいなかった.
(トリスタン・ツァラ『狼が水を飲むところ』)