日別アーカイブ: 2020年1月18日

記憶の変容

画学生時代に吉祥寺で桂枝雀『変身』チラシを入手してから25年が経過。言わずもがな25年前の1995年は阪神淡路大震災発生と同じ年である。四半世紀の歳月で風化が憂慮されている大災害の記憶と同じく、私の『変身』の記憶もまた曖昧になりつつある。
一昨日書いた変身梗概〈虫になったことで家族の本性を目の当たりにし「な~んだ、俺が働かなくても生活できるじゃん…」と今まで自分に依存してきた家族にガッカリして死んじゃう〉 に自信がなくなり、今一度、新潮文庫を読み直すとやはり記憶違いがあり誤謬があった。
正しくは〈家族、特に妹は虫になった兄の処遇に心を砕いたが、両親ともに疲弊しきって放置することを決断。へんな虫状態をあっさり受容した主人公は、家族の変化に理解を示しつつ、次第に衰弱し自室で死亡〉と、だいたいこんな内容だった。存在しているのに「無き者」のように扱われ、蚊帳の外に置かれても家庭を思う切なさよ!大黒柱グレーゴルの不在で(やっと)
自活に目覚める家族を描いたラストは、不条理な災いも幸に転じる人間の生命力というものか?(グレーゴルが可哀想)

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