カテゴリー別アーカイブ: 古本

問うて曰く/答えて曰く

奇書『視実等象儀詳説』は「△問うて曰く」と「△答えて曰く」の 問答が50回も繰返されるQ&A方式の本です。大多数の人から質問されそうな厳しい問いを佐田介石自身が想定し、それに対し仏教天文学の理屈を並べ立てて解説してゆく。このいわば自問自答の自己完結な攻防戦を私達はどう読めばよいのか?

西洋天文学の説(地動、ドーム型の天空、球形の地球など)は見かけの宇宙、即ち〈視象〉であり、仏教天文学の説(須弥山を中心に旋回する天道、ぺたんこの天空と地球)は真実の姿、即ち〈実象〉だという。そしてこの両説(視実)の宇宙は矛盾せずに同時に存在するという謎…。これを理論的に説明することは困難で、屁理屈と化した問答集を読んでると「もう諦めて太陽暦を受け入れちゃえば?」とつい言いたくなってしまう。こんな気持ちでは最後まで読めない。

Q&A古文書(ヤフオクで2000円)
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最初の問うて曰く「すでに西洋の天文学が普及してるのに、今さら説を覆したり蛇足する必要あるの?」という鋭い質問(自問)に対し「大砲からピストルの発明に進歩して、そのピストルも日々モデルチェンジしてるんだから、天文学だって新しい説が出現してもいいんだよ」という答えで、ちょっと腑に落ちない…。

これが視実等象儀だ!
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ケーキのように平な海に浮かぶ4つの洲(陸地)はドーム型の宇宙(視象天)に覆われ、遥か上空のぺったんこ天空(実象天)に太陽系があり、須弥山(真ん中の棒!)をグルグル廻りながら28日周期で上下する!?らしい…正直いうと理解不能です。

對近代

古文書のみで〈視実等象儀詳説〉を理解するのは限界があるので、図書館で借りた春名徹 著『文明開化に抵抗した男 佐田介石 1818-1882』の助けを借りることにした。これによると熊本の神童と称された介石はカール.マルクスと同時代人だと紹介されている。
なるほど確かに、世界の同時代人と並べると、介石が煽動した仏教に基づく梵暦の普及活動、グレゴリオ暦反対運動の時代背景に奥行きが増してくる。
イギリスを震源地とする産業革命の波が様々な方面に影響を及ぼした19世紀とは?それはズカズカと土足で踏み入る近代によって旧来の美徳が荒らされていく入口だ。

ドストエフスキーはロンドン万国博覧会(1851)の水晶宮に近代合理主義の勝利を見出し、嫌悪感を抱いた。ワーグナーは巨大化する人類の野望が、近代の魔力で実現可能となってゆく不吉な未来を『神々の黄昏』に描いた。ニーチェが数々の著作の中で、来たる近代黄金期を(事前に)全否定したことは言うまでも無く、皆様の周知するところであろう。
そして我がジャン・マリ・マティアス・フィリップ・オーギュスト・ド・ヴィリエ・ド・リラダン伯爵は、赤貧に喘ぎつつ、家具の無い部屋に寝そべりながら『未来のイヴ』を執筆し、科学の申し子である人造人間ハダリーの口から合理主義を呪う罵詈雑言を(とても優雅に)吐かせている最中であった!

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闇黒の無限世界(高次の存在)を否定する悪しき近代的概念「理性」と「自然」。機械の貴婦人は後者の合理社会に安住する恋人・エワルド卿をエレガントに喝破する(けちょんけちょんに!!)。白昼とランプに照らされた視覚情報しか信じない者は「己れ自身からの脱走兵」だと…
西洋天文学における「見かけ」の宇宙と、見えない仏教宇宙の摺り合わせに奮闘した佐田介石の〈ランプ亡国論〉にも注目だ!

仏教天文学の扉

ようやく落ち着いてきたので『視実等象儀詳説』を紐解いてゆこうと思う。まずは〈序〉でも読もうか…わぁ何故か漢文!書き下し文を読んでると受験生になった気分♪ 受験勉強したことないけど!

〈序〉
人あり、岸上に立ちて見るに、蒸気船の行き過ぎるさは十里に測り没し、見えざる試みに以って、五十里鏡を望めば、測りざるを見る。ごときなるをもと没し、ゆえのその五十里尽くするに至りてまた見えざる。更に百里鏡をもって望めば、測りまたそれ見えざるを没す。しからばすなわち先に十里ほどに没するを見たるは、これ実に没したるにはあらず。肉眼の力これ及ばざりなれば、また五十里尽くするに至りて没するを見るも、実に没したるにはまた非ず。これ五十里鏡の力及ばざればなり、さらに二百里鏡、三百里鏡を望む寸はすなわち没し見るにあらず。また皆しからん、しからばすなわち、遠鏡のこれ見る所なおあたわざりし。その実象に達し、いわんや天地のこれ広大なるや、ああ!人目なんぞ及ぶけんやかな。これもって知る天地の真象は、眼において在らざる、心において在るを、いずくんぞこれ千載未発の視実のことわりを発明する。眼においてあらざる、なんじ心において在り。この所以なりや。(間違ってたらすみません)

エキセントリック僧侶.佐田介石 撰 (明治13年刊行)
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崖の上から海上を航行する蒸気船を見ようと望遠鏡を覗く。ところが、どんどん倍率を上げても追いつかず見ることができない。このように肉眼も望遠鏡も真の姿を捉えるのには不十分である。しかし心の眼なら可能だ。これが「視実の理」の発明なのだ。(こんなかんじの意味かな?)

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「地球は丸くない!ぺったんこなのだ!」
ぜんぜん読めない狂った目次は訴える

蓋を棄てよ

昨年購入の『天台小止観』には五つの蓋を棄てよ、と書いてある。サインペン/筆ペン/リップクリーム/柚子胡椒/100均印鑑の蓋なら容易に棄てる(失くす)自信が私にはある!そして蓋をさがしてるあいだに時間も失くすのだ。

禅ブームで価格高騰の『天台小止観』
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それがたったの300円(だったので購入)

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5種類の蓋をどうやって棄てる?

昔の眼鏡で見ています

〈大地震で港が陸地になった〉という衝撃のニュースを見て、朝霞りっくんらんど(陸自)で展示してる水陸両用の特殊車両など総動員できないものか…とヤキモキした気持ちになる。
心ここにあらずで時間は過ぎて早10日。正月返上で制作してる作品は未だ完成せず、時間が巻き戻せるなら巻き戻したい。2023年に…

【初夢2024】美大の公表会に参加し、学生の作った彫刻(マスオさんの失敗)を見て爆笑する夢。本当に爆笑して自分の笑い声で目が醒めた!この作品はA.ミショー風のクネクネした体躯にマスオさんの頭部がのってる変な彫刻だった。
【初荷2024】今年の初荷(和書)は『大經五惡圖會』→地獄の様子を描いた恐ろしい本(不吉だ)
【初拾物2024】路上のご自由にどうぞ箱から古本4冊をもらう(以下写真)

意図せず入手した本で今年を占う
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『猿が人間になるについての労働の役割』『ギリシア悲劇入門』『風景学入門』
『十月の旅人』R.ブラッドベリは華氏451°しか読んだことないけど、タダで拾った本なので何かの啓示があるかも?またよく燃えそうな本が増えてしまった!

今年こそ読破!!
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荘子による『荘子』

和書探訪(時には紙魚のように)

制作で忙しく外出できない鬱憤から、ミステリアスな古文書ブームが勃発!興味の赴くままに落札した古地図と古い和書が部屋のあちこちに落ちているが未だゆっくり読めず…というか、江戸時代や明治時代の文字に判読を拒まれている。
紙魚に舐められた地下通路のような穴と読めない文字の海で迷子になりたい!(それは来年に!)

(君も欲しくなるはず!)様々な古文書
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左上は五輪塔を究極の理想とした花道の教書『松月堂古流生花乃傳圖』隣は無いようで在る空気の存在を解説する『博物新編譯説』右下は西洋医学に対抗し独自の生理学を考えついた変な禅僧の書『心性実験録』隣も近代西洋文明に反旗を翻す学僧による天文学の書『視實等象儀詳説』(地動説をひっくり返せ!)

テトラポッドの海岸線も実は洗面器のフチかもよ?
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僧侶.佐田介石は模型を使って仏教宇宙・須弥山に基づいた天文学を衆人に知らしめようとしたのだ!桶や盤の海洋図〈萬水ニ依ル堤防圖〉に出会えただけで私は大満足だが、来年は頑張って読み解いて皆さんに内容をご紹介しよう。

幻のウドンヤ

(夢の旅路)ミニ東海道53ガイドの各ページ上欄には旅人のメモがあり、⚪︎△□を組合せた謎マークや、宿泊した旅籠の屋号⚪︎⚪︎ヤなどの記入に興味がそそられる。その中で唯一飲食店のメモがあるのが駿河【由井】現・静岡県由比のページで「ウドンヤ」と書いてある。どんなウドンか食べてみたいけど店名が分からず、現在営業しているのかも不明。誰か江戸時代の静岡ウドンを再現してくれないかな?

笠を被った丸顔みたいな印 ↓はなんだろ?
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〈ウドンヤ〉横の文字が店名か?全然読めない…(ウドンが無理なら静岡オデンでも食べるか)

越すに越されぬ…

すっかり下描き迷子となってしまい、下絵の向こう岸にある版木作業まで越すに越されぬ大井川となってしまった!(これでは川どころか年も越せない)

そして今日もまた東海道ミニ古文書を眺め、江戸時代の人が半月をかけて歩いた一本道をなぞってみたりしている。(そんなことより下絵を描こう)

日本橋-品川-川崎までフワフワ重傷(判読不能)
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ここは【保土ヶ谷】↑の先にある∩型の変な場所は金沢八景の平潟湾と思われる。本当にこんな形なのか行ってみたい(来年に!!)

難所【箱根】も楽勝に見える!
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実際は紆余曲折あるはずの道のりも一本道でしか書いてないから難なく歩けそう!箱根の山も楽勝(ではない)

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東海道最大の難所といわれる駿河【島田】の大井川。大金を支払って人足の肩、馬や輿に乗せてもらい渡るのだから、旅には体力はもとより財力が必要だ。

(何故ゴールしなかったのか? )
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朱色点線で辿る徒歩旅は京都鴨川に架かる三条大橋で終了!と思いきや、京都に向かう途中の近江【大津】にある分岐点(髭茶屋追分?)で初めて道を曲がりゴールせず、この旅人はどこかへ行っちゃった…

53次へ(現実逃避)

ニュー松島も近美コレクション展も終わり季節はもう師走。新作を年内に刷り上げないといけない私だが、燃え尽きた炭に火は付かず、一刻一刻を無駄にして過ごしているのだった。
〈時間の無駄遣い促進本を紹介〉
かざまランドで流行中の古文書収集で、こんな旅の本を見つけたヨ!現代のサインペンで表紙に『道中絵圖』と書かれたミニ和書の中身は、53ページに渡る1本道(日本橋〜鴨川三条大橋)で、ページ数と宿場名から一本道は東海道だろう。492㌔の長い道中、旅人の懐を出たり入ったり繰返したはずの本はボロボロというよりフワフワな塵紙のよう…。ポケットティッシュみたいになったロード53が徒歩旅の夢に誘うのであった。

ミニミニ道案内
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本当の書名と出版年不明(誰かが後で付けた仮の表紙)

(脇道は不要!!)
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武蔵→相模(ここは戸塚)
朱墨の点線が徒歩ノルマ達成の足跡を残す

(どこだろう?)
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「ごんげんの人穴 富士ト公?」の謎。上に書かれた「追分大山八王寺」をヒントに探すと、八王子市の富士森公園内にある浅間神社に辿り着いた。人穴とは何か?現存するのか?行ってみたい(来年に!!)

藤井書店

先週金曜日に用事があり吉祥寺へ行った。吉祥寺は母校の(今はもう無い)武蔵野美術学園があった街で、本科~研究科と5年間も通った思い出のある街だ。

間違えて早く着いてしまったので商店街をブラブラしてると、サンロードを抜けた五日市街道にある古本屋〈藤井書店〉が昔と変わらず営業しているではないか!懐かしい〜(勝手に廃業したと思っててすみませんでした)。ここは当時私が一番好きだったお店で、1階は美術関係と学術書、階段書棚には映画/演劇/音楽の本。2階に上ると古い小説と詩集があり、そして大小様々な大量のコケシを背後に従えた老店主がいつも静かに鎮座していた。
このお爺さんと喋ったのは1~2回しかなく、はっきり覚えているのは
高校時代から欲しかった萩原朔太郎詩集『月に吠える』の復刻版を2階で発見し購入したときのことで、感激して思わず「やっと手に入って嬉しいです」とお話しすると「そうですか」と言葉すくなに答え、詩集を包装紙で丁寧にくるんで輪ゴムでパチンと留めてくださった。本当に嬉しかったな〜

30年も前だから既に御存命ではないはずなのに陳列の傾向は全く変わらず、あたかもタイムスリップしたかのような錯覚に…。微細に売りつつ同じような細胞=古書を仕入れて代謝してるのか?(古本屋さんの不思議)

〈藤井書店購入〉
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19歳の頃に藤井さんで買った3冊
萩原朔太郎『月に吠える』復刻版、萩原恭次郎『死刑宣告』復刻版、稲垣足穂『人間人形時代』
同じ苗字だから朔太郎と親類かと勘違いして購入した詩集『死刑宣告』の衝撃!すごく影響を受けた。
怒涛の変態博識タペストリー『人間人形時代』は読者の理解を置き去りに稼働する高速機織り機のようで、なんだかよくわからん本だ(未だに)。

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そしてこれは先日購入した本『そばちょこ』¥200
物欲から解放されるために大量の猪口写真を見て充足しよう!私は鴨(長明)になりたい…