日別アーカイブ: 2020年4月12日

思い出の禁止事項

ナチス・ドイツがポーランド侵攻を開始したその日、1939年9月1日に『T4作戦』は合法化された。健全な国家建設の邪魔となる不健全な国民を「治療」と欺き病院に集めて「安楽死」させるという大量殺戮の実施は、後のホロコーストの礎となった。治療と聞かされ大型バスで送り込まれた患者たちは、医療従事者によって事務的かつ効率的にガス室で処分されていった。犠牲者の中には成人の病人、障害者はもとより、不登校の子供まで含まれていたというから、ナチスの定めた「不健全」の広範さに背筋が凍る!
もしも私が、この時代のドイツに生まれてたならガス室送りになっていたであろう…。そう考えると恐ろしいが、喘息/偏食/登校拒否の問題児(私)は、幸いにもガス室ではなく健康学園に収容されるだけですんだ。私が小学5年の約1年間過ごした三浦健康学園は、世田谷区内の健康及び素行不良の児童が集められた区立の更生施設で、空気の清浄な臨海で規則正しい全寮生活をさせることで我ら問題児を「健康優良児」に改良し、東京に送還することを目的としていた。
…さて、管理された生活が奏功し私は更生できたかでしょうか?答えは「さらに反抗的になった」

~思い出の禁止事項~

● 外出自粛ではなく『禁止』
施設の外に絶対に出てはいけない。月に一度(第4日曜日)の親兄弟との面会日にだけ外出が許可されていたのだ。
● 買い物『禁止』
鉛筆/消しゴム/石鹸/ハブラシなどの必需品を購入する場合、廊下に下げられたノートに品目を記入し、保母さんに買い物代行を依頼する。購入限度額は月に500円(マンガや雑誌購入はNG)。
● ラジカセ持込み『禁止』
わずかな自由時間もラジオや音楽に耳を傾けてはいけない(娯楽の排除)。
● 夏は袖付きシャツ「禁止」
日焼けが推奨され基本はタンクトップかランニングシャツ。
● 長髪『禁止』
男子は丸刈り、女子は乙女刈り。
● お菓子持込み『禁止』
学園で提供されるオヤツ以外は食べてはいけない。印象的なオヤツは茹でたマカロニにきな粉をまぶした〈マカロニきな粉〉
● 衣類の枚数制限
入園案内で指定された準備品以外は持ってきてはいけない(スカートもダメ)。
● テレビ視聴は夕食後1時間のみ
指導員の「肉を一切れでも食べればテレビを見ても良い」という脅しにより肉食の強要をされた私だが「肉を食べるぐらいならテレビなど見なくても良い」と考え断固拒否。プロレス中継の音声を背中で聞きつつ「食べない理由はあるけど、こういう大人に説明してもわからないだろう」と諦めてだんまりを決め込んだ。他にも「皿の中の豆を箸を正しく使って隣の皿に全部移したらテレビを見ても良い」という理不尽な仕置もあった(何故か私だけに!?)。肉を食べなくても、箸の持ち方が変でも人間は死なない。それを実証するための反抗は現在も続く。

〈ディスリンポス山トレセン〉
ディスリン
ディスリンディスリン
兎跳びなどのスポ根的運動が学園の鍛錬メニュー

〈ソーシャルディスタンス〉
ディスリ
増殖の培地(人体)をウイルスに提供しないことが肝要だ!