作成者別アーカイブ: 風間 サチコ

日曜美術館:20日放送予告

凄まじい最凶台風19号の残していった爪痕。その被害の甚大さと土木技術でも制御できない自然の威力に絶句するばかりです。奇しくも治水と治山による新秩序建設がテーマの『クロベゴルト』展示中のコンクリート組曲展も、水害の影響による北陸新幹線運休で、遠い富山県が更に遠い場所になってしまいました。1~2週間で復旧の見込みとの報道も希望的観測のように思え信じがたい…。
まさかのこの事態に「新幹線動かないしもう見に行かなくてもいいや」と諦めてしまったそこの君に朗報です!なんと20日放送のNHK日曜美術館〈アートシーン〉コーナーで我がコンクリート組曲が(数分)ご紹介される予定!この番組コーナーをチラっと見て、時間の無い諸君は展覧会を見物した気分になってもよし、高徳な皆様は頑張って足を運ぶ機運を高めてもよかろう。

KUROBE GOLD
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秘境・黒部峡谷の闇をいざ拓かんと深い谷間に光の矢が刺さる第一幕
縦に細長い字で黒部ゴルトとわざわざ書いて何かの表紙っぽくした。帯状の鳥瞰図は(株)日本電力の絵葉書袋からの引用。特に皆さんに知っていただきたいのは、黒い面を真っ黒く刷るのに10時間も要し、インクを丸一本(100ml)使用したということだ。乾燥時間を考慮してこれを最初に刷ったら、まだ5点も残ってるのに腕がビリビリ痺れ太郎になってしまった!

レクイエム

黒部川の急流を電気の魔法に変える水力発電所とダムは、下流から上流へ黒一、黒二、黒三、そして黒四と建設されていった。黒部といえば映画『黒部の太陽』の舞台、黒部ダム(黒四)が有名で、大自然の征服と日本の土木技術を世界に誇るこの巨大ダムは、敗戦国日本がプライドを取り戻す戦後復興のシンボルの一つに数えられるだろう。
この黒四の輝かしい栄光の陰に、黒三ダムの暗黒の歴史が隠れていることを知る人は少ない。斯く云う私もこの本『黒部・底方の声 黒三ダムと朝鮮人』と出会うまで全く知らない事実だった。リサーチの一環でたまたま図書館で借りた一冊だったが、ここに記された過酷な労働環境とそこに置かれた朝鮮人労働者のレポートに震撼し、これは重要な書籍だと直感した。富山県在住の三人の女性ジャーナリストによる公正な良心に基づいた緻密な調査と報告は、当事者の朝鮮の方がご存命中に直接会って記録しなければ!という焦燥感がスリリングで、厳しい内容ではあるがぐいぐいと本に引き込まれる。
…時は日中戦争勃発前夜。電力の需要はますます高まり、電源開発は国家を挙げての喫緊の課題となっていた。1936年に着工され三年後の1939年には完成せよと命じられた〈黒部川第三発電所〉の突貫工事は、詳細な地質調査や対策も練られないまま大勢の犠牲者を出した。その多くが朝鮮から来た労働者たちで、彼らは日本人が恐れた最も危険な場所で働かざるを得ない出稼ぎ労働者だったのだ。150℃を超える高熱隧道の岩盤掘削は火傷の危険が伴い、冷水を浴びながらの決死の作業。更に発破のダイナマイトが高熱で自然発火し何人も爆死した。そしてこの地獄の現場を出た地上でも悲劇は繰り返された。山腹に建てられた飯場が巨大なホウ雪崩に見舞われ、宿舎もろとも谷を越え600m先の山に叩きつけられて百人近くの労働者が谷底に散っていった。黒部川の電源開発工事の犠牲は、当時の新聞報道の見出し「発電工事の人柱」の表現そのものの惨状だったという。
…私はこの『黒部・底方の声』をヒントに〈ゲートピアNo.3〉を制作し、黒四完成で幕を閉じる〈クロベゴルト〉の栄光の陰でひっそりと歌われる鎮魂歌として飾ることに決めた。

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『黒部・底方の声 黒三ダムと朝鮮人』
内田すえの・此川純子・堀江節子:共著 1992年/桂書房
(なんと!!!!) 著者の堀江節子さんがコンクリート組曲開幕第一号のお客様としてご来場!嵐の中ものすごいサプライズ!

仕合谷のコピー
ホウ雪崩の発生した志合谷周辺の風景
実際に見てにわかに信じられない険しさ…

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〈ゲートピアNo.3〉ダムに沈む運命を免れたエジプトのアブ・シンベル神殿遺跡がモチーフ(何が描いてあるかな?展示壁面の裏側にも仕掛けがあるよ)

嵐を呼ぶKUROBE GOLD

展示作業を終えて準備万端整った黒部市美術館『コンクリート組曲』でしたが、なんとオープニング当日に最強台風19号襲来!来館者の安全を優先して開会式及びトーク会の中止を決断。関連行事全面中止と開館時間短縮の緊急情報をSNSで流し「無理して来館しないでください」という消極的姿勢にて記念すべき展覧会初日を迎えました。
式典の無い異例のオープニングは、地元CVテレビ、新聞等マスメディア各位への取材対応と、ゴーゴーと暴風吹き荒ぶなか来館してくださった酔狂なお客様のために120%の接客サービス(お茶とお菓子とお喋り)で楽しく穏やかに終了。その後直ぐに帰京の予定でしたが、交通機関の計画運休が決まってたので「明日の昼過ぎなら北陸新幹線も動くはず」と楽観しもう一泊することに。
ところが朝になって長野の車両基地水没の悲報が!4.3mの水に襲われた120両の哀れな新幹線車両の姿…もちろん北陸新幹線は無期限運休。露地栽培のY字郎の安否と雨漏りが心配なので早くかざまランドに戻りたい私でしたが、東海道新幹線は帰京を急ぐ人たちが殺到することを予測し、あえて高速バスで北上し新潟から上越新幹線で迂回する帰路を選択。これは大正解でした。上り鉄路が渋滞し信号待ちで1時間ほどの遅延が生じたものの混雑に巻き込まれずにすみました。通常4時間の黒部→自宅に7時間もかかり深夜0時に帰宅。気がかりだったY字郎/ミニコンポ/画集の無事も確認し安堵しました。
台風に翻弄されつつもどうにかクロベゴルト開幕できたことを美術館学芸員さん黒部市の皆さんに感謝いたします。ありがとうございました!

(雨漏り対策)
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U字型に成形したビニールシートをつたって雨水がゴミ箱に溜まる仕掛け。雨漏りしてほしくない反面で内心は溜まった雨水が見たかった自分がここにいる。

(暴風雨に耐えたY字郎)
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さすがは(たぶん)雑草!

(会場設営風景)
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バッチリ展示できたので是非ともご覧になって頂きたいが、会期中に黒部と東京を繋ぐ動脈(はくたか号)が復旧されるか心配…。黒部市美術館『コンクリート組曲』は12月22日まで開催!

三たび黒部へ

サロンパスを貼り100円黒サポーターで締め付けてもなお、ビリビリと痺れの走る右腕に「あと少しだよ」と言い聞かせクロベゴルト仕上げ作業は無事に完了。一人では抹殺する勇気の出なかった新作『ゲートピアNo.3』の朝鮮人労働者の姿も、無人島のみんなに見届けられ彫刻刀で粛々と削り取ることができた。(どんな作品なのかは会場でご覧になるか後日解説を待たれよ)本日出品作品全て集荷輸送され、明日から展示作業で三度目の富山県黒部市入りです。

北陸地方の皆様にもぜひ観て頂きたい第四回ディスリンピックのドサ回り興行並びに、ご当地黒部にちなんだ新作『クロベゴルト』と旧作『ガソリンで見た夢』『ダイナマイトは創造の父』も展示。はて、展覧会タイトル『コンクリート組曲』は一体どこに?とお思いの方もおられようが、ラインゴルトがニーベルングの指環の〈序夜〉であるように、クロベゴルトをコンクリート組曲の〈序曲〉と捉えていただいてよろしい。クロベゴルトに描かれた黒部川には、あたかも神のように自然をデザインしていく近代的な新秩序の栄光が輝き、水底には蹂躙された者の嘆きが沈んでいる。水や土砂を堰き止めるダム建造を可能にしたコンクリートが新秩序を建設してゆくのである。

(絵葉書箱は3個もある)
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『ガソリンで見た夢』原画のスーパー林道絵葉書も資料として展示しようと蓋を開けたら毒々しい絵葉書集、地獄めぐり/秘境!西表島/地獄の全貌が…これらを全部開封し捜索するのはまさに地獄。
もし発見できたら林道絵葉書も出品する黒部市美術館『コンクリート組曲』は12日より開催で〜す!

刷れた〜!

特注サイズの版木に苦心した新作『クロベゴルト』(KUROBE GOLD/ローレライ/ファゾルト&ファフナー/侏儒の王国/新秩序/ヴァルハラ) の計6点が一昨日やっと刷り上がり、本日から無人島に作業場を移して仕上げに取り掛かる。どうにかディスリンピックの悪夢再来とならずに済んだ!

(刷れた!!!)
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作業室を占拠し乾燥中

(執務室より作業室を臨む)
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いつもの事務机では小さいので、グラグラ揺れるテーブル型電気コタツの上で無理やり刷り作業を強行しているところ。
版木上には和紙/自作見当板と水石とスプーン/自作バレン/画集が置かれている。水石とアルベルトオーレン画集は文鎮代わりで、途中で紙がズレないように押さえる役割を担っている。この観賞石はすごく重たくて役に立ったが、酷使し疲労蓄積した手で扱うのに危険が伴った(指を挟んだり足に落下させる恐れが)。ご覧の通り、私は27年前に作った手作りバレンとスプーンだけで全作品を一人で刷っているのだ!(6m以上あるディスリンピックも)。

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地獄と煉獄山のような『新秩序』も刷れた!
里香さんとかっきーがUKの音楽グループ・ニューオーダー好きらしいので私もこんど聴いてみよう(テクノでは無いと言う)

自然に帰れ

Y字郎の雑草疑惑は確信に変わり私はY字郎を庭に解放することにした。薄紫色のビオラの花が嘱望された彼であったが、葉っぱの形はビオラのそれではなく、不明なまま根ばかりがぐんぐん伸びて小さい鉢内にとぐろを巻き、根詰まりのせいで自身で成長を止めてしまった。(これはいけない!) 屋内栽培の限界が見えたので、先日からY字郎はスロープ脇の土壌に生活の場を移し、自己責任の求められるアウトドアーライフを開始したのだ。

(すごい根詰まり)
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ドジョウの墓掘り用だったスコップが見当たらず、スコップを実家から借りてきた。

(無事の越冬を祈念する)
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たまに見に来るから頑張って!

獺祭魚パート2

先月妹のお義父さんがお亡くなりになりお通夜に参列したところ、斎場のロビーに故人を偲ぶ思い出コーナーが設けられていた。ここには東南アジアで技術指導者として活躍する壮年期のお写真などの展示の他に、模造の鮎がザルに並べられていた。このニセ鮎はお義父さんの釣り仲間による手作りだそうで、鮎写真を転写したウレタンを二枚合わせ立体感を出した手の込んでいる細工だ。それはまるで葬儀というよりも獺祭魚の儀式を彷彿とさせる祭壇であったが、魚を釣って遊んだお友達は人間でカワウソではないはず。

(鮎そっくりさん)
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カワウソくんのお祭り(ではない)

(ヴァルハラを模した黒四ダム)
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「信頼と真心は水底にしかない、上には卑劣な虚偽が蔓延し栄華を誇っている!」というラインの乙女の嘆きで終わる『ラインの黄金』ヴァルハラ入城の場面。私の版木彫作業もこれでやっと終わる。(友釣りや毛針に騙された鮎の気持ちもラインの乙女同様に虚偽を憎んでいることだろう!)

化粧気のない女

昨日は複数の用事が重なり久しぶりに電車に乗って外出をしました。9月頭に参列した親族のお通夜以来の外出だったので、座ってばかりで衰えた脚が途中で攣ってしまった。
代官山(打合せ)→恵比寿(額装発注)→新宿(世界堂買物)→神楽坂(個展鑑賞)と私にしては過密な日程をこなした充実の一日。中でも制作逼迫中となっても這ってでも行きたかった個展に行くことが叶い良かったです!行けて満足だけど、帰宅すると全然終わらない作業が待っているのでした(とほほ…間に合うのかな?)

(私は23日ぶりに化粧をした)
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「風間さんにソックリ」とかざまランドお客様に評判の吉村宗浩さん作〈私は着飾らない〉ですが、実は加筆前は〈化粧気のない女〉という絵で、それが掲載されたカタログを頂きました。当時の頭部は水泳キャップをかぶってるように見えボンヤリしている。
なんとも言えない素晴らしいムードの人物画が特集された個展『吉村宗浩:肖像画とアトリエの模様替え』はFARO神楽坂にて〜10/12まで!

(地獄の砂防ダム)
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オーストリアの土木研究誌から引用した砂防ダム写真だったが…土砂の再現が地獄すぎた!これに時間を多量に費やしてしまった。

12月から(観光)シーズンオフ

兵庫県在住の旧友が12月に黒部に行ってくれるというので「11月がいいよ」と助言しました。何故ならば、12月から黒部観光のオフシーズンとなり、アルペンルート乗物登山による黒四ダム見物も、黒部峡谷トロッコ鉄道乗車も冬季休業で不可能になるからです。

宇奈月温泉に宿泊とのことなので私が利用した格安ホテルをおススメしたところ「イケメン給仕がいると評判の別の旅館にします」とお返事が。私推薦ビジホには風水パワーが期待される置物の数々(大量の紫水晶原石・地元画家による山岳画・巨大雷鳥ぬいぐるみ)が玄関ロビーに飾られ、これら全てが招福万来の実力を発揮してるならばイケメンなどに負けないはず!しかし不思議パワーよりもイケメン従業員のほうが格段に集客効果があるのが現実です。(イケメンがどんなだったか友人の感想を聞いてみたい。それと日本一うまいと評判の熊本のソウメンを一度は食べてみたい。)

〈哄笑の谷渡り〉
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「ハハハハハハハ」と黒部峡谷に谺する声。
擬音の目立つへんな芸術漫画のような戦前絵葉書にみられる危険な吊橋風景も冬季はトロッコ車窓からは見物できない。

新秩序

外に出ないので何か口に出して喋ることも無く、食事に関しては白米も肉も口にしない禁欲的僧侶のような生活が続く。そして早くも秋になった。季節の移ろいとともに黒部市美術館の会期が迫っていることに焦っているけれどそれも人には言わず、私は沈黙したまま脳内で焦っているのだ!(さあ大変!)
しかしこうして黙ったままでいると精神や身体に悪影響がありそうなので、セリフ付きの歌を歌って声を出すことを日課としている。何曲か歌う中でも『番場の忠太郎』という浪曲演歌はもってこいで、節回しの難しさやセリフの長さが適度な脳トレになっている(と思う)。詳しい事情は不明だが、幼少期に生き別れになった母親と旅先で偶然再会したものの素っ気なくされて、悲しさと怒りが噴出し〈本人に会わずとも目を瞑って思い出せばよい〉と開き直る渡世人のお話の歌だ。私は有名なセリフ「おっかさんッ!!! えッ?違うってぇんですかい!?」のところが面白くて気に入り、何度言っても自分の声が滑稽に聞こえ、思わず噴き出してしまい楽しい気分になる。(半ばキレ気味に言うのがコツだ)

クロベゴルト〈新秩序〉
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ここに描かれているのはダム湖とダム穴とそれを塞ぐお風呂の栓です。
ヴォータンの槍には世界を制圧する契約の言葉が刻まれているが、ニーベルングの劇中でははっきり明かされない。どんな言葉か勝手に想像し〈新秩序〉ならぴったりではと思い、治水と治山の新世界に英語で新秩序=ニューオーダーと書いてみた。(英国かどこかにニューオーダーというテクノバンドが実在すると後で知った)