続・偶像崇拝

みんな大好き私も大好き『ちいかわ』は言わずと知れたナガノ先生の傑作漫画で、ぬいぐるみ等の人気グッズは入手困難。なので私は比較的入手しやすい特別仕様チャリメラをスーパーで買って、即席麺の袋に描かれた躍動するちいかわ達を眺めて充足している。
〈ホタテだしねり込み麺〉の表示に垂涎禁じ得ないが開けるのが勿体ないので、このまま暫し鑑賞するとしよう。(単行本全5巻を買おうか買うまいか本気で迷っている/ 買ったら本が増えちゃう!)

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早生まれ(2~3月生まれ)っぽいちいかわと遅生まれ(4~5月生まれ)っぽいハチワレ、そして泰然自若としたウサギは仲の良い友達。
一見平和だが実は巨大異形化のトリガーが潜む不穏な世界に住み、労働と防衛に勤しむ健気で(小さくて)かわいい彼らに幸あれ!! ちなみに私の好きな登場生物は元モブの古本屋(カニ)ちゃんだヨ

偶像崇拝

聖母マリアはイエスを懐胎したときに原罪が消され無原罪となり、不老不死の高次的存在へと昇格したので、時空を超え世界各地を神出鬼没に出現可能になったという。

私の地元には仏教寺院は無く、なぜだか色々な宗派のキリスト教会が4つもある。その一つにグアダルーペの聖母出現を崇めるメキシコ伝来の教会があり、この教会は私のお気に入りの遊び場だった。信者でもないのにどうして頻繁に出入りしていたかというと、修道女さんたちが寛大で優しく、X’マスにはメキシコ人修道女が作った珍しい特大クッキーやすごく甘いお茶を与えてくれたりと子供の天国で、何より礼拝堂に祀られた生々しいキリスト磔刑像を見るのが楽しみだったからだ。(彩色彫刻の聖人達は写実的なのに人間より一回り小さくてちょっと怖い)

(壁画ならメキシコだ)
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本家メキシコ・グアダルーペの聖母像をそのまま模写した礼拝堂外壁。
或る男がメキシコシティ郊外の丘で聖母と思しき人物から「聖堂を建てなさい」と突如言われ、マント裏にこの絵が浮かび上がった!!という奇跡の縁起物語があるらしい。(もしかして世田谷区にもマリア様の司令が?)

なんちゃら聖母幼稚園

隣町のスーパーに行く途中「ねえねえ聖母幼稚園って知ってる?なんちゃら聖母幼稚園…」「え〜日体幼稚園なら知ってるけど」と会話しながら歩く小学2年生ぐらいの男児2名とすれ違った。
「聖母幼稚園!知っているとも。なぜなら私はそこの卒園生だ。なんちゃらの答えは世田谷で、設立当初の名前は無原罪聖母幼稚園というのだよ。」と教えてあげたい気持ちになったが、ここで知らない子供に話しかけると明らかに不審者なのでやめた。

私は当時導入されたばかりのモンテッソーリ式教育の実験クラスで〈幼児の創作意欲を邪魔しない、幼児の意思を尊重する〉という方針の元、ひらすら粘土遊びに耽り大人に叱られることなくのびのび学習。おかげで自己肯定感が強固な好きなことしか集中できない(社会不適合)人間になれた!ありがとう無原罪の幼稚園。(秩序ある体育教育に特化した日体大経営の幼稚園に入園してたら真逆の性質になったかというと、それは怪しい。)

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無原罪ってな〜に?

特別な領収書

今日は3月15日。みんな確定申告は無事に終わったかな?私は領収書の整理と簡単な計算だけして、あとは実家の老父にお任せしてとっくに申告を済ませたよ。

大量のレシートの山の中には新幹線や飲食店など愉快な行楽にまつわるものもあり、ファイルに貼る作業をしながら「あんなことこんなことあったなぁ」と思い出す。この水色の〈秩父珍石館〉拝観料領収書もその一枚で、愛らしい人面石のハンコが捺されており何とも味わい深い。私はこれを事務的に支出ファイルに貼るのはやめて(400円計上チャンスは諦めて)、代わりにコレクションボックスに保存することにした。

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ニコニコかわいい人面石ハンコ

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ハンコのモデルである珍石館第1号人面石
知人から「不気味だからいらない」と創立者の翁に譲渡されてから、この石が招き寄せたかのように続続と河原で人面石たちが見つかったという!! 霊妙不可思議な珍石館縁起だ。

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ナガノ先生の漫画『もぐらコロッケ』みたいなかわいい石にまた会いた〜い♡

藤井書店

先週金曜日に用事があり吉祥寺へ行った。吉祥寺は母校の(今はもう無い)武蔵野美術学園があった街で、本科~研究科と5年間も通った思い出のある街だ。

間違えて早く着いてしまったので商店街をブラブラしてると、サンロードを抜けた五日市街道にある古本屋〈藤井書店〉が昔と変わらず営業しているではないか!懐かしい〜(勝手に廃業したと思っててすみませんでした)。ここは当時私が一番好きだったお店で、1階は美術関係と学術書、階段書棚には映画/演劇/音楽の本。2階に上ると古い小説と詩集があり、そして大小様々な大量のコケシを背後に従えた老店主がいつも静かに鎮座していた。
このお爺さんと喋ったのは1~2回しかなく、はっきり覚えているのは
高校時代から欲しかった萩原朔太郎詩集『月に吠える』の復刻版を2階で発見し購入したときのことで、感激して思わず「やっと手に入って嬉しいです」とお話しすると「そうですか」と言葉すくなに答え、詩集を包装紙で丁寧にくるんで輪ゴムでパチンと留めてくださった。本当に嬉しかったな〜

30年も前だから既に御存命ではないはずなのに陳列の傾向は全く変わらず、あたかもタイムスリップしたかのような錯覚に…。微細に売りつつ同じような細胞=古書を仕入れて代謝してるのか?(古本屋さんの不思議)

〈藤井書店購入〉
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19歳の頃に藤井さんで買った3冊
萩原朔太郎『月に吠える』復刻版、萩原恭次郎『死刑宣告』復刻版、稲垣足穂『人間人形時代』
同じ苗字だから朔太郎と親類かと勘違いして購入した詩集『死刑宣告』の衝撃!すごく影響を受けた。
怒涛の変態博識タペストリー『人間人形時代』は読者の理解を置き去りに稼働する高速機織り機のようで、なんだかよくわからん本だ(未だに)。

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そしてこれは先日購入した本『そばちょこ』¥200
物欲から解放されるために大量の猪口写真を見て充足しよう!私は鴨(長明)になりたい…

燃えるコニファー

昨年の12月、一部地域で避難指示が解除された福島県双葉町を訪ねた。町に向かう途中の解除されてない区域は、車での通過のみ許されており、自動車の窓からみえる風景は、人間だけがいない映画のセットみたいに静かだった。

「双葉町に戻ってもいいですよ」と促されても商店も病院も無い(というか巨大道路建設ばかり盛んな) 町でどうやって暮らせばいいのか?と宙ぶらりんな義憤が湧いてくるが、余所者の私が無責任にどうこう言うのも憚れる。
故郷を憂う人々の憤懣遣る方無い思いは、剪定する主もなく燃え盛る炎のように繁茂した緑のコニファーが代弁してるように私には見えた。

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この日を覚えてますか?

唐突にグーグルフォトから忘れ去られた記憶を掘り起こされることがある。
先日も「この日を覚えてますか?」と「あれから7年」というタイトルの写真が複数枚パソコン画面に自動で映し出され、それはこんな写真だった。

「この日を覚えてますか?」
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覚えているとも!実家で見たミカン坊やに爆笑しすぎて涙が止まらなくなったあの日を…。
これは油性ペンで顔を描いたプラスチック製ミニミカンをミカンネットで包んだお人形で、母が戯れに作ったものだ。どうして眉を歪ませて諦めたように微笑してるのか?母はこの形容しがたい変な顔に意図はないと言い、テレビ前にしばらく飾ったのち飽きて捨てちゃった。(もらっておけばよかったなぁ)

「あれから7年」
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この対空自走砲は実物を撮影したのではなく、ドイツの試作戦車写真集のページを撮影したもの。
オストヴィントに似た模型の正式名は知らないが、オストヴィントとはドイツ語で「東風」という意味だ。東風 (こち) は春の季語で今の季節にピッタリだが、私は花粉症なので風はあまり嬉しくない。

夜の公園

台所で夕飯の支度をしてると、外から「夜の公園に行きたぁーーい!夜の・公園・に!行きたいよぉーーーー!」と絶叫する子供の声が聞こえてきた。続いて男親がなだめすかし家に連れて帰る様子がして静かになり、私は「連れて行ってあげればいいのに、夜の公園に…」と心の中で呟いた。

夜の公園は好い。
昼間より広場はずっと広く樹木は巨大に見え、陰影が濃くなった植込みは不気味で魅惑的だ。以前は私も草木も眠る丑三ツ時に近所の公園に行き、電燈に煌煌と照らされる石灯籠など鑑賞していたが、昨今の治安悪化を考慮し夜間の散歩は中止している。

(夜の公園写真)
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何を見つけた?

2月20日付毎日新聞夕刊に掲載された赤瀬川原平写真展を紹介する記事には、私が「拾わないとどうにかなっちゃう」性格だと書かれている。どうにかなっちゃうとは穏やかでないが、これは物を拾い損ねたあと何年も継続する〈心残り〉のことで、自分自身は未練に苛まれ狂おしいが、他に危害を及ぼすような性質のものではない(だから安心してください)。
路上で見つけたマーガリンや煎餅の空缶、電車内で発見したゲーセンのコインなど、極めてつまらない品々の幻影が時折脳裏に浮かんでは、その場で理性を働かせた自分を恨めしく思うのだ。

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これは写真展会場に掲示された私の解説文に登場する〈二十歳のときに拾ったマジョリカタイル〉
お風呂屋さんの解体現場に侵入し発掘したお宝です。たぶん大正時代のもので、非現実的な桃色の川岸にゆったりと流れる水色の川がなんとも美しい光景。拾ってよかった!(でかしたぞ過去の私)

毎日新聞20230220のコピー 23.38.47
毎日新聞でご紹介の写真展『日常に散らばった芸術の微粒子』は六本木のスカイ・ピラミデにて
今月25日まで開催でーす!

ブルもプロもいない楽園へ…

漫画だから楽に読めると思ってた『アトム博士のユートピア探検』は、子供向けとは思えぬ文字の多さに苦戦し読破できずにいる。マルクス博士が登場し「資本論」を解説するところから、如何にブルジョワジーがプロレタリアを搾取してるかを労働・賃金・時間・価値などの単語を使った算式で示す憎悪煽動場面ばかりで、確定申告すらまともに一人でできない私にとって苦痛でしかない。自分がどれだけ損してるか計算して立腹するよりも、夕飯の献立とお酒について真剣に考える方が私は良いな。
(社会主義者よりも) ごく一部から愛好される詩歌を作った鴨長明や尾形亀之助のように、ぐうたらな美意識に忠実な人生を送った個人主義者(心の貴族)を私は尊敬する。

眠りの国で時間旅行しながらユートピア探検する兄弟
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小5兄「ウーム!!ぼくは.もう我慢なりません。博士ッ!!  いっしょにプロレタリアの味方をして.憎いブルジョアジーを.やっつけようではありませんか?」
小1弟「兄ちゃん。ぼくは.ブルジョアが栄える秘密を聞いた途端に……社長になって大もうけしたくなったよ。マルクス博士ッ。その安い労働力は.どこへ行ったら買えるのですか?」
….小学生の兄弟ですら分断させ階級闘争を勃発させるのが革命の方法だ。