月別アーカイブ: 2019年12月

無酸素事変

黒部滞在中、学芸員の尺戸さんから貰ったこの石は黒部の海岸で採取したもので、地元の地質学者によると、海洋中の酸素が欠乏した〈海洋無酸素事変〉時代の石とのことだ。1億4500万年前から区分される地質年代史の中で、火山の噴火や地殻変動が原因と推測される〈事変〉が幾度か起き、そのつど海洋中の生物は死滅し、その死骸は(バクテリアの類も死んじゃうので)分解されずに堆積物になったという。それらは形態を維持した化石や、また多くは化石燃料(石油)となって海底に永く眠っていたのだ。

〈事変〉と聞いて不穏な気持ちに駆られる今日は日本が米国に真珠湾攻撃を仕掛けた12月8日だ。太平洋戦争開戦から78年、(通称)大東亜戦争の発火点である支那事変からは今年で82年目になる。
第一次世界大戦開戦からは100年あまり経ったが、なんと、この近代戦争が始まってから僅か100年間で、地球の化石燃料の半分を人間が掘削し、消費してしまったのだというからビックリ!屍の上に屍を重ねて千万年単位の年月で生成された尊い化石を、つまらないことで浪費し、さらに屍を重ねる人類の愚行を、無酸素事変で亡くなられた有機物ご一同は許して下さるだろうか?

IMG_1931
去る10月11日。台風19号の影響により翌12日の黒部展オープニング式典及びトーク会の中止が決定され「明日はお客さん来ないだろうな〜」とアクア黒部H客室でぼんやりしながら貰った石を鑑賞していたのだ。この時は新幹線水没や、地元世田谷区が浸水被害に遇うことなど予想だにせず。

13日、台風一過の生地海岸にて
IMG_1984
恐れを知らないジークフリート!!

電気の国で

広報印刷物の陳列棚でチラシやパンフレットを集めていたら、「あのぅ…よろしかったらこちらを使ってください」とコンパニオンの女の子がおずおずと薄緑色の封筒を差出してきた。関電美浜のロゴ入り封筒を見て「わ〜助かります!ありがとうございます!」と喜びを表現した私の率直な態度で、彼女達の警戒心は少しばかり解けただろうか?
原発PR施設のコンパニオン達が、退屈な待機時間を世間話に費やしてるだけではないことを私は知っている。不審人物が入館した場合(このように)やんわりと接触して探りを入れたり、原子力推進に反する剣呑な質問をされたら、あえて論点のずれた無意味な返答でけむに巻く任務もあるのだ。(暖簾に腕押しの不毛な問答は不条理小説のようでもある)

丸眼鏡に半ズボン、大きなリュックを背負った中年(=私)が一人でふらりとやってきて、チラシ集めに夢中になってる様を怪しく思ったのも無理はない。だが安心し給えお嬢さん!私は紙モノ好きの善良な市民で危険な者ではない。そして至って正常だ(と思う)。

タダでたくさんもらったヨ
IMG_2402-1
子供向け啓蒙絵本『電気の国へようこそ』や大人向け科学的解説などいろいろ。
粗品をもらうためアンケートを(無難に)記入。タオルハンカチ(無地)とアブラ取り紙「どちらがいいですか?」と受付嬢に尋ねられ、PRセンターの文字入りアブラ取り紙を選んだ。タオルハンカチの方が高そうなのに何故こっち(真に
粗品)を選んだか?それは珍しいし面白いから。(この二者択一は何かの試金石だったのかも)

ゴミでも宝でもない。
IMG_2406
原子力チラシ軍に新加入した薄緑封筒には〈大地に根ざす根上りの松 地域に根ざす美浜発電所〉とスローガンが書かれている。広報無料チラシを集めるなら原発PR施設と陸自駐屯地がおススメで〜す。

原子力の箱
IMG_2409
自慢のグッズは、刈羽柏崎原発ジグソーパズル/原子力テレカ(使用済み)/プルト君ボールペン 

砂上の楼閣

長いトンネルを抜け、歩行スペースの無い危険な国道を5km近く歩いて美浜原発へ。途中フェンス上に丸まって寄添う可愛いサル2匹と至近距離で遭遇するが、突如野生の牙を剥いてきたら怖いので、刺激しないようにそ〜っと離れた。(国道で何かを待っているのか?)

行きのバスで丹生大橋を渡り原発の入口前をぐるりと経由したため「普通に通行できる」と勘違いし、今度は歩いて橋を渡ろうとしたら警備員に止められた。「朝は通ってきましたよ?」と言うと「始発と最終のバスのみ通行が許可されてる」とのことだった。関係者でないのに渡れて得しちゃったな!(運賃200円で)
巨大出島のような原子力発電所と丹生の浦を繋ぐこの鉄橋のたもとにUFO風の〈関電美浜原子力PRセンター〉は建っている。ここは原発の宣伝を無料で見学のできる施設で、1時間滞在するのもやっとな位い見るものが少ないが、タダなので文句は言うまい。

2004年に美浜原発3号機タービン建屋で起きた配管破裂事故により、11名の作業員が死傷し内5名が死亡。この重大事故の反省からか、私が今まで見てきたPR施設の中では一番謙虚な姿勢の展示だった。…にしても御多分に洩れずここもコンパニオンの人数が多すぎる!滅多に来ない来館者のために毎日待機するのはさぞかし退屈だろうと思うのだが。(私なら我慢できず一日で脱走)

(朝は海上の橋を渡って…)
IMG_2361
どんどん近づいてくる原子炉建屋に見惚れて車窓からの撮影を忘れる

(UFO基地ではないPRセンター)
IMG_2368
立派な建物と、それほどでも無い展示。

(丹生の浦より砂上の楼閣を臨む)
IMG_2369
1号機2号機(右の2基)は廃炉。(解体撤去に30年も要する)

(風光明媚な水晶浜:天然岩の神社からの眺め)
IMG_2378
この砂浜は鳴砂保護区。
鳥居の上の石ころはどうやって乗せたのか?とても不思議

巨象の渚

「200円です」「え???」…始点(敦賀駅前)から終点(白木)まで1時間かけて20km以上の長距離を走行してきたのにバスの運賃がそんな安いはずがない。現に2つ前の停留所では電光掲示板に1050円と表示されていたのだ。もう一度運転手さんに「敦賀駅からですよ?」と確認すると「ここは敦賀市内なので200円です」とキッパリ言われ、終点まで乗車した唯一の客となった私は、釈然とせぬまま百円玉二枚を代金箱に投入し降車する。
この白木地区は敦賀半島の西側にあり、公共交通機関(路線バス)で行くことが可能な北端に位置する。今でも僻地の感のある鄙びた集落だが、高速増殖炉もんじゅの建設が始まるまでは山中の峠道しかなく、もんじゅのおかげでバスが来るような拓けた地域になったという。だが廃炉が決定した現在は、建設車両が頻繁に行き交ったであろう国道に自動車が時折通過するのみである。

「200円です」と運転手さんに言われ「ん?これも原子力開発機構の恩恵か?」と私が邪推した理由はこの〈もんじゅ〉の存在にある。原子力施設周辺のおごり体質は、過去20年の見学で既に知っているので、この激安運賃もその一つかと穿った考えが頭をよぎった。が、後で地図を見ると半島は西に美浜町、東に敦賀市と二分されており、敦賀市は中世のドラゴンのような形状だ。首の付け根に敦賀駅、そして口の先っぽにあたる白木が美浜町に食い込んでいる。確かに敦賀市内で間違いないが、経由してきた美浜町では妥当な料金を支払い、越境した途端に初乗り運賃に戻るとは?!キツネにつままれたような心持ちだ。

バスを降りると(誰もいない)
IMG_2306
この美しい秘密の入江には誰もいない。
遠くの防波堤に2~3名 釣り人の影が見えるだけ…

(あれに見えるはもんじゅじゃないか)
IMG_2298
砂の浜辺の隣に石ころの浜辺(そしてもんじゅ)
吹き荒ぶ風と打ち寄せる波の音だけが寂寞を破る。だんだん怖くなってきた…

IMG_2302
莫大な金を飲み込んだ白い巨象=無用の長物

(白木漁港にて)
IMG_2322
勇気を出して堤防を歩いてみたがここまでが限界(こわい!!)

(歩いて美浜に移動)
IMG_2329
もんじゅ建設のために開通された白木トンネル(全長736m)
無人のトンネルにゴーーゴーーゴーーーと絶えず大音響で風が吹き抜け大変に恐ろしい。ここは「あの世の入口」のような気がしてきた!(歩行中3台の車両しか通過せず)

金沢21美(報告)

金沢21美で開催された一昨々日のトーク、一昨日のワークショップは和やかに楽しく無事終了〜。参加者の皆様どうもありがとうございました!WSは全日制で昼休憩を挟んで作業したものの、終了時間を1時間も超過して17時半までかかってしまった…。今回も初心者の潜在能力を期待し、過重なスケジュールと内容を強行し内心ハラハラしましたが、期待以上の素晴らしい『My金沢エハガキ』が完成して嬉しく思います。(皆さんご苦労様でした)

金沢出立まえ午前3時にトーク進行表を作成したので、自ずと睡眠不足になり新幹線車中で熟睡。そんなこんなで食事をとる暇も無く空腹のまま美術館に仕事へ。トーク中に腹が鳴ってはならないと思い、持参したビックリマンチョコ(北斗の拳)を食べて、その後うっかりオマケシールの存在を忘れて空袋ごとを捨てちゃった。なんのシールだったのだろう?

私の知らないMy 金沢
IMG_2397
皆さんの素敵なエハガキ。兼六園や新天地飲食街など魅惑的な名所と隠れた(個人的)名所の数々。(美術館斜向かいの名園兼六園すら寄らずに私は敦賀半島へ…)

IMG_2256
皆様また(何処かで)会いましょう!

(遠足編予告)
IMG_2384
ここは何処でしょう?(モンサンミッシェルではない)