カテゴリー別アーカイブ: 活動関係

二重の誤認

今まで私は、皇居の濠に架かるこの橋の名前を「眼鏡橋」と誤認していた。しかしそれは長崎市にある観光名所の橋の名称であることを知り、では昔の東京観光絵葉書に表記されている「二重橋」が正しいのだろうと思って、今週の[朝日:俳壇/歌壇]挿画のタイトルを〈NIJUBASHI〉とした。
だが本当は、この水面に映る姿がメガネよりもむしろ、北方民族の着用する遮光器に似る東京の名所、私以外の皆様も通称「二重橋」と認識している橋の正式名称は『正門石橋』であり、本物の二重橋は、誤認二重橋の奥に架かる『正門鉄橋』なのだという(ことを挿画掲載後に知る)。真実はともあれ、二重橋のイメージとは程遠い直線的な正門鉄橋は、今後も二重橋の呼称を奪還するのは難しいだろう。(大多数の認知が真実となった一例だと言える)

(正式名称:正門石橋)
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縄文人も装着していたのだろうか?
私も木製のカッコいい遮光器をかけて街を歩きたい(走りたくはない)

誤報&訂正

先日の当ブログ記事にて、作品集『予感の帝国』刊行日程を11/9と記述してしまいましたが、その後それが誤情報だとわかり、《11月9日恵比寿ナディッフにて特別先行販売》というのが真実であることが判明。ここに謹んで訂正いたします。11/9に購入可能な店は恵比寿ナディッフのみで、他の書店での販売は11/15からです。ご注意くださいませ!
特定一店舗のみ先行販売である最大の理由は、それはこちらのナディッフで出版記念展が11/9より開催され〈初日に主役の書籍が無いのは変だ〉からです。展覧会ではディスリンピック部分/漫画生原稿少数/九軍神一部など、いろんな断片を揃えて展示予定!(詳細は後日お知らせ) よろしくお願いしまーす。

(目印はコレ)
rino.yokanのコピー
いろんな定規を駆使して書いた文字『予感の帝国』版画を表紙デザインに採用!

東京所々

購読者投稿の俳句及び短歌の内容とは無関係に、だが時には偶然の重なりを見せながら紙面を飾った朝日新聞[俳壇/歌壇]コーナー挿絵連載も3ヶ月目に突入しいよいよ最後の月となりました。残すところ4回となった十月のテーマは『東京』です。(なぜ東京か?特に深い意味は無い)
今週は銀座の夜景を写した昭和30年代の絵葉書を元に、地上の光景とは思えぬ宇宙的ネオンに驚愕しつつ絵を描きました。稲垣足穂の短編『一千一秒物語』に出てくる月は、何を考えているのかわからない得体の知れない奴ですが、この絵に登場する月の男も意思の疎通が難しそうです。それでも勝手にイルミネーションの模様替えをしてくれてるところを見ると、そんなに悪い奴では無いのかもしれません。

〈GINZA〉
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月には桂男という人が住んでいて、これに手招きされると寿命が縮むという伝説がある。(天体ばかり眺めているのは時間の無駄だ、という戒めだろうか?)

(本棚に一千一秒物語を探したが…)
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無かったので、この『人間人形時代』を久しぶりに手に取ってみた。
読者を拒絶する難解な内容/本の中央に穴が空いている(紐が通せる!)等、購入25年以上経っても理解不能な一冊だと言える(タルホのお月さまのような存在だ)。

おやすみ

朝日新聞 [歌壇俳壇]挿画の9月シリーズ『シューベルト歌曲集』は9/30朝刊掲載〈おやすみ〉で終了。歌曲集『冬の旅』第1曲〈おやすみ〉は、これから始まる冬の旅(追憶から逃れるための放浪)の厳しさを物語る歌である。夢破れ、街を去ってゆく青年は手紙の代わりに、彼女の家の門に「おやすみ」とだけ書き残し決別する。これで僕の本心がわかるだろう!と…(落書きと間違われて消されちゃったら最悪だね)

私が毎週水曜と土曜の早朝に「おやすみ」の挨拶をするのは近所にある一軒の家屋。この家は何の工事か不明のまま約2年間建設用の幕でずっと囲われたた状態だったが、この夏にやっと幕が撤去されその姿を現した!出現したのは正面に顔のある家で、きっと人格があるに違いない。可燃ゴミは獣害及び放火予防のため朝に出すことが奨励されているが、朝寝る前にゴミを出せば(公徳心は無くとも)自ずと模範的区民の一員となれる。そして私は近隣住民(人面家)にちゃんと挨拶もする。

歌曲集『冬の旅』より〈おやすみ〉
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その人面家を背景に描いたGUTE NACHT !!
なぜカラスは昼夜問わず鳴くのか(夜は寝ないのか?)もし私に朝の挨拶をしてくれるのなら「おはよう」ではなく「グーテナハト!」と言っておくれ。(夜じゃないけど)

来週日曜からの10月シリーズは
『東京所々』でーす。お楽しみに!

ドッペルゲンガー

当ブログお正月号にて紹介した〈ダブル〉とは、この世のどこかに存在するかもしれない自分にそっくり生き写しの人物で、ダブルと遭遇した人間は死ぬという。この恐怖の存在をドイツ語では〈ドッペルゲンガー〉と言い、むしろこちらの呼び名の方が馴染み深いと思う。
私が中学生のころ夢中で読んでいたE.A.ポオの『ウィリアム・ウィルソン』は、まさにそのドッペルゲンガーを題材にした怪奇小説で、自堕落で傲慢な主人公を、そっくりな外見をした優等生が心理的に追い詰めていく怖〜いお話であった。
もし不運にもドッペルゲンガーに遭遇したらどうするか?私だったらウィリアム・ウィルソンのような対立と軋轢を避け、死なないように努力する。おそらく私とそっくりなそいつにも、私と同様に肩こり/冷え性/足のムクミなど血行不良の諸症状があるだろう。なので私が服用している漢方薬を分けてあげる。そして私と同じく黒い衣服を着用しているだろうから、私のクローゼットいっぱいの闇をそいつにも少し分けてやろう。このように懐柔すれば命を落とすこともあるまい。

シューベルト歌曲集:白鳥の歌より
〈ドッペルゲンガー(影法師)〉
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ハイネのドッペルゲンガーは、かつて恋人が住んでいた住居を訪ねた男が、そこで絶望に苦悶するもう一人の自分の姿を見てしまう暗〜い詩である。
この絵のドッペルゲンガーは、全く同じトラッドファッションで着飾った二人の男。愛車の白いセドリックも全く同じ型だ。

明後日まで(だった)

昨年8月より豪州クイーンズランド州立美術館にて開催の〈The Long Story〉展は明後日9/23が最終日!告知をするのをうっかり忘れてしまいましたが、実はこの展覧会に参加しており、おそらくこの美術館所蔵の『人外交差点』が展示されているはずです。これは5年前に六本木クロッシング用に制作し、奇跡的に同じ展示室でご一緒した(我が心の一等星!)中村宏先生から「あんたは作品もいいけどタイトルもいいねぇ!」とお褒めの言葉を授かった記念の作品です。
プロレタリア小説『 ゴーストップ』からの引用など、日本語だらけで英語圏の方々に理解し難い箇所も多々ありますが、中央に描いた(万国共通)SNS魔方陣の呪詛を手掛かりにぼんやりと観て頂きたい。(あと2日しかないけど)

〈人外部分〉
人外部分
炎上するツイッター鳥で燃え尽きそうになった。

海辺にて

今週の[朝日:歌壇俳壇]挿画はシューベルト歌曲《海辺にて》からの着想です。「あの時以来僕の身体は憔悴し、心は憧れに死んでゆく。あの不幸な女が、彼女の涙で僕に毒を注いだのだ。」このハイネによる陰鬱な詩の一節を元に、海岸での出来事に執着したまま岩礁と同化した男。その背中の潮溜まりには決して干上がることのない涙を湛えている…とこんな情景を想像して見ました。
この絵の(写真を見て描いた)海岸は実在し、ハイネの詩情とは全く無縁の、至極マヌケな思い出が私にはあります。その海岸は三浦半島の先端東側に位置する「毘沙門」と呼ばれてる岩礁地帯で、当時小学5年生で三浦半島の更生施設(区立健康学園)に入所してた私は、磯生物の観察か何かでその毘沙門へみんなで遠足に行きました。
遠浅の岩場にはいろんな生物が生息しており、特に宝貝の貝殻が無数に落ちてました。「宝貝は古代の貨幣である」という予備知識から、私はものすごく価値のある貝だと思い込み、
現代の通貨ではないタダの貝殻をポリ袋に集めることに夢中になった!そして…気がついた時には仲間の姿は見えず、静かに足元まで押し寄せて来た満ち潮に、帰る道を奪われる寸前でした!思いもよらぬ速さで海面が迫ってくる恐怖は現実だったのか?それとも夢だったのか?今でも記憶が混乱することがあります。

シューベルト歌曲集:白鳥の歌より《海辺にて》
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なぜ小学生の私は貨幣(貝殻)に執着したか?
健康学園では現金の所持が禁止されており、寮母さんに預けた1ヶ月500円の予算から必需品(ノート/鉛筆/石鹸/歯ブラシなど)を購入しなければならず、それも外出禁止なので廊下に下がってる「買物依頼ノート」に品名を記入し、寮母さんが代わりに買ってくるシステムになっていた。
そんなことでお金への憧れが強烈だったのだと思う。(今はそうでもない)

すみか

〈ざわめく流れ. どよめく森. そそり立つ岩が俺のすみか〉こんな雄々しい歌詞で始まるシューベルト歌曲《すみか》は、観念で見た大自然を、大地を踏みしめるようなメロディーで描き出す。この曲はまさにフリードリヒ絵画の山岳地帯を眺望するが如くである。
しかし私が10×13cmのリノリュウム版に刻んだ《すみか》はそのような偉観ではない。この絵の主人公は原詩登場の放浪者ではなく、鳥類と人類の中間的な存在で、この人物は人面岩を住処にしており、退屈な山暮らしのなか天候の変化だけを唯一の楽しみに暮らしている(誰かみたいに不謹慎な奴だ)。雷光を見て嵐の襲来に怯えつつ心の裡でスリルを期待している…そんな鳥人間の気分を描いたのが今週の[歌壇俳壇]挿画です。

歌曲集:白鳥の歌より《すみか》
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この掲載紙の発売前日(9/8) ねぶた祭りが開催され、青森でないこの町にラッセラーの掛声と鈴の音が夜中まで響く。我が住処かざまランド斜向かいが集会場所なので、祭りが苦手な私は辟易とし終日籠城を極め込む。

(夜8時)
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これは先日の雷雨のときの写真(眩い閃光で真っ白く飛んだ庭の光景)

セレナーデ

現在連載中「朝日:歌壇俳壇」挿画の9月のテーマは《シューベルト歌曲集》です。シューベルトをドイツ語で歌うことをあっさり断念した私は、むかし覚えた日本語歌詞のセレナーデと菩提樹 (の一番)ばかり歌っています。堀内敬三という人が作詞した和文版セレナーデは、本家レルシュタープを凌ぐ素晴らしい詩で、メロドラマっぽいオリジナル歌詞に対し、詩的な言葉を呪文のように繰り返す不気味な静けさがなんとも秀逸!
〈秘めやかに 闇をぬう 我が調べ/静けさは 果てもなし 来よや君/ささやく木の間を もる月影 もる月影/ひとめもとどかじ たゆたいそ たゆたいそ〉…た〜ゆた〜いそ、た〜ゆた〜いそ〜♪の不思議な情感にチャレンジしたのが今回の挿画〈セレナーデ〉です。

歌集「白鳥の歌」より
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「白鳥が臨終の間際に発する最期の一声は、どんな鳥類の鳴声よりも優る」というへんな俗説から、シューベルト最後の作品集の題名は『白鳥の歌』と名付けられたという。しかしこの絵の中の鳥は当の白鳥ではなく、小夜曲(セレナーデ)に登場する夜の鳥(ナイチンゲール)である。

〈ディースカウ先生〉
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先生と一緒に歌えないけど. 先生の歌声は鑑賞する。
手前のCD『冬の旅』はドイツの新感覚楽団(アンサンブルモデルン)による演奏で、全くお手本にはならないし、歌っているのはディースカウではない。(新解釈版シューベルトでかっこいい)

暗中模索

画集掲載用の漫画原稿を詳しい描き方もわからぬまま手探りで(やっと6p)描きました。「次回作は漫画ディスリンピックで〜す」と丸木美術館展覧会のオープニングトークでもハッキリと公言してしまい、この発言は米国の有名美術誌『Artforum』にも記載されて、私の漫画宣言は公約とまでいかないが世界の皆様との約束となってしまった!
どんな内容か?読者の皆様に特別先行お知らせすると…〈これは体育の祭典『ディスリンピック2680』の開催を控えたとある大都市での物語。優生学の権威・永井幽源博士に見出され育成された、最も優れた遺伝子をもつ美しい男子体操選手・日出鶴丸と、先天性障害を理由に、断種手術を施された地下アイドルグループ〈永遠ニ乙女団〉のセンターを務める美少女・月光。この正反対の宿命を背負った少年少女が出会い、そして彼らに今後どんな展開が待っているのだろうか…?乞うご期待!〉…以上が漫画の梗概です。
このファンタジー漫画の目指すところは、19世紀フランスの作家・ヴィリエ・ド・リラダン伯爵の小説に描かれた「耽美と変態趣味に隠匿された批評性」の漫画化です。と説明するほどに「?」ですが、これの断片である漫画原稿はさらに謎作品になりました…。

〈月光参上〉
A(月光)のコピー
頭上に飛来する夜間戦闘機『月光』はいうまでもなくこの少女の名前の由来である。
B29を下方から狙い撃ちする斜銃は、ドイツ軍では「ジャズ銃」と洒落た名で呼ばれている。先端に搭載されたレーダーが蛾の触角みたいで大変好ましい。