日別アーカイブ: 2020年1月16日

変身変容

家族を養うため渋々サラリーマン勤めをしてた青年が、ある朝目を覚ますと巨大な虫になっていた。虫になったことで家族の本性を目の当たりにし「な~んだ、俺が働かなくても生活できるじゃん…」と今まで自分に依存してきた家族にガッカリして死んじゃう。というのがカフカ『変身』のお話で、この不条理小説が原作!と銘打った桂枝雀の落語芝居『変身』の(枝雀さんのクシャ顔からカフカ要素を見出し難い)チラシが、私の古いファイルに保存されていた。
特殊な原因もなく虫に変容してしまう悲劇が、1995年上演の創作落語劇『変身』では、太鼓職人のオヤジの身体が女性化!?という陳腐で通俗的な内容に変えられており、チラシ裏面には原作への敬意が感じられない梗概が書かれていた。私が23歳だった当時「インテリ落語家のお遊び」と軽蔑したことを覚えている。
(しかし今になって考えると) 生前カフカ自身が『変身』を朗読するときに、無様なグレゴール・ザムザの描写を笑いながら読んでいたそうなので、現在なんとなく〈不条理〉を実存主義とか哲学的にマジメに読解しているが、カフカ本人はこの作品を落語のようなナンセンス奇譚として書いた可能性もありうるのではなかろうか?(我々のような人間のトンチンカンで合理性に欠ける行動、即ち滑稽な人生そのものが不条理の連続と言えよう。)

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(魅力的なチラシコレクション)
チラシを貰って行くことよりも、貰っても行かないことがほとんどで、勿論これも行ってない。