月別アーカイブ: 2021年11月

出張みやげ(2)

10月の金沢&富山出張で立寄った〈魚津水族館〉は、大正2年開館で日本最古の水族館だそうです。建物自体は幾度か建替えられ今の建物は昭和56年竣工のいわゆる昭和レトロな懐かしい感じの観光施設です。屋外には冷遇されてるチョウザメたちのプールがあり、館内は富山の河川を模した日本淡水魚コーナーから高級魚の大水槽、毒のある危険生物コーナー、ボ〜っとしたアザラシ君など見所が盛りだくさん!(見落としたけどペンギンもいる)。
特に心を奪われたのは日淡の展示で、そこにはむかし私が、一週間かけてキャッチ&リリースしたウキゴリ幼魚の成長した姿がありました。「(別の個体だけど)捨てたあの子がこんな立派なハゼに…」と番場の忠太郎のおっかさんのような気持ちに…。私個人としてはホトケドジョウとカマツカもいたら完璧な水槽に時が経つのも忘れて見入ってしまった、がしかし、これは失敗だった!水族館の外に〈真珠コーナー〉というパラダイスが存在することを知らずに、可愛いハゼにうつつを抜かし時間配分を誤ったことを大後悔。〈真珠コーナー〉とは長年の死蔵土産を処分せず、大量に堆積された宝物(ファンシーグッズ)を販売してる奇跡の土産店で、店内に足を踏み入れた途端「おぉ」と息を呑みましたが、バスの時間が迫っており5分ぐらいしか滞在できず、無念としか言いようがありません。夢の宝石箱のある魚津にまた行きたいです。

(かわいい真珠コーナー土産)
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全長3センチのミニハゼ幼魚をスマホに付けてみたよ。だけど「どこかに引っ掛けて落ちて紛失」というハゼ行方不明の悲しい末路が見えたので、そうなる前にすぐに外したよ。

(真珠コーナーの袋)
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魚貝類の絵が美しいピンクと水色の袋と専用シール。
ファンシーな星砂と巻貝の封入された透明イルカのキーホルダーは、時間が止まった真珠コーナーの奇跡を象徴している。

〈対髑髏〉
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ようこそ魚津水族館へ!(魚の骨を見てみよう)
こんな涼しげな従業員さんにも会えるよ。

夢のシュプール

先週の月曜日。仕事で小学校を訪問したのち、Aさん、Tさん、私の三人は西武新宿線に乗車し帰路についた。車内広告を眺めながら「ライオンズのユニは青一色の方がいいのにね」など品評し、次の議題は『狭山スキー場』の広告に移った。空色を背景にした雪の斜面でチビっ子たちがソリや雪投げに興じるポスターを見て「積雪するような山が狭山にあるのだろうか?」「10月30日スタートとは随分早いので、屋内の人工雪山なのかも?」「合成の空で屋外だと騙されましたね」と謎多きスキー場についてあれこれ話していると、突如 Tさんが「あっ、この場面…。先日の夢で見たままの光景です!」と声をあげた。単なるデジャブじゃない?と私が問うても「いいえ。空が合成だったことや子供の写真、秋からオープンすることなど、映像も会話も全て夢と同じです。」と夢との完全一致を断言した。

斯様に不可思議な超常現象を目の当たりにし、現代科学では解明できない高次元世界の存在を肯定せざるを得ないが、『狭山スキー場』広告の正夢では超能力の無駄遣いのようで、関わった私もなんだか申し訳ない。次回はロマンスや天変地異を知らせる有益な予知夢で実力発揮を!

(厚生省 奨健歩行会推薦)
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屋内スキー場はここ村山池(現.多摩湖)と山口池(現.狭山湖)の間にあるみたい。
79年前の関東地方・體錬歩行路図 (家族向・平野篇)により山地ではなく平地であることが判明。

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シュプールの続きは夢の中で…

秋の忘れ物

2年前の12月中旬、西武秩父駅前広場で見た秩父混声合唱団の定期演奏会を告知するポスターは、公演日の11月24日をとうに過ぎたのに剥がし忘れたまま「季節へのまなざし」を送っていた。ポスターに描かれた青い夏鳥(オオルリ)もまた、暖かい国に渡り忘れて一羽で途方に暮れている。すでにお役御免となったポスター、これは…もしかして貰っていいかも?しかしそれを確認できそうな人物は周囲におらず、もちろん勝手に剥がしたらダメなので諦めた。こののち私は、孤独なオオルリ背後に聳えるピラミッドのような武甲山を臨む羊山公園に登る。

(季節へのまなざし)
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〈十一月が鳥のやうな眼をしてゐる〉
以上が全文の超短い詩、尾形亀之助『十一月の電話』のように秋なのか冬なのか曖昧な11月は非常に短く(もうすぐ12月ですね)

うつせみの…

8年前の11月、恩師である木版画家・塙太久馬先生が66歳でお亡くなりました。重い持病を抱えながら作家活動と武蔵野美術大学&学園の講師をされていた先生の顔貌は、病気の影響なのかいつも土気色で、お名前の印象と同じく古代貴族のようなプリミティブな気品がありました。
ピンク色のミニミニ河馬ブローチ(娘さんからのプレゼント)がお気に入りで、セーターに付けて教室にやって来ては、我々生徒たちが極小カバを発見し「キャ〜!かわいいですね!」と褒めそやすまで澄ました顔で待っていたりとお茶目な一面も…。
また面倒見が良く、私が貧乏学生の時分には先生出演(ジュディ・オング共演)の『NHKおしゃれ工房』の助手、卒業してからは武蔵美通信科の臨時教員として採用して頂き、そのお給料で材料が買えてとても助かりました(ありがとうございます!!)。
忘れられないのは学園を出る日「これから風間さんと俺は作家同士、ライバルですよ」と仰言った柔和な口調とは裏腹に、庇のような瞼の影からギラリと輝いた先生の眼光。思いもよらない先生の言葉にビックリしましたが、あの時の動揺が今でも励みになってます。

そんなことを想い出したのは、台所に置きっ放しにしてた先生の蝉の幼虫版画の額縁が気になり、トイレの壁に飾って毎日眺めているからなのです。塙版画の主人公である蝉の幼虫は、空蝉(抜け殻)ではなく生体で、幼虫が長時間暮らすはずの地中ではなく地上で人間のように生活してます。花柄セーターや横縞Tシャツを着たおしゃれ幼虫は、先生自身の現し身であり、背景の街角は儚い現世を写しているのかもしれません。

8×11cmの木口木版画に影を偲んで…
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うつせみの 世は常なしと 知るものを
秋風寒み 偲ひつるかも?

ディスリンピアン完走

昨日20日、無事にディスリンピアン展は終了いたしました。はるばる無人島まで足を運んでくださった皆様、またお酒お菓子お蕎麦諸々のお品を手土産にいらしてくださった皆様ありがとうございました!この展覧会をもちましてディスリンピック事業は完結です。長きに渡るご支援ご声援に心から感謝申し上げます。

これで一旦ピリオドを打つことになりますが、会場で多くの方々から頂いた「日出鶴丸くんとは誰?」「彼が主人公の漫画は今後どうなるのか?」という問いに応えるべく、漫画ディスリンピックは漫画+イラスト+ラノベという形で完成させる予定です。興味を持たれた編集者諸氏は(いつ完成するか不明ですが)出版のご用意を!

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栄光の銀メダル完売。ありがとうございました!

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漫画ディスリンピックは、優生学の結晶・国民の弟である地上の太陽「日出鶴丸」と、偽りの障害者アイドルで地下のカリスマ「月光」という美しい二つの偶像が手を取り合って地獄に堕ちる悲劇(の予定)。形式はリラダンの変な小説『トリビュラボノメ』のような作風がバラバラな短編の塊になる(これも予定)。

今週末20日(土)まで!

過日6日に行ったギャラリートークでは、九軍神各選手の紹介をしましたが、こちらを聞き逃した方でも安心なガイド(A4用紙)を無人島受付で配付中です。それすら入手できない(現地に行かない)皆様は以下チラシ転載を読んでご想像を…

1)
《二条曲也》
名前の由来は、1964年東京オリンピックの柔道の試合で亡くなった父の遺志をついで戦う若者を描いた漫画『柔道一直線』の主人公・一条直也から。一直線の正攻法ではなく、二条は双曲線の技を使う異次元の柔道家である。
2)
《回原天山》
人間魚雷「回天」を名前の由来にもつ回原天山は、独自の回転泳法によりプールに大波を起こし、他の選手の行手を阻む作戦を決行する。ルール無用、失格必至の特攻作戦は成功するのか?
3)
《怪力モツ太郎》
新聞王・正力松太郎を連想させる巨大なゴリラ男は、圧倒的な怪力を見込まれ重量上げの選手としてスカウトされ活躍する予定。今は読売vs朝日の二大メディア勢力の闘争に野生の勘で参戦中。
4)
《野村AI之助》
ID野球の知将・野村克也を凌ぐデータの蓄積でキャッチャーミットをさばく野村AI之助。日本の金メダル有力種目である野球。AI之助(あいのすけ)でお家芸と伝統を感じさせる名前に(元巨人軍キャッチャー阿部慎之助も入っている)。
5)
《不死山トビ子》
生と死のリバースモードを繰り返す不死身の飛込み選手・不死山トビ子。ゲームオーバーしてもリセットで蘇ればいいや、程度の若者らしい死生観で飛込みの恐怖を克服している。
6)
《両毛超特急》
100mを9秒台ではしれるか?日本人選手に課された大きな使命に挑む両毛選手。その姿は9秒台を常に期待されてる桐生選手たちを連想させるが、ジェット桐生(気流)ではなく両毛地方を疾走する超特急である。(実際は特急しか存在しない)
7)
《日出鶴丸》
体操選手・日出鶴丸は未完の自作漫画「ディスリンピック2680」の主人公。優生思想の結晶として育成された国民の弟(スーパーアイドル)である。(民族の祭典の生贄として捧げられる彼の悲劇は未だ完成しない)
8)
《一突男爵》
ぼったくり男爵をイメージしたこの貴族は、フェンシングの突き種目の選手である。Baron von BOTTE のボッテとはフェンシング用語の「突き」を意味し、剣で一突きされた地球儀のその場所は黄金の国「ジパング」。大航海時代のパイオニアのように金を生み出す桃源郷(接待天国)を貴族は狙う。
9)
《ツインテ点点ちゃん》
「何点ですか?」とネットで画像検索すると、少女の自撮り顔写真や、自作のイラストが無数に出てくる。見知らぬ第三者からの評価を得たい彼女たちの承認欲求はとても幼く心配になり、また学校のテストのような点数基準の価値観が可哀想にもなる。マラソン選手・点点ちゃんはそんな不確実な勝負けに挑んでいる。
⭐︎

個展『ディスリンピアン2021』は今週末20日(土)で終了です。どんな人物か確認したくなったお方は是非とも無人島にお越しください。よろしくお願いいたしま〜す

(おめでとう)
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「巨人が負ければそれで良い」との不規則発言をし、トーク会場に潜伏中の巨人ファンに失礼してしまったかも?すみません。 (オリックスとヤクルトの優勝おめでとう!)

『ディスリンピアン2021』
会場:  無人島プロダクション (江東橋)
会期: 〜11月20日

開廊時間: 火~金|13:00-19:00/土|12:00-18:00

クリスタル草履

初秋に入手したベランダサンダルは、透明ビニールの甲と霜柱のような合成樹脂の台を持つ美しいクリスタル草履で、初夏に入手したエアプランツと同じく100円ショップ(キャンドゥ)で購入したものだ。驚異の透明度を誇るスケスケサンダルは、寒冷期の管理が難しいエアプランツたちと厳しい季節を過ごさせたのち、陽光の眩しい日を選んでデビューさせるつもり。(そしてその日が来たら…)遮蔽性のないビニール甲部は私の生白い足を容赦なく陽に晒すことであろう。私はこれを履いて電車に乗って遠出がしたい。

(越冬サンダル)
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100均だけど300円(税込¥330)

一生風間の烙印

先日実家で風呂に入り帰ろうとすると「あげたいものがあるから待ちなさい」と父から止められ、風間の焼印をもらった。木製の柄から長く伸びた鉄の棒の先に「風間」と刻まれた金属片のついたこの焼印は、世田谷ボロ市の露天商から購入したものだという。「これを卵焼きに押しなさい」と言うが、誰も見てないところで一人で焼いた出汁焼き卵の表面に、火で熱々に炙った焼印をジュ〜っと押し付け、焦げ目の「風間」を眺める自分自身の姿は想像するだけでシュールだ。「ありがとう」と譲り受けたが、私にくれた理由が「死ぬまで風間はサッチャンしかこの家にいないから」というのは解せない。(兄も一生風間なのに何故?)

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これが一子相伝の烙印「風間」だ!

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微妙な揺らぎを感じる書体
卵焼きに押すときがきたら、真っ先に読者の皆さんに報告しよう。

幼虫愛

昨晩放送NHK『ダーウィンが来た』を母と視聴していると、草むらでブラブラと激しく揺れるルリタテハの蛹が紹介されていた。這い寄るアリを嫌がって渾身の力で体を揺らしている蛹の姿を見ながら、母は「近所の〇〇さんが庭のレモンの木にアゲハの幼虫がたくさん付いて気持ち悪いって言うから、全部取ってあげて××さんの庭の山椒の木に放してあげたの」と自分の善行を話したが、いや他所様のお庭に大量の芋虫を放出してはいけないだろう。「お母さんダメだよ、そんな幼虫テロしちゃ!」と注意すると「とても大きい山椒の木だから大丈夫」と幼虫が食す葉っぱが十分そこにはあるので問題無いと胸を張った。このように常識的人道よりも幼虫愛を優先する母の愛情によって子供の私は(幼虫のように大切に)育てられたのだ。

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お母さんが作った「みかんぼうや」

ご清聴に感謝!

昨日のギャラリートーク(二回)は無事に終了。お集まりの聴衆の皆様、ご清聴ありがとうございました!(美味しいお菓子やお酒、ジャムなど素敵なお品を下さった皆様ありがとうございました!)
1回目は出だしにつまづきシドロモドロになり、2回目は少しだけ改善されました。この少しマシなtake2はインスタライブで録画され(たぶん)配信。たどたどしい喋りと自己完結な内容に我慢できる人は探して観てください。
開催中アートウィークのバス効果で無人島には未知のお客様が大勢ご来場されてます。「風間サチコとは誰?」というピュアな気持ちで入場し、選手達の不可解な人物画を見て謎を深めたまま退出しバスに乗車、また次の会場へ…。このバスは本日7日で運行終了(展覧会は20日まで)。今回のようにギャラリーを巡回する便利な乗り物は滅多に運行されないので、この機会に是非ご遊覧を!(無人島での下車推奨)

(此奴は誰だ?)
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九軍神の中で唯一金色を使用した貴賓。
襞襟をあしらった西洋甲冑にティアドロップ、70年代風のヘアスタイルがイカしたこの貴族は〈Baron von BOTTE〉一突男爵その人である。彼は貢ぎ物のレミーマルタン・ルイ13世をバカラのグラスに注ぎ、獲物ジパングに剣を突き刺し黄金の獲得に野心を燃やす。その金の夢は天鵞絨のカーテンに綴られたアラベスクに浮かび上がっている(わかるかな?)