月別アーカイブ: 2019年8月

ローレライ

「日本にウンザリしているので、もうそろそろ地底人がUFOで迎えにきてくれてもいい頃だ。」そんな愛国心の欠落した私でも日淡(日本産淡水魚)が魚界で一番かわいいと思っている。
現在製作中のクロベゴルトシリーズ『ローレライ』という絵には、昭和初期の猫又ダムとそれに付随する流木路と魚道が描かれている。魚道はヘアピンカーブの連続する長い階段状のスロープで、本来の自然環境なら直線で行けるところを、このような長距離を一段ずつジャンプしながら遡上しなければならない小さな魚の労苦を思うと私はダムが憎い。…だがこの異様でかっこいい構築物はすでに現存しない、何故なら平成7年の大豪雨で大量の土砂が谷に流れ込み、埋もれてしまったからだ。
この天災で想起されるのは《ラインの黄金》最後の「呪ってやる!呪ってやる!呪ってやる!」というラインの乙女(水の精)3名の合唱と、この呪詛のとおり没落と終末を迎える《神々の黄昏》の大洪水と大炎上の大円団だ。しかし作品にはラインの乙女でなくローレライが登場し、しかも人体モデルは風間ランドのハダリーで、彼は乙女でも水の精でもなく〈地底人〉である。

(現在の猫又堰堤)
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10mもの土砂が流れ込み川が埋まったので、掘削工事で川床が整備された。残存するゲートピアと堰堤は発電所を往来する橋梁として利用されてる。

(ローレライの呪い)
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112年も生きた「ビッグマウスバッファロー」という大味な名前の淡水魚個体を米国で発見!のニュースを見た。この長寿の種もダムに遡上を阻まれ繁殖困難となり少子高齢化が進み危機的状況だという。(日本の少子高齢化はダムのせいでは無い)

Y字郎:近況報告

窓黒読者から「Y字郎くんはお元気ですか?」と質問があったので、今日はY字郎の近況をご報告しましょう。
スポンジから培養土に移動したことで、目覚ましい成長が期待されたY字郎でしたが、思いのほか成長が遅く、先日やっと第3期の葉っぱが出てきました。Y字郎の名前の由来である幼い双葉たちは、出芽と発根の役割を果たしヨボヨボに衰え、第2期の丸い葉っぱ二枚は効率よく日光を浴びようと向きを変えつつ今も奮闘中。そしていよいよY字郎の正体を知る鍵を握る第3期葉っぱが登場!浅い切込みのあるオシャレな葉を持つこの植物は何でしょう?偏差値不足で都立園芸高校への受験をあきらめた私の見立てでは、これはビオラかパンジーの類のような気がする。(台所に種が落下した心当たりもあるのだ)

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「日光を浴びるほど育つはず」という私の過度な期待により屋外に出され、強烈な直射日光で黄変してしまったY字郎くん。

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室内の程よい日差しで緑色に回復したY字郎くん

美わしの黒部峡谷

連日の猛暑に「来年の今頃はオリンピックかぁ、この暑さじゃ死者が出るな!」と不穏当な予感に苛まれつつも(それどころでなく)、10月開催の黒部市美術館「コンクリート組曲」準備に躍起になっている今日此頃です。新作『クロベゴルト』は、黒部における治水、治山の近代史に、ワーグナー楽劇《ラインの黄金(ラインゴルト)》の物語を重ねた6点組作品で、人間の似姿をした神々による新秩序創造を描く(予定)です。
時間が無いのに壮大なテーマに着手してしまった私は、もはや宿痾となったムクミと円形ハゲに悩まされながら日々格闘しています。しかしその姿は第三者の目に「一日中ぼんやり写真や絵葉書を眺めているヒマ人」と映ることでありましょう。むろん写真や絵葉書は作画資料で、けして遊びで見ているわけでは無く、その証拠に黒部峡谷の資料写真をちょっとだけ皆様にお見せしましょう。

7月5日:黒部峡谷鉄道トロッコツアー
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〈新柳河原発電所〉
なじかは知らねど心わびて…と口ずさみたくなるこの光景はライン川河畔の古城ではない。

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〈水道橋〉

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〈出し平ダム〉

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〈欅平付近の堰〉

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〈宇奈月ダム〉
これらの人造湖および川の不思議な翡翠色は、山から流入した花崗岩の粒子を含有する水質に起因する。