モデルとなった三淵嘉子さんが実際はどんな人物かは知りませんが、『虎に翼』で描かれたヒロイン像が最終的に「寛容な態度だけど、じつは狭量な似非ヒューマニスト」みたいになってしまったのは至極残念でした。
中盤から「視聴者のこっちが〈はて?〉だよ!」と腑に落ちない場面が多く、終盤でも〈はて?〉頻出。
特に変だったのは、少年法改正の会議で意見した部下が寅子に「立場をわきまえず意見して申し訳ございませんでした。」と謝罪すると「いいのよ。正しくない意見でも最後に判断するのは私だから。」というセリフ。え?せっかく勇気を出して発言したのに〈正しくない〉と決めつけて聞いてるのか!すごい傲慢…。物分かりの良いサッパリした上司風の態度が余計に怖いし。
随所にこのような傲慢さが散見され、結局のところブルジョワ家庭のエリート族が〈下々に寄り添ってますよ〉という偽善で取り繕ってるように見えてしまった。
少年犯罪の凶悪化のくだりでは、いつものように寅子が猪爪ファミリーを居間に招集し「皆んなが知ってることを教えてちょうだい」と巷の非行少年に関する情報を募る(いや現場で見てきなよ…)。この定番の家族会議シーンは、小ちゃい民主主義ごっこを見せられてるみたいで正直げんなりです。
女性の社会進出は「地獄」と大袈裟に表現してきて、現実の(人間社会の)地獄からは敢えて目を逸らすのが寅子のスタンスか?
例えば、少年ライフル魔事件と永山事件。真逆の放任家庭が生み出した地獄とか、戦後の時代を象徴する殺人事件を拾い損なって、死刑の問題にも触れず、ふっとお疲れ顔をして「大変だわ…」で済んじゃった!
また、大きなテーマとして原爆被害者の訴訟も扱ったけど、判決文で国側の非を認めつつ結局は棄却。史実なので仕方ないが、司法の正義を示した画期的な判決、という見せ方に疑問が…。
泥を被らない、責任を回避する判決で、その後もズルズルと裁判が続く地獄。原告が力尽きて諦めるか、老いて亡くなるのを待ってるように私には思えます。弱い立場の人が裁判に人生を費やさねばならない残酷さ。原爆も公害も旧優生保護法も冤罪の再審も…
明日はいよいよ最終回。大円団に向かいそうなムードの今日「法律は万人が幸福な人生を送るための舟だと思います。」と寅子が言った。裁判制度のせいで人生を棒に振る人もいるのに?随分と楽観的だなぁと。まあ最後の一回、ちゃんと見ます。
鎌田慧セレクション第1巻『冤罪を追う』皓星社より発売
なんで無限に控訴と上告が可能なのか?再審制度の地獄
本日午後、袴田巌さんに無罪判決。もう終わりにして!もし検察が控訴したら…私は呪詛するよ。