宿命の歯車

子供の頃は、飲み屋さんの入口に置かれた大量のおしぼりや、ラーメン屋さんの裏口に置かれたビニール袋入りの大量のモヤシを見て「どうして毎日このようなプレゼントが届くのか?」と不思議に思ったものだ。サラリーマン家庭で生活する私には、飲食業の営みなど与り知らぬ世界であり、おしぼりやモヤシを配達する商売があることも知らない。
飲食業界ピラミッドの頂点である飲食店が傾けば、当然ここに商品を納める会社の売り上げも下がる。現下コロナ禍でこのような負の連鎖が雪崩のように発生し、大変なことになってると報道されているが、機械の歯車のように各々が関係し回しあう社会の宿命をどうすることもできず、政府は稼業の転換を推奨するのであった。そう簡単に仕事が変えられて儲けることができれば苦労はないが…(私は版画以外無能なのでどうしよう?)
無人島仲間である松田修くんの母がママの『スナック太平洋』も、コロナで沈没した色街の煽りを受け閉店することになった。現代社会では表立って言えない階級社会の「下」を生きる宿命 (そのポジションでしか生きる術がないこと) を考えさせられる展覧会『こんなはずじゃない』は、現在無人島プロダクションで絶賛開催中です。「上中下、右、左」「生まれてきてゴメンナサイ」の声を背中で聞きながら〈奴隷の椅子〉に座ってママの裏町人生を垣間見てみよう!

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松田修 こんなはずじゃない
open: 火~金|13:00-19:00 土・日|12:00-18:00
close: 月、冬期休廊12/28 – 1/4
会場:無人島プロダクション