カテゴリー別アーカイブ: 古本

幻の中止グッズ

123日後に予定どおり開催されるのか?未だ蛇の生殺し状態が続く東京オリンピック。海外からは延期か中止の声が大きくなり、年内開催はもはや死に体….。購入済みの高額観戦チケットや、すでに『2020』と印刷された物品の山を前に「これは悪い夢にちがいない!」と多大な損失に頭をかかえる人が大勢いるのに、よくも悪夢の現実を「呪い」だと軽々に言えたものだ。(この災いを招致したのは他でもない君達だ)
黒ダイヤ太郎の都市伝説〈40年周期の呪い〉の真偽はさておき、本日は1940年に頓挫した2大イベント『紀元2600年記念日本萬國博覧会・東京オリンピック』のグッズをご紹介しましょう。お祭り気分を強行した結果どうなるか?中止は非科学的な呪いではなく必然だったといえよう。

1940年オリンピック(中止)グッズ
IMG_2868
五輪年賀状とオリンピック会場建設のコンペ資料(早大理工学部の競技場デザインはインターナショナル様式風でオシャレ)

紀元2600年万博&都市博(中止)グッズ
IMG_2867
上の鳥瞰図絵葉書は、東京湾の臨海埋立地に建設予定していた『紀元2600年記念日本萬國博覧会』の会場予想図。そして左のキーホルダーは〈東京大使〉という名前の都市博公式キャラクター。1996年開催予定だった国際都市博覧会(都市博)もまた、同じ臨海地域が会場のはずだった(お台場はその名残)。この頓挫の歴史を重ねた不吉なウォーターフロントに建てられたTOKYO2020選手村の運命や如何に?

下は 「萬國博覧会・回数入場券(12枚綴)」で、博覧会が中止になったのでもちろんこれも無効に…と思いきや、なんと!! この券一冊で、1970年大阪万博もしくは2005年愛・地球博の招待券2枚と交換できたのだというから良心的ですネ。2025年大阪万博でも使用できるかな? (一度夢破れた夢洲に東京フロンティアの不吉な影が重なる)

菩提樹

肺病の従兄を見舞いにダボス高地のサナトリウムに行ったハンス・カストルプ青年は、ちょっとした余暇のつもりで3週間の短期滞在を予定してたが、現地で自分も結核患者だと判明、何と7年間の長期滞在をすることに!「死を意識した病人は思慮深く高尚にちがいない」という新参者の先入観は、「病気は人を選ばないし、病が人を成長させることもない」というセテムブリーニさんの説で見事に論破される。肺病の従兄の横でお気に入りの葉巻を「美味い美味い」と吸っていた青二才のハンス・カストルプ君は〈中略〉このセテムブリーニ先生の薫陶を(7年も)受け立派に成長したが〈中略〉第一次世界大戦開戦により、急転直下、激戦地に送り込まれ、自分の軍靴が戦友の手を踏みつけてもなお前進し、自失状態でシューベルトの『菩提樹』を口ずさみながら読者の前から姿を消すのである。彼の最後の一声は「枝は…そよぎぬ、いざなう…ごとく…」で次の歌詞「来よ、いとしとも、ここに幸あり」に続く前に途切れてしまうが、この墓標に刻むのに相応しい一節が彼の命運を暗示しているように思える。(虚しい結末に感動する前にちゃんと経緯を読もう。『魔の山』途中下山の予感が!)

(ここに帽子あり)
IMG_1890のコピー
面をかすめて 吹く風寒く
帽子は飛べども棄てて急ぎぬ…

魔ノ山ノボレ

お正月に今年の課題図書はトーマス・マン『魔の山』と決定してからどれだけ読めたかというと、上巻下巻の計1233ページのうちの260ページしか読んでない。(富士山で例えると2合目ぐらいまでしか魔の山を登ってない換算になる)。私は以前、ドストエフスキー『悪霊』を上巻で挫折し、その後再び読もうと思ったが内容をすっかり忘れたので諦めてしまった経験がある。挫折の一因であるあのペラペラと饒舌なピョートルのお喋りに付き合う気力はもう無い。
『魔の山』にもピョートルと負けず劣らず饒舌な人物〈セテムブリーニさん〉が登場するが、この同じ服ばかり着てる啓蒙主義者の喋るお話は軽妙かつ意味深長なので、若いハンス・カストロプ君が思索のヒントがあるのでは?と傾聴を心がけるように、読者の私も聞き入ってしまう魅惑的な語り口だ。(だが油断は禁物)今は好感度の高いセテムブリーニさんだが、彼の西欧合理主義の一端を見てガッカリし、またもや読破できず途中下山の恐れも否めないのだから。

IMG_2802
『魔の山 』(上/下) トーマス・マン作
関泰祐・望月市恵訳 岩波文庫

IMG_2803
途中下山の危機が訪れても内容を忘れないように記録することにした。
「ドイツのモラトリアム青年ハンス・カストルプは、結核に侵され将校の夢を中断された従兄弟ヨーアヒムを訪ねて、スイス高地の高級国際サナトリウムへと旅立つ。初めて目にする病人の楽天地に異様な興奮を覚える。40p」「孤児ハンス・カストルプは、幼少期より裕福な親族に養われ品位を重んじているが、性質はニュートラルで単純である。56p」などなど
ショーシャ夫人との関係、ヨーアヒムとセテムブリーニさんの安否、結末がどうしても知りたくて、このように飛ばし読みをしている。(ヨーアヒム君は天に召され、徴兵で下界に降りたハンス・カストルプの運命は、戦場で死神の管轄に落ち安否不明…終。)

最後のイチゴ

先日のパーティはお喋りに徹するあまり(目の前に鯛のお頭付きなど豪勢なご馳走が並んでいるのに) イチゴをたった一粒食べただけでお開きになってしまった。私はショートケーキ天辺の装飾イチゴは最後に食べる派だが、単体一粒では寂しすぎる。しかしまた、至福のときの終わりを知る最後のイチゴにも寂しさがある。
新年最初の荷として届いて以来、本棚に祀られている詩集『尾形亀之助全集』に収められた散文〈庭園設計図案(或る忘備帖)〉はまさに最後のイチゴのような存在だ。

何年間も欲しい欲しいと恋い焦がれつつ、高額書籍購入に二の足を踏んでるうちに更に価格高騰!大人気『尾形亀之助全集』の市場価格は2万円を超えてしまった。(ところが!!) 昨年末ヤフオクに100円スタートで出品されてるのを発見し(なんと!!) 6,546円で落札できた!(やったね!!)。
しかしあまりにも長い間この本に執着しすぎたため、入手したら有難味がありすぎて開くことすらできずにいる。特に全集にしか収録されていない〈庭園設計図案〉を読んだら積年の願望は成就しツマラナイ気持ちになりそう。なので未だ最後のイチゴは食べないままだ。

尾形亀之助全集 (思潮社 1970年 )
IMG_2658
己の感覚のみを尊重した偉大なる役立たず。
画家の才能がありながら役立たずの先鋒=詩人に転向した絶望的天才!

またとなけめ

中学時代にどうして落語カセットを聴いていたのかというと、当時は入院することが多く病室では特にすることがない(今思えば勉強すればよかったが…) ので〈エドガーAポオの怪奇小説を読みながら、ヘッドホンで志ん生の落語を聴く〉という前代未聞の新しい視聴方法を試し、ヒマを潰してたのだ。結果どちらのお話も理解することが出来ず、19世紀末の耽美的気風と江戸っ子の気風は同居できないと結論づけられた。

鴉いらへぬ「またとなけめ」
IMG_2244
難しいポオの詩をさらに難解にした日夏耿之介による翻訳詩集。
有名な大鴉の鳴声「ネバーモア」は「またとなけめ」と聞いたことのない言葉に訳されている。なので心乱れた絶望的な男の問いへの返答はすべて「またとなけめ」だ。(不健康からくる乱心で意味不明な読書方法をすることは「またとなけめ」と願いたい)

レクイエム

黒部川の急流を電気の魔法に変える水力発電所とダムは、下流から上流へ黒一、黒二、黒三、そして黒四と建設されていった。黒部といえば映画『黒部の太陽』の舞台、黒部ダム(黒四)が有名で、大自然の征服と日本の土木技術を世界に誇るこの巨大ダムは、敗戦国日本がプライドを取り戻す戦後復興のシンボルの一つに数えられるだろう。
この黒四の輝かしい栄光の陰に、黒三ダムの暗黒の歴史が隠れていることを知る人は少ない。斯く云う私もこの本『黒部・底方の声 黒三ダムと朝鮮人』と出会うまで全く知らない事実だった。リサーチの一環でたまたま図書館で借りた一冊だったが、ここに記された過酷な労働環境とそこに置かれた朝鮮人労働者のレポートに震撼し、これは重要な書籍だと直感した。富山県在住の三人の女性ジャーナリストによる公正な良心に基づいた緻密な調査と報告は、当事者の朝鮮の方がご存命中に直接会って記録しなければ!という焦燥感がスリリングで、厳しい内容ではあるがぐいぐいと本に引き込まれる。
…時は日中戦争勃発前夜。電力の需要はますます高まり、電源開発は国家を挙げての喫緊の課題となっていた。1936年に着工され三年後の1939年には完成せよと命じられた〈黒部川第三発電所〉の突貫工事は、詳細な地質調査や対策も練られないまま大勢の犠牲者を出した。その多くが朝鮮から来た労働者たちで、彼らは日本人が恐れた最も危険な場所で働かざるを得ない出稼ぎ労働者だったのだ。150℃を超える高熱隧道の岩盤掘削は火傷の危険が伴い、冷水を浴びながらの決死の作業。更に発破のダイナマイトが高熱で自然発火し何人も爆死した。そしてこの地獄の現場を出た地上でも悲劇は繰り返された。山腹に建てられた飯場が巨大なホウ雪崩に見舞われ、宿舎もろとも谷を越え600m先の山に叩きつけられて百人近くの労働者が谷底に散っていった。黒部川の電源開発工事の犠牲は、当時の新聞報道の見出し「発電工事の人柱」の表現そのものの惨状だったという。
…私はこの『黒部・底方の声』をヒントに〈ゲートピアNo.3〉を制作し、黒四完成で幕を閉じる〈クロベゴルト〉の栄光の陰でひっそりと歌われる鎮魂歌として飾ることに決めた。

IMG_2019
『黒部・底方の声 黒三ダムと朝鮮人』
内田すえの・此川純子・堀江節子:共著 1992年/桂書房
(なんと!!!!) 著者の堀江節子さんがコンクリート組曲開幕第一号のお客様としてご来場!嵐の中ものすごいサプライズ!

仕合谷のコピー
ホウ雪崩の発生した志合谷周辺の風景
実際に見てにわかに信じられない険しさ…

IMG_1945
〈ゲートピアNo.3〉ダムに沈む運命を免れたエジプトのアブ・シンベル神殿遺跡がモチーフ(何が描いてあるかな?展示壁面の裏側にも仕掛けがあるよ)

豚耳とマインカンプ

このまえ渋谷に向かう地下鉄車内で、豚耳丸一枚にかぶりつく中年女性の隣にウッカリ座ってしまった。鼻をつく動物っぽい臭気を気にすることなくムシャムシャと完食し、煮汁の残ったジップロップをバッグにしまうと、今度はスマホで女ボディビルダーの写真を見始めた。おそらくこの豚耳携帯食の女性も肉体改造を趣味とする人で、常に高タンパク食品を摂取しなければならないといった強迫観念に駆られているに違いない。とはいえ車内マナーにはもう少し留意していただきたいものだ。と、かく云う私も、実は過去に隣席の乗客を不愉快にさせたことがあるのだが…。

それは3年前のこと、 井の頭線車中でヒ総統の『我が闘争』を読んでいたら隣に座っていた見知らぬ青年が、急に私の前に屹立し「そんな本を読んで面白い?」と義憤に満ちた眼差しで問いかけてきたのであった。そして「ええまあ…」という私の生返事を聞いたか聞かぬか、青年はスっと踵を返し電車を降りていってしまった。
戦犯書物を読む私への苛立ちが抑えられなかったのであろう正義の青年よ(もう二度と会うこともないが) まあ続きを聞き給え。質問への答えは無論「面白い」だ。この本には政治に不可欠な〈数〉の源である大衆をいかに煽動し愚民化させるか、その手引きが記されておりその方法は、単純でわかりやすい〈たった一つの敵〉を大衆に投入してやることだと、憎悪感情を利用した戦術が明記されている。かような悪徳の書にも、昨今の怪しい風潮への警鐘に役立つという利点が少なからずはあるというものだ。
だがしかし、第三者の気分に害を与えるのは本意でないのでヒトラーの本はお家で読もう(ミミガーは沖縄料理屋かご自宅で!)

(大獨逸)
IMG_1759
そういえば7月に取材を受けたドイツ国営放送のオリンピック番組は放送されたのだろうか?私と私の作品映像はドイッチュラントのお茶の間に流れたのか?音沙汰なく詳細不明

擁壁クイズ

Q.『法面に不等沈下が起きたのはなぜ?』

我々は四国の山間部を通る国道を車でゆっくり走行していた。山側の急勾配法面に施工した高さ6mの逆T字形擁壁に異常がないか、目視で点検するのが我々巡視員の本日の任務である。「なあ、擁壁上部が前方に傾いてないか?」「そういえば35cmほど前に傾いて、法面のプレキャストコンクリートブロックがガタガタに乱れているぞ」この法面は2年前に工事したばかりで、いつから変状が始まったかは不明。根入れも十分、設計ミスも無いはずだ。〈擁壁が傾き、法面に不等沈下が起きたのはなぜだろう。〉

A.答えは…
『盛り土の締め固めが不足した』から

(以上、お楽しみ会には不向きなクイズ集「クイズ 土はなぜ崩れるのか」より抜粋)

IMG_1560
専門知識がないと設問すら理解不能のクイズが30問!

IMG_1562
なぜ土は崩れるのか?
(そこには必ず原因がある)

IMG_1561
「魅惑的なコンクリート法面の格子文様はどのように作られるのか?」
皆が知りたいその謎が冒頭カラーページで明らかに!

体錬歩行路図

最近頻出の「体錬歩行」とは私の造語ではなく、昭和17年に発行された『體錬歩行路圖』からの引用です。この〈関東地方 體錬歩行路圖 ~家族向・第一輯・平野篇〉は、東京近郊を中心とした遠足コース地図16枚が小袋に収められた携帯マップ集で、地図の裏面には利用交通機関と予算/行程/所要時間/名所案内が記されていて、これを眺めていると明日にでもお出掛けしたくなるような気分になります。しかしいくら平坦な地形を選んだ〈平野篇〉とは言え、家族連れで推奨コース16キロ(所要時間5時間)を歩くのは困難と思われ、心浮き立つ遠足のはずが魔の行軍と転ずることが危ぶまれます。

(懐かしの武蔵野)
IMG_1190
石神井公園〜善福寺公園〜井の頭公園を巡る〈西郊緑地帯〉は学生時代に馴染んだ土地であるが、この地図上に帝国美術学校(当時)の記載はない。統制地図なので軍事施設は意図的に消されているが、もちろん美術学校は練兵場でも軍需工場でもない。(そして地図のとおり我が学園は消えた!!)

(多種多様なコース)
IMG_1192
〈村山・山口池めぐり〉山口池=狭山湖には小3の時に遠足で行った。地図裏面には「狭山丘陵は先住民族の遺跡もあり」との有力情報が!先住民族とは縄文人のことである。
〈入間川〉行程のメインは霞ヶ関ゴルフ場の横断であるが、会員証を所持しない平民の私たちがこれを決行したなら、たちどころに不審者と見做され通報されること間違いなし!

推薦文(5)絵画者

〜推薦文(5)『絵画者』中村宏〜

絵画の向こうに立つ作者と、こちらで鑑賞する客者。対面する双方が転倒し連動することによって永久運動装置〈タブロー機械〉が稼働するのである。タブロー機械の創造する〈観念リアリズム〉の空間を守備する美しい呪物(物質)、雲・地形・蒸気機関車・セーラー服。地上すれすれを舐め、上空を浮遊するそれらフェティシズムの依代たちは、攻め入る隙のないフォーメーションにて(遠くから近くまで)絶対領域を死守する。
絵画者は不可侵の絶対領域にあって大人物を望まない。絵画[者]だから批評[家]と同じ地平で決闘をしない。たとえ凧のように地上に繋がれようとも、硬質な絵画者の言葉は邪魔な糸をスパっと断ち切ってしまうだろう。口上 .言説 .散文詩…そのすべては、鉱物の劈開に光るエッジのように鋭利である。

(中村先生の呪物とは違う)
IMG_0438
かざまランドの呪物たち (地球儀/砂漠の薔薇/アラゴナイト/fiat2000/ピラミッドサボテン/黒電話)と…
『絵画者』中村宏
美術出版社  2003年発行

(サインをしてもらったのではない)
IMG_0440
あらかじめサインのしてある〈サイン本〉を入手したのだ