Bad Morning!Tokyo

来週火曜日(16日)から有楽町CADANにて、個展「Bad Morning!Tokyo」を開催します。
昨年4月から担当してきた朝日新聞朝刊〈論壇時評〉のカットを、先月までの掲載分15点を展示します。それと、時勢を鑑みた出品「肺の森」シリーズから2点(塹壕戦とクリスマス休戦)を選んで加えました。

〈論壇時評〉の挿絵には「現代をイメージした作品を毎月掲載〉という一文が添えられているのですが、私自身は特に風刺画という意識はなく、今描きたいことを割と自由に描いてます。とは言え、巨大な読者勢の中には過敏な方もおられるかも知れないので、(予防線的な)配慮もしているのです。どうです大人になったでしょう?50過ぎだけど!

昨年の「ダム調査の潜水夫が宇宙開発の一員となり月に進出=侵略する」ストーリーの連作では、先住ウサギを攻撃する武器の機関銃がよろしくない、という指摘で2ヶ月間NG!! なぜかというと「安倍晋三暗殺を想起させる」という理由だったのです。私は機関銃を自走砲に描き換えてこのピンチを脱出…!

ご時世とピッタリ合いすぎても遠く離れすぎてもいけない、そんな距離感を遊びつつ現代をイメージし作画してみました。何卒ご高覧くださいませ。

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Bad Morning!Tokyo
2024年7月16日(火) – 8月4日(日)
会場:CADAN有楽町 Space L
営業時間:火−金 11時−19時 / 土、日、祝 −17時
定休日:月
住所:東京都千代田区丸の内3-1-1国際ビル1階

★初日にレセプション・パーティーがあります。
7月16日(火) 17:00-19:00

悪魔の法律(2)

5月29日に最高裁判所で、旧優生保護法の被害者による弁論を傍聴しましたが、今日の午後3時に「違憲」の判決が下され、国への賠償請求が認められました。
除斥期間を盾に退けてきた国の卑怯な態度に、消しゴムを投げつけたくなる衝動にかられたが、この最高裁の判決に司法の良心を少しは感じた。(でもこれで終わりではない)

旧優生保護法は48年間。それに先駆けて執行された断種法《国民優生法》。1940年、新体制のもとで成立した民族浄化の悪法は「ナチスドイツをロールモデルにしてた時代だったからしょうがない」と思われがちだが一概にそうとは言えない。優生思想を啓蒙し続けた歴史を私の自主研究(古本コレクション)からご紹介しよう。

断種法のキーパーソン・永井潜
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オッペンハイマーが博士号を取得したドイツの超名門大学・ゲッティンゲン大学で生理学を学んだ永井潜は、日本における優生思想の主導者。
この大正5年刊行『生物学と哲学との境』は冒頭10ページが、ドイツの恩師に宛てた熱烈なラブレターで、科学よりも私情の迸りを感じる…。戦後も優生思想の書籍を数多く出版。

怒りのメモ「美しいことを夢見て 醜いことをする」
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雑草=不良な国民とその遺伝子、というのが定義だ。
〈淘汰の篩(ふるい)〉〈民族の花園〉〈血は最高の装飾〉などのパワーワードを連発する博士。その人に法律(国民優生法)の骨子をまとめさせた日本国。

(参考資料)1940年、国民優生法の意義を語る永井博士
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白樺派と大正デモクラシーの意外な一面!
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大正10年に創刊された『文化生活』は、森本厚吉/有島武郎/吉野作造が主宰する社会の改善を目的とした雑誌。創刊号には永井潜もエッセイ「優生雑話」寄稿しており、遺伝をコントロールする重要性を説いてる。
国家の構成=国民の数や質を合理的にデザインすることが、すなわち社会の幸福である。そんな上から目線の善意が透けて見える〈貧乏退治号〉も!

優生運動のイニシアチブ
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誰が第一人者になるか?名乗り出た一人にジャーナリストの池田林儀がいる。「精神主義の社会運動」を掲げ、修養や養成など後天的な変革を唱えた。「不良品の根絶やし」を目指す永井潜よりまともだけど、勝者は永井博士。

昭和8年刊行『プロレタリア産児制限法』無産者産児制限同盟という組織の出した恐ろしい表紙の本。…内容はいわゆる「家族計画」の方法。

夏の夜間高校

私が卒業した都立高校は全日と夜間の二部で、試験ナシで入学できる定時制高校は、義務教育をサボタージュした私みたいな落ちこぼれにぴったりの受皿学校だった。
昼の子たちとは登下校時刻すらニアミスしない暗黙の掟があったり、遠慮がちなハイスクールライフだったが、その中でも印象深い思い出のひとつが「夜のプール」だ。
夏休み明けの晩夏、誰かが「プールに入りたい!」と余計なことを言い出し、翌週の体育は水泳に決まった。全日の生徒が繰り返し使った汚い水にはアオコが発生し、ボウフラも湧いてそうだ…。しかし我々夜学生たちは喜び勇んでプールに入った!そして投光器に集まった羽虫の群れが容赦なく口の中に入った!「わーい」の歓声はギャーと悲鳴に変わり、一瞬で意気消沈しプールの授業はすぐに終了した。

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新しい校舎に思い出はないが、蛍光灯の明かりを見てると「挫けず頑張って」という気持ちになる。
旧校舎は重たい鉄の窓枠で夏は開けっぱなし。コウモリが飛び込んで来てヤンキー生徒に殺された…野蛮すぎる!

マイ五輪塔

未来のイヴことハダリーは、変態博士が用意した地底の楽園に居住している。模造植物で飾られた大広間には人造鳥たちの鳴き声が賑やかに響いているのだが、なんとその音源は博士が地上のパーティー会場でこっそり録音してきたパーティーピープル達の喋り声なのだった…!(リラダン伯爵の小説は、怪奇と冷笑そして皮肉のアラベスク)
そんな地底人への憧れから、長い長い独りきりの沈黙も私にはぜんぜん苦にならない。しかし先日から足を踏み入れた巨大 SNS世界というのは、何億の人類が発する情報の大星雲で、ひっきりなしの賑やかさといったら私の沈黙生活とは真逆だ。この地上の眩しさと喧騒に戸惑い、かざまランドの静寂に今日も逃げる。My五輪塔を買ったりしちゃって!

宇宙の主宰者とはどこに存在するのか尋ねてみたい
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とうとう買っちゃった…五輪塔!
(盗品じゃないよ模造品だよ)

【報告】インスタはじめました

始めてみましたインスタを、一週間前に。
友人が撮った猫と草の写真を見るのにインスタ住民の登録が必要だったので、右も左も分からぬまま見切り発車でSNSの大海へと飛び込んでみました!
少数先鋭の読者諸君と住まうかざまランドという城(井戸世界)から、急に人口億単位の世界へ行ってみて…びっくり。計り知れない無数の個人による活発な発信、その巨大な波にすでに溺れそうだよ。気が向いたら私を探して…

インスタ開始1~2日は肩書きを〈ルンペンディレッタント〉にしてたけど、注意事項に「怪しい肩書きは良くない」とあったので無難なartistに変更(公的な建前だ)。
ルンペンディレッタント、すなわち永遠の貧乏好事家の本懐はこの『窓外の黒化粧』にて遂げるのだ!これからも公益御免の窓黒をよろしくお願いいたします。

今日も埼玉太麺祭り
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地粉ひもかわ×深谷ねぎがんも。旨い!最高すぎる…

IMG_9519極太焼きそばを餡掛けチャンポン風にしてみた。
2年前に賞味期限の切れた沖縄そばスープを使用!(体調に異変なし)

IMG_9521やっぱり普通に付属ソースでの調理が良いね!(お好み焼き却下)
おからコロッケみたいな〈行田ゼリーフライ〉何でゼリーか不明だけど好き。

ヤオコーのない町

「埼玉の町ならどこでもヤオコーがあるはずだ」と思っていたのだが、今日仕事で行った越谷市せんげん台はヤオコー空白地帯だった!

埼玉産太麺の品揃えが最高なヤオコー。ヤオコーのない町なんて…。がっかり気分の帰り道。「でも埼玉のスーパーなら扱ってるかも?」と気を取り直してヨークマートせんげん台店に行き、埼玉色の薄い店内から僅かなメイドイン埼玉麺を見つけ購入した。めちゃ太いうどんやシャクシナ漬物もなく残念だったなぁ…。(うどんの充実をはかり、もっと郷土愛を示して欲しい)
いつかヤオコーの聖地(発祥地:小川町、本社所在地:川越)を巡ってみようかな?

明日は埼玉食品祭りIMG_9490埼玉県産小麦粉ひもかわに深谷ねぎがんもを乗っけて熱々の出汁をかけたい。
こぜにちゃんの行田ゼリーフライ。食べたことない謎食品たのしみ〜
極太焼きそば入りのお好み焼きを作りたい。

LAND HO!

私が初個展をしたギャラリー山口の地下階は、現在、ギャルリー東京ユマニテとして営業しており、そこもいずれなくなるという。そのユマニテとASK?(地下と2階)で本日より開催の『LAND HO』展に私も参加してます。
出品作家6名は今は亡き山口侊子さんにお世話になった旧ギャラリー山口組の皆さんです。あれからもう30年近く経ち、若手作家はみな中高年作家になっちゃった!

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私のニュー松島抜粋はユマニテ(旧ギャラリー山口地下1F)で2点共同展示、ASK?(旧南天子画廊ビル)2階で8点展示してます。

https://mujin-to.us12.list-manage.com/track/click?u=422a9d46e7f6e0525f81f47f3&id=75faad789a&e=adba42814c

 

最高裁大法廷傍聴備忘録

昨日、最高裁判所大法廷で、旧優生保護法の被害者たちが国に賠償請求を求める弁論が行われた。この1日で5件の事件が取り上げられ、私は午後の部3件を傍聴することができた。
今まで本やテレビで知ってはいたが、理不尽な体験をされて現在も苦しんでおられる被害者の肉声は、ハンカチ無しでは聴けないお話しだった。

原告側の弁論が終わり、最後に被告である国側の反論が述べられたが、初めて声を上げた飯塚さん佐藤さんについては「不法行為から20年経過し、賠償の権利が消滅した」ので国が賠償する義務はなく「この件だけ例外にするのは立法府の軽視につながる」と詭弁を展開。他の4件に対しても「当時は合法だった」と言い切った!
思わず私は持ってた消しゴムをそいつの後頭部目掛けて投げつけたくなったが、一番憤慨しているのは、命の尊厳をかけて発言をされた皆さんだろう。

これは「国家主導のジェノサイドと言っても過言ではない」そう私は確信した。

(ドキドキの合格発表みたいなかんじ)IMG_9315
166ある傍聴席の1.5倍ぐらいの人が大行列。抽選になり「ダメかな?」と思ってたら、後ろに並んでたオジ様とオバ様が「140あったよ」と私より先に掲示板の番号を見つけ「よかったわね!いってらっしゃい」と送り出してくださった。
被害者支援会のお二人がハズレて、野良研究者の私ごときが当選し申し訳ない…しかと見届けてきます!

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読み返すのもつらいメモ…(弁論の詳細は新聞記事などでご確認下さい)
次のページに書いた小島さんの「札幌でタクシーの運転手をしていたとき、丸山動物園に行く子供連れの家族を乗せた日は、望めない夢を思って泣いた。」というお話しを聴いて落涙…
1950〜60年代は優生手術推進キャンペーンが全国に広まり、各自治体でノルマが定められ手術件数を競い合う状態だったという!(ダントツ1位は北海道で、暴力的に不妊手術をされた小島さんは競争の犠牲者)

兵庫県〈不幸な子ども生まれない運動〉と宮城県〈愛の10万人運動〉は、この裁判で初めて知った官民あげてのディストピア運動だ。

悪魔の法律(1)

いよいよ明日29日。最高裁で旧優生保護法の被害者による弁論が行われる。
1940年、大政翼賛会の新体制下に発布された〈国民優生法〉をそのまま継承するかたちで1948年から施行された〈優生保護法〉は、驚くべきことに1996年まで普通に法律として存在し、2万5000人以上に優生手術(不妊手術)を強制し続けた。国民優生法の被害者を加えたら、どれだけの人数に膨れ上がるか分からない。

優生思想を『ディスリンピック2680』のテーマにし、独自取材(古本集め)をした私としては、この裁判の行方が気になるところだ。違法どころかズバリ国家による大犯罪であるのに、どうして声を上げにくい弱い立場の人達が苦労をして訴訟を起こさねばならないのか?不条理でしかない。
この悪魔の法律がどのようなものか、古本を手掛かりに少しばかり紹介しよう。

IMG_9304左: 「優生保護法」東京母性保護医協会/昭和54年発行
右:「週報」情報局/昭和16年6月11日号[国民優生法解説]
断種手術の社会的意義とその対象が示された啓発宣伝誌の内容は、ショッキングでグロテスク…。

「優生保護法」第1ページIMG_9297
第二章 優生手術/第三条には、成人の該当者からは本人の同意が必要「但し、未成年者、精神病者又は精神薄弱児(原文ママ)については、この限りではない。」と記載されている。
なぜ被害者の多くが少年少女の時に「盲腸」と騙されて手術されたのか、その理由がこの条文にある。同意の必要がないあいだに施術しておきたかったのだ。

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生まれてはいけなかった人間の烙印を押される絶望(こんな広範囲に…)

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〈優生手術申請書〉遠足か修学旅行の申し込み用紙程度の簡易さ(残酷すぎる)

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ディスリンピック右翼は選別と排除の物語
(…次号では戦前の優生学資料をご紹介)

デイブレイク、その前に

孤独な二つの魂の邂逅と解放を描いた夜ドラ『VRおじさんの初恋』が木曜の夜に終わってしまった。

仮想空間の列車のなかで「銀河鉄道の夜みたいだ。どんな話しだっけ?」「あのお話しは…」と言いかけてカムパネルラの運命が脳裏によぎり、2人の会話がふと途切れてしまった場面で、すでに悲しいお別れの鉄路は敷かれていたのだけど…寂しい。

2ヶ月のあいだ物語に寄り添ってきた美しい歌〈ハートビート〉と〈旅人〉が頭の中で響き鳴り止まぬまま、人っこ一人いない外に出ると、虹色の輪っかを纏った月が光ってた。異世界みたいな夜空はまるでドラマの続きのようだ。

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