月別アーカイブ: 2021年5月

【朗報】美術館再開!!!

さらなる緊急事態宣言延長にマジック・マウンテンは永久に閉山か…と懸念しておりましたが、先程【美術館6/1再開・会期中無休・22日まで会期延長・要予約】と一報が!憂愁に支配された心の霧は一気に晴れ、新たなる希望の曙光が差しこみました…良かったです〜
滅多にない入場無料の展覧会を見逃した!と臍を噛んでいた諸君のご来場チャンスは残22日間!ご高覧下さいますよう平に宜しくお願い致します!!

目覚めよ!ツァウバーベルク!
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TCAA受賞記念展 於: 東京都現代美術館
6月1日再開!〜22日終了
会期中無休(月曜日も開館)
入場無料!

【予約制】予約方法については31日に告知
*ご来場の際は美術館情報をご確認ください↓
[東京都現代美術館HP]    [TOKAS広報サイト]

★明日30日、14:30からギャラリーツアー配信で〜す
https://www.tokyocontemporaryartaward.jp/exhibition/exhibition_2019_2021.html#event
「美術館で直に見たいからいいや」という人はあとで見てね!

【告知】ギャラリーツアー配信

緊急事態宣言が現在休止中のTCAA展会期終了と同日の6月20日まで延長と決まり、このまま展覧会中止の可能性が濃くなりつつあります。おお…ディスリンピックがオリンピックの生贄になろうとは!!!! 落涙禁ずること能わざりしよ。。
まだ美術館再開の可否は未決定ですが、私が心血を注ぎ完成させた展覧会が、このまま無灯の会場で眠ったまま終了という悲劇的末路も大いにありうるので、予定してたトーク会をオンラインでの「ギャラリーツアー」に変更し、見る機会を逃した皆様に会場を案内する形式にしました。
5月30日(日)14:30~15:30に生配信、その後はアーカイブで見られるそうです。どうぞよろしくお願い致します。

(アルマゲドン接近!)
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★TCAA展トークイベント
開催日時:2021年5月30日(日)
13:00-14:00 下道基行
14:30-15:30 風間サチコ
※オンライン配信のみ/英語通訳付きの動画を、英語ページにて後日公開予定です。
料金:無料 ※事前申込不要

下道基行は展示作品を中心に、風間サチコは「ギャラリー・ツアー」形式で作品やその背景について話す予定です。配信接続と詳細情報は以下からどうぞ↓
https://www.tokyocontemporaryartaward.jp/exhibition/exhibition_2019_2021.html#event

懺悔の値打ちがあるポスター

先日探し物をしていると灰色事務机の隙間に四つに畳まれた白い紙を見つけた。何だろう?と広げて見ると『レントゲン博士まつり』のポスターだった。ポスターにはビルの15倍ほどの身長に巨大化したレントゲン博士が吉祥寺駅前に降臨した姿と祭情報が書かれている。「レントゲン博士 吉祥寺に現る。入場無料 くらしとアイソトープフェア X線発見100年記念 レントゲン博士まつり」会期は平成7年11月10日〜15日の6日間、場所は東急百貨店吉祥寺店8階催事場とあり、これは当時1995年に在学してた吉祥寺の武蔵野美術学園の下校途中に発見し入手したものと推測される。

だが、この変なポスターを手にいれた26年前の記憶が全く残っておらずとても心配。というのも、掲示された学校/駅/商業施設の人に「欲しいので会期が終わったら下さい!」と正直に学生らしい爽やかさで頂戴することがほとんどだったが、ごく稀に「もう終わって捨てる物だから貰って良いよね」と罪悪感を打ち消して(こっそり剥がして)キャッツアイしてしまうこともあったので、もしやこれも…。(恐るべきラスコーリニコフ時代)

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この興味深い祭事を見れなかったことがとても残念。

皿の夢

妄念に惑わされることなく無心に熟されてきた絵付け仕事の結果であろう、古伊万里に描かれた景物は、山=三角、帆掛船=四角、渡鳥=V字、海=横線など記号の如き進化を見せ、景物記号は古来からの様式に慣い配置され略式山水画と成す。少ない要素がかえって想像を生む余白となり、ちゃんと景勝に見えるから不思議だ。このような職人による積年の伝言ゲームの妙と、風景の夢幻境を湛えた皿宇宙を、有金を叩いてでも支配したいという願望が私にはあるが、陶器は嵩があって蒐集しても仕舞う茶箪笥が無いので、ヤフオクで見ても購入せず我慢している(絵葉書やノートゲルトみたいにペラペラならいいのに…)。そんな充足せざる夢が原因でこんな変な夢を見た。

畳敷きの部屋で女達がせわしなく食事の支度をしている。料理を盛った皿が三台の四角い座卓の上に何枚も並べられていく様を、霊体の私は空中に浮遊しながら眺めていたが、痺れを切らして女達の頭上でこう囁いた「料理が邪魔でお皿が見えない…。早く料理を食べてお皿の絵を見せなさい!」

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持戒

『アニミズム宇宙の旅』と同時期に購入の萱野茂著『アイヌの昔話』には木版画の手作りカバーが掛けられています(写真を見よ)。巨大な植物の種のような頭をした男が自然神を拝んでいると、突如その顔面に「持戒」の文字が現れる…そんな神秘的な場面を描いた掛け紙は、刷り損じ和紙を再利用したリサイクル品で、うまく刷れた作品本体はすでに行方不明(たぶん捨てた)。たまたまカバーに再生したことで学生時制作の不気味作品の(全体像は記憶に無いが)一部分が残されました。

絵に登場の「持戒」という言葉は山村暮鳥詩集『聖三稜玻璃』に収録の詩のタイトルで、カバー版画の着想はこの詩から得ましたが、この美しい5行にはもっと相応しいイメージがあるはずだろうと昔の自分に批評を述べたいです。

「持戒」
草木を
信念すれば
雪ふり
百足ちぎれば
ゆび光り。

 

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ちなみに私の「戒」は以下4点
● 肉を食べない
● 家と車は持たない
● 動物を飼わない
● 石は友だち
今後もしっかり遵守しアニミズム宇宙人or 地底人から選ばれる人間になろう!

アニミズム牧師

詩人・山村暮鳥は極貧の少年時代にキリスト教と出会い、虐げられた人々の救済のために伝道師となって秋田、仙台、水戸などの教会を転転とした。いつからか主の教えに背くようなアニミズム的宇宙観に目覚め、聖書を片手に草木虫魚を信念する異端の問題牧師は、寒村の信者から訝しがられるようになり、礫を打って追われるように教会から教会へ…。幼い掌に握りしめた純銀の小さな十字架は、いつの間にか降ろすことの許されない木偶の十字架となって肩にのしかかっていたのか?病身に鞭打ち丘を目指す足取りは重い。………

現代詩文庫末尾に記された暮鳥の生涯を読んだ21歳の頃は、アニミズム宇宙の旅やニーチェの影響下にあり「反キリスト者に転向すべきだ」と私は思ったが、日用の糧を得るために離職は不可能だった現実を今になって理解する。
万物に対する凡人的認識を超越した宇宙観、高次元感覚の詩集『聖三稜玻璃』は、萩原朔太郎と仲間数名以外の詩人から全否定され (おそらく鋭角すぎて理解不能)、献身的に奉仕した教会からは「何月何日までに結核が治癒しなかったら即クビ」というド氏小説の如きヒドイ宣告をされ解雇。結核が悪化し40歳で他界する直前に『聖フランシスコ』を上梓、そして最後の詩集『雲』の校正を終えたという。動物とおしゃべりできる聖人の夢と、主体を持たない真っ白な雲への憧憬を枕辺に残して詩人が旅立った先は「天国」ではなくたぶん「あの世」。

…と、今日も長々とおしゃべりしてしまったが、虚脱状態から癒える道半ばなのでお赦し願いたい。我らが人に赦す如く、我らの罪を赦し給え!

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『聖三稜玻璃』1915年 人魚詩社より刊行(これは復刻)

(この犬は人語を喋りそう)
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山村暮鳥 西群馬郡棟高村生まれ
明治17年(1884年)~大正14年(1924年)

良い時代

この悪筆が不気味な本カバーを剥いた中身は、岩田慶治『カミと神 アニミズム宇宙の旅』講談社学術文庫で、普通の本屋さんで買った本だ。ザラ紙と和菓子の包装紙でオリジナルカバーを制作したのは今から30年近く前になり、この本を手に取るのはすごい久しぶり!どんな内容だったかチョロっと読んでみると、ぼんやりとした記憶が少し蘇ってきた。
…精霊(カミ)に会うために東南アジアの奥地を旅する岩田先生が、人間以外の草木虫魚の魂や、現世と他界のコスモの在り処について考える内容だったかな…。川のほとりで目を瞑るワニは、寝てるようだけど本当は全身に宇宙感覚をみなぎらせているのでは?といった自問に心躍らせ、その疑問に対し時には芭蕉や子規、正法眼蔵など引っ張り出して考察する、いわゆる文化人類学に分類される書物だったような…。

この本を購読したのは、ひとつ年上の兄が早稲田大学文学部在学中(卒論テーマは山伏)だったときに、当時の文化人類学ブームに感化されたのか、レヴィ=ストロースや山口昌男や谷川健一などの本を「読め読め!」と推薦(無理強い)してきたのがきっかけだ。だが私は読書が苦手なので貸してくれた本はたぶんちゃんと読めてない (『常世論』に登場する補陀落渡海の話が怖かったことをなんとなく覚えてる)。そんな影響を受けつつ、兄推薦でない文化人類史本が欲しくなり自分で選んだのが岩田慶治の著作だった。先生の反人間中心の視点や考え方に共感し、このような自作カバーをこしらえて大切にしていたのだ。
30年前はごく普通に一神教=神か?多神教(八百万)=カミか?など論じ、宇宙観の構造についても派閥があったり、虫の霊魂について考えたりと呑気な学問が盛んで本当に良い時代だった。みんなが賢くて平和だったような気がする。昔が理想的に見えるのは加齢のせいだろうか?

1989年刊行『カミと神 アニミズム宇宙の旅』
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宇宙開発には大反対だが、アニミズム宇宙の旅なら大賛成!

(折口 コスモスvs 柳田 コスモス)
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昨年夏、コスモアイル羽咋(UFO資料館)見学のついでに折口信夫&春洋の墓参りをしなかったことが悔やまれる(蒸し暑かったあの日、墓標に手を合わせてたら折口 コスモスに入門できたかも?)

くさの味

「人流」とか言うへんな流行語を聞くと、ウォータースライダーのような巨大滑台に人間がじゃんじゃんと間断なく流されていく愉快な様子が想像されるが、はて、美術館はそんな大量の人間が流れ込む場所であろうか?その人流を抑えると言う理由で我がマジック・マウンテンは閉山の憂目にあっているのだ(解せぬ!)。  釈然とせぬまま措置を受け入れ気分がくさくさするので、私は庭に出て草をむしり、むしったドクダミでお茶を作って飲用し、くさくてへんな茶の味に苦虫を噛み潰したようなへんな顔をしてみる。

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フレッシュドクダミ

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吊るされたドクダミ

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萎びたドクダミ

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干からびたドクダミ

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抽出されたドクダミ
ドクダミ蔓延る庭そのままの味!気分は虫。

原始の鉱脈

岩田慶治の本だったか、水木しげるの本だったか記憶は曖昧だが、昔読んだ本のどこかに「山中で仕事道具を失くしたら、下半身裸になって山の神にお願いすると紛失物がひょっこり出てくる。」という山の男(マタギ・木樵・炭焼など)の間で伝わる怪しげな迷信が書いてあった。山の神は「女」とされており、彼女が喜ぶことをすれば、山の安全や恩恵が与えられるという古くからの信仰だ。醜女の神のご機嫌をとるために変な顔の魚(オコゼ)を奉納する神事は有名だが、トンネル工事の現場に奥さんが弁当を届けたりすると、山神が嫉妬して事故を招くからダメ、などの日常的な禁忌も割と近年まで守られていたそうだ。

原始の鉱脈
原始の鉱脈
『産業の山脈』に上書きされているのは太古の山の女神。虚ろなイーヴィルアイで天然資源を盗む不届き者を見張り、もしこの魔物的な目に見つかったら侵入者は呪われるであろう。反面、口元から漏れる水晶の煌きは野心に満ちた山師を誘うのだ。ラインの黄金と同じく、無垢の鉱物は誘惑し繁栄と没落を約束する。

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『原始の鉱脈』に貼られた木版画は、明治時代の教科書を切貼りした自作コラージュを元にして作った。この挿絵にあるような水晶の鉱脈は富士山の周辺に点在し、山梨産の水晶は明治時代に乱掘され大正時代に枯渇したという。(近年のパワーストーン流行でヒマラヤ山脈も危ない!)
鉱物とくに結晶はキラキラして大好きだが、人間が強制的に掘起して光に晒すからキラキラするのであって、石にとっては万年暗闇で眠っている方が幸せなのかと考えると複雑…。もう無闇に光る石を買うのはやめようと思う。 (私は誘惑に負けない!)

【お知らせ】
緊急事態宣言延長につき、東京都現代美術館も5/31まで休館になりました。6月に再開されるのか不透明ですが…残された会期に期待!

産業の山脈

ジェームス・ブラウンの「It’s A Man’s Man’s Man’s world」では、男は汽車を車を道路を、そして暗闇を明るく照らすライトをも創りだす、これが男の世界…と歌われてる。
暗黒の地中に血管のように張り巡らせた坑道から、黒い石炭を地上に吸い上げては、道路や鉄路の動脈で近代社会に供給し続ける。誰かが誰かの資源と労働を搾取する。男が、また別の男にそれを売り、別の何かを買う。そう、合理主義の歯車は自然破壊も不平等もガリガリ砕きながら回り続け、機関車は石炭をガンガン燃やし、真っ黒い煤煙で空を焦がしながら産業の血液を流す、これが近代化の世界。

(第一次世界大戦末期の1918年。ヨーロッパの軍艦に石炭補給するための重要な港だった西アフリカ、シエラレオーネの首都フリータウンにスペイン風邪が上陸。不用意な帝国主義者がもたらした感染症は植民地アフリカでも大流行し、1918~19年の1年間で238万人のも死者が出たという。)

『産業の山脈』
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(近代悪と憎むべきか?鉱山の幻) 懐かしさと禍々しさの相俟る原風景は、中学の修学旅行で見た尾去沢鉱山(秋田県)の凄まじい景色にある。そして、魔法のような産業革命前夜の幻想が美しい、あがた森魚と大貫妙子の歌う「スターカッスル星の夜の爆発」からも鉱山ファンタジーの影響を受けた。