忘却の防波堤

終戦の日特集TV番組を毎年観ているが、太平洋戦争敗戦後77年経っても「新事実」が発掘され取材のネタが尽きないのを観てると、まだ知らない無尽蔵の秘匿情報が想像されゾっとする。
昨晩NHKでは、インパール作戦からの「転進(という名の敗走)」の証言を特集していた。敗色濃厚となり、兵隊と民間人を捨ててトンズラした上層部の大罪に対して、普通にヘラヘラ喋っている当事者の声を聞くと、人道的な思慮よりも何より自分の命と地位が一番という上級国民らしい性格が透けて見え、こういう図々しい性質の持ち主こそ政治屋になるのに適しているのだろうと思った。悪い奴等のことを時々思い出すことは(気分が悪いが)大切なことだ。

先週木曜は8月11日。毎月11日は東日本大震災犠牲者の月命日なので、被災地のお盆は11日から始まるのだという。私は帰省ラッシュのことまで思いが及ばず、この日発の東北新幹線乗車券を事前購入せずにぼんやりしてたら、1週間前にほぼ満席となってしまってた!(残り1席をおさえてもらい無事に行けた…)。
翌12日〈いしのまき元気いちば〉に弁当を買いに行って、店頭に並べられた大量の仏前用の花束が飛ぶように売れていく様に遭遇してもピンとこず、後でスタッフの女の子から売れる理由を聞いて「そうだった…!」とようやく気付き本当に恥ずかしかった。生きている人間は自分の事情が一番で、忙しいとか口実にして大切なことを忘れがちになるが、忘れてはいけないことは沢山ある。

旧北上川河口付近
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スズキやカレイなど高級魚が釣れる人気釣りスポットだが、この日は台風前日で閑散としている。
防潮堤を登らないとここが沿岸の地域だということを忘れてしまう。景観はもとより潮騒や潮風すら遮断されてることに驚かされる。

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「タコまみれ飯(小盛)」税抜価格¥450
タコ出汁で炊いた茶飯の上に煮ダコがたっぷり!
めちゃくちゃ美味い!このお弁当は〈いしのまき元気いちば〉1階お魚コーナーで買えます

締切の墓

10日に自宅(かざまランド)で集荷された作品たちを追うように私も石巻に向かい、11日の昼から現地で設営作業を始めました。リボーンアートフェスティバルで私が担当する展示会場は、石巻市街地の門脇地区にある古い石の蔵で、3.11大震災の時には、押し寄せた津波から背後の住宅を防波堤のように守った堅牢な建造物です。
昨年の下見の際はまだ物があったので、正確な広さを把握してなかったけど、家主の老父婦のご厚意でスッキリ綺麗になった内部を見て愕然!想像以上に広い…。5ヶ月間がんばって新作23点を用意(内3点は帯状疱疹で遅延し締切に間に合わず)し、これで十分だという確信はガラガラと崩れた。当初の展示プランだとこじんまりしてしまうので横に広げる方向に。幸い設営チームが大変優秀で、急な変更にも柔軟に応えてくださいました。しかも仕事が早く、3日間の作業日程が2日で終わったので、私は未完成のドローイングを仕上げるために一日早く東京に戻れました。台風が心配だったのでよかった!

〈締切の墓〉
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旧北上川堤防の工事現場で「締切」と陰刻された石碑を発見!
締切日を約束するも間に合わず破棄。また新たに設定した締切も反故。…社会的信用を裏切る行為の連続で発生した締切の亡骸たちを、この墓標の下に埋めて供養しようか?(締切及びノルマの概念から解放された円形ハゲと無縁の世界に私は行きたい)

いよいよ来週8月20日から!
Reborn-Art Festival 2021-22ー利他と流動性ー
2022年8月20日(土)~ 10月2日(日)
会場:石巻市街地ほか

赤いミルキーウェイ☆

一週間前(旧暦七夕)に脇腹に現れた赤い斑点は日を追って背中と下腹まで帯状に広がり、あたかも赤い天の川のようである。発疹の一部はジャンボタニシの卵っぽいブツブツ集合体に成長し、帯状疱疹を発症させる水痘ウイルスが、幼稚園児の私を全身ブツブツにさせた水疱瘡の原因と同一ウイルスだというのも納得。
それにしても幼児期に感染したウイルスが40年以上も神経節に潜伏し、人体が弱った頃を見計らって復活するとはビックリ!にわかには信じがたい迷惑な復活劇だ。この忙しい時に限って…と文句を言いたいところだが、奴には意思も遠慮も無い。だから仕方が無い。

小冊子〈帯状疱疹こんな病気〉
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患者しかもらえない小冊子をもらったよ
(円形ハゲにはお薬をヌリヌリしてもらった)

赤ペン先生
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キレイな状態で保存したかったのに…先生は赤ペンでグルグルとチェックしながら説明。私は「なるほど〜」と平静に相槌を打ちながら心の中で(ギャー!書き込まないで〜)と叫ぶ。

肉をつねり骨を刺すような痛みで丸二日寝込んでしまったが、高価な抗ウイルス薬が効いて快方に向かう。日野日出志先生の漫画『蔵六の奇病』のような化膿症状は、この高い特効薬を飲むことで回避できると聞いて二つ返事で処方してもらう。(背も腹もブツブツで背に腹はかえられぬ)

全16島(終わったが…)

円形ハゲの勢力拡大と帯状疱疹の発症という痛手を負いながら、やっとニュー松島全16枚が完成した。昨年12月の視察で遊覧船ニュー松島に乗船したことから始まったこの旅は、古絵葉書の詩的光景と皿宇宙の神秘的構図を水先案内とし、アルミ板の海原を小舟で漕ぎ漕ぎどうにかこうにか終えることができた。(でもこれで出品作品制作は終わりではない。まだ続く…)
脇腹の皮膚に浮かぶ赤いマダラと肉をムギューっとつねられるような痛みが気持ち悪い帯状疱疹は、お医者で薬をもらって治す病気だというので数年ぶりに皮膚科に行こう。(ついでに円形ハゲの薬ももらおう!)

(最後の一枚)
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波にそっくりの島は、この兜島の他に鎧島がある。
長い板に乗って櫂一本でスイスイと島巡りをする人を船上から眺め、私はとても羨ましく思った。
こんな水上移動の術が使えたら、波の彫刻見物も自由自在だ!

寡黙な助手

石は置いてあるだけでとても可愛らしく我々の生活に潤いを与えてくれるが、うちの石たちは置物の価値だけではなく助手の役割もする、まさに一石二鳥の石たちなのだ。
昨日のラッカースプレー作業でも石たちがお手伝い。型紙の隙間からスプレー噴霧が入りこまぬようガッチリとピンフォール!その重量と安定感を活かした押さえ技は大変頼もしい。文鎮の代用品として今後も石の活躍を期待する。

(働く石たち)
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型紙(くりぬいたボール紙)の端に置かれた石と文鎮。
汚れないようにラップで二重に包まれ、更にマスキングテープでぐるぐる巻きにされている。

(石と原子力船文鎮の休息)
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お疲れさまでした!またよろしく

〈蓬莱島〉
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白ラッカーで塗装したあと黒マジック(プロッキー)で線を描く。
筆ペンで描いた下絵の線をマジックで忠実に再現しているので筆で描いたように見える(はず)

〈地蔵島〉
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灯台の警戒を掻い潜り密漁(投網)する者たちの姿

がんばろう

先週火曜放送NHK『うたコン』三橋美智也追憶コーナーに、民謡演歌のスター福田こうへいさんが登場し「達者でナ」と「ふるさと山河」の二曲を水色と灰色の二着のスーツで熱唱(もちろんシャツは定番の襟なしシャツ)。歌唱力&トーク力抜群、紛うことなき実力者の氏が今年こそは紅白歌合戦に復活出場できますように…とテレビの前で私は祈る。もし出られたら今年の大晦日は第九を観ないで紅白を観よう。

休島
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作品集荷まであと11日だというのにまだゴールが見えず…
この岩(休島)のようにのんびり顔で休むわけにいかない(がんばろう)

CD『ふるさと便り』

福田こうへい『みちのく民謡』CDを一日2回ほど聴く習慣のせいで、就寝時に耳の奥で「よしゃれサァハーヨー」と雫石よしゃれが聞こえたり、作業中も南部木挽唄の〈親方金貸せ 鋸の目が欠けたョ、鋸は嘘だよ 逢いに行くョ〉という歌詞について「子供じみた嘘までついて借金をして誰に逢いに行くのだろう?」と考えてしまい絵を描く手が止まったりしている。このように同じ楽曲ばかり聴いてる影響が出始めているので、福田こうへい新譜『ふるさと便り』を正規ルートで購入し、新しい民謡の謎を仕入れて集中を緩和することにしました。

『ふるさと便り』特製ステッカー付き!
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CDケースにマスキングテープで雑に貼られてた特典ステッカーは、ジャケット写真の縮小版だった。古民家の縁側でお座布団に座り作務衣姿でくつろぐこうへいさんシール(どこに貼ろうかな?)

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裏ジャケでは囲炉裏端に集う楽団一同の様子が見られる(6人分にしては小さいお鍋と少ないお酒だ)
各人各楽器を片手にこのまま飲み会を始めたら、三味線と太鼓の皮に鍋料理の汁が飛ぶだろう。

ミニツワ君は今

5月下旬に宅配ボックスに挟まって地面から抜け、植木鉢に移植されたツワブキは、生存の危機から次郎を残して太郎は切り取る決断をした。(しばらくしてコップの太郎は枯死)
大きな鉢に不釣り合いだったミニツワの次郎は、その後やってきた新参者のカシワバゴム苗木に自身の居(植木鉢)を譲り、代わりにカシワバゴムが入っていたミニポットに引っ越しをした。粗末な新居でも元気に育ち6月下旬には新芽の三郎が誕生したが、早すぎる梅雨明けの熱波にやられて葉っぱになる前に敢えなく死去。それから数週間後、悲しみを乗り越え第二の新芽ツワコが誕生!現在すくすく成長中。

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購入時白いポットに植わってた100均店キャンドゥのカシワバゴム(330円)。見るからに窮屈だったのでツワ次郎の鉢と交換移植。その直後から異様な急成長を見せ巨大な葉っぱが4枚も増えた!

資材調達

ロシアによるウクライナ侵攻のせいで金属の価格が高騰し『ニュー松島』に使用するアルミ板も値上がってしまい、とんだところで世界情勢の影響を受けてしまった!
今回初めて取引きをした金属板卸売業者は〈横山テクノ〉という社名で、野外フェスで理解不能な電子音楽を演奏しそうなグループの名前ようだが勿論そうではなく、私がこの会社を選んだのも名前がテクノっぽいからという理由ではない。なぜここに決めたかというと、Kgあたりで換算する量り売りの明朗会計で、初心者の私でも注文しやすいオーダーフォームだったからです。
厚み1.5mm、横725mm、縦543mmのアルマイト処理アルミ板16枚の総重量は25.5Kgもあり、1kgあたり約2500円なのでなかなか高価なお品になります。物凄く重たい大量のアルミ板を売ってくれたYテクノさんも運んでくれたY運輸さんも、私がこの貴重な金属板に変な絵を描いてるとは知る由もあるまい!

【折曲厳禁】
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包みに貼られた注意書きシールは、25Kgもあるアルミ板集合体を折曲げる猛者がこの世に存在することを示唆する。

(アルミ額に入ったアルミ板)
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寸法が1ミリでも間違っていたら大失敗の額装…
ちゃんと収まって安心した!
描いてある絵は「材木島」。名前の由来は知らない。

皿宇宙ファイル使用例

古人による風景の解釈が凝縮された皿山水画は、自然の法則/摂理/構造が単純記号化された宇宙の地図である。
私はその遺産を利用(マネ)し、約100年前の松島絵葉書を新しい風景画に仕立て直してみました。それが今期新作の『ニュー松島』です。

〈ファイル使用例〉
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古絵葉書 (松島百景) 星ヶ崎より経ヶ島を望む
この絵葉書風景を描くために研究資料集(皿宇宙ファイル)から参考になる絵柄を選ぶ。

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様式化された海岸風景が美しい絵皿。連続する弧で描かれた磯辺(近景)に対し、小さい帆掛船と島で表した外海の存在(遠景)など勉強になる!

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風景を構成する要素や点景を引用しながら下絵作成。下絵を転写したアルミ板にペン(黒=プロッキー/白=ポスカ)で描く。これを既成アルミ額に入れたら完成。
1日1枚のノルマはすでに崩壊してるけど…がんばろう!