日別アーカイブ: 2021年7月13日

悪魔の踊り(二者択一)

とある国の脱走兵が、未来の相場が丸わかりの「金儲けの本」を得るために、自慢のヴァイオリンを技術と共に悪魔に売ってしまう。兵士は巨万の富を手に入れるが、殺伐としたマネーゲームにうんざりし、呑気だった昔に戻るべくヴァイオリン弾きに再度なろうとする。
どうにかヴァイオリンを奪還し、名演奏によって救った王女とめでたく結婚という場面に悪魔が現れ「昔の幸せと今の幸せを両方手に入れることは不可能だ。どちらかを選ばなければ」と言う。そんなの関係ねぇ.と新妻(現在の幸福)を連れて故郷(過去の幸福)に帰ろうと越境したところで悪魔の制裁を食らう…。

…以上がストラヴィンスキー『兵士の物語』の梗概で、このお話では芸術or金銭。過去or現在の二者択一が迫られる。私なら選択と破棄を拒否し、芸術も金銭も、過去/現在そして未来も串団子のように串刺して各々を活かすアウフヘーベンを考える。(バウムクーヘンでも良い)

二つの『HISTOIRE DU SOLDAT』
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(左)先日入手Cテープ
1920年アンセルメ指揮スイス.ロマンド管弦楽団版
(右)昔買ったCディスク
1962年マルケヴィチ指揮ジャン.コクトー(語り)版

1918年。第一次大戦と革命の混乱で財産を失ったストラヴィンスキーは、少人数で上演可能な〈耳で見る〉音楽劇『兵士の物語』に再起を託したが、ほとんどの関係者がスペイン風邪(インフルエンザ)に感染し計画は中断してしまう。その2年後スイス.ロマンド管弦楽団が組曲(短縮版)を演奏し、それからは時世に合わせた構成で上演され、第二次大戦を挟んだ1962年にコクトー版が録音された。パンデミック時代にどう芸術を存続させるか?ストラヴィンスキーの臨機応変なタフガイぶりから学びたい。