カテゴリー別アーカイブ: 古本

擁壁クイズ

Q.『法面に不等沈下が起きたのはなぜ?』

我々は四国の山間部を通る国道を車でゆっくり走行していた。山側の急勾配法面に施工した高さ6mの逆T字形擁壁に異常がないか、目視で点検するのが我々巡視員の本日の任務である。「なあ、擁壁上部が前方に傾いてないか?」「そういえば35cmほど前に傾いて、法面のプレキャストコンクリートブロックがガタガタに乱れているぞ」この法面は2年前に工事したばかりで、いつから変状が始まったかは不明。根入れも十分、設計ミスも無いはずだ。〈擁壁が傾き、法面に不等沈下が起きたのはなぜだろう。〉

A.答えは…
『盛り土の締め固めが不足した』から

(以上、お楽しみ会には不向きなクイズ集「クイズ 土はなぜ崩れるのか」より抜粋)

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専門知識がないと設問すら理解不能のクイズが30問!

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なぜ土は崩れるのか?
(そこには必ず原因がある)

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「魅惑的なコンクリート法面の格子文様はどのように作られるのか?」
皆が知りたいその謎が冒頭カラーページで明らかに!

体錬歩行路図

最近頻出の「体錬歩行」とは私の造語ではなく、昭和17年に発行された『體錬歩行路圖』からの引用です。この〈関東地方 體錬歩行路圖 ~家族向・第一輯・平野篇〉は、東京近郊を中心とした遠足コース地図16枚が小袋に収められた携帯マップ集で、地図の裏面には利用交通機関と予算/行程/所要時間/名所案内が記されていて、これを眺めていると明日にでもお出掛けしたくなるような気分になります。しかしいくら平坦な地形を選んだ〈平野篇〉とは言え、家族連れで推奨コース16キロ(所要時間5時間)を歩くのは困難と思われ、心浮き立つ遠足のはずが魔の行軍と転ずることが危ぶまれます。

(懐かしの武蔵野)
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石神井公園〜善福寺公園〜井の頭公園を巡る〈西郊緑地帯〉は学生時代に馴染んだ土地であるが、この地図上に帝国美術学校(当時)の記載はない。統制地図なので軍事施設は意図的に消されているが、もちろん美術学校は練兵場でも軍需工場でもない。(そして地図のとおり我が学園は消えた!!)

(多種多様なコース)
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〈村山・山口池めぐり〉山口池=狭山湖には小3の時に遠足で行った。地図裏面には「狭山丘陵は先住民族の遺跡もあり」との有力情報が!先住民族とは縄文人のことである。
〈入間川〉行程のメインは霞ヶ関ゴルフ場の横断であるが、会員証を所持しない平民の私たちがこれを決行したなら、たちどころに不審者と見做され通報されること間違いなし!

推薦文(5)絵画者

〜推薦文(5)『絵画者』中村宏〜

絵画の向こうに立つ作者と、こちらで鑑賞する客者。対面する双方が転倒し連動することによって永久運動装置〈タブロー機械〉が稼働するのである。タブロー機械の創造する〈観念リアリズム〉の空間を守備する美しい呪物(物質)、雲・地形・蒸気機関車・セーラー服。地上すれすれを舐め、上空を浮遊するそれらフェティシズムの依代たちは、攻め入る隙のないフォーメーションにて(遠くから近くまで)絶対領域を死守する。
絵画者は不可侵の絶対領域にあって大人物を望まない。絵画[者]だから批評[家]と同じ地平で決闘をしない。たとえ凧のように地上に繋がれようとも、硬質な絵画者の言葉は邪魔な糸をスパっと断ち切ってしまうだろう。口上 .言説 .散文詩…そのすべては、鉱物の劈開に光るエッジのように鋭利である。

(中村先生の呪物とは違う)
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かざまランドの呪物たち (地球儀/砂漠の薔薇/アラゴナイト/fiat2000/ピラミッドサボテン/黒電話)と…
『絵画者』中村宏
美術出版社  2003年発行

(サインをしてもらったのではない)
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あらかじめサインのしてある〈サイン本〉を入手したのだ

推薦文(4)赤色エレジー

〜推薦文(4)『赤色エレジー』〜

親がつけてくれた「幸子」という昭和っぽい名前は、ハタチの頃に、呪術的な由来のある古代言語「サ・チ」の方がカッコいいと思って、漢字幸子を捨てて片仮名サチコにしました。まだ私が幸子だった子供時代に、あがた森魚の『赤色エレジー』を父親の調子っ外れな歌声で聞かされて「幸子の幸は何処にある…」の切ない歌詞から、名前とは裏腹に幸薄い幸子の運命をさとり、まだ世間を知らない幼心にも暗~いワルツの調べが重たかったです。…………
その後、だいぶ大きくなってから原作の漫画『赤色エレジー』を読み、「小梅ちゃん」の林静一が芸術漫画家だと初めて知りました。ヌーベルヴァーグのようなコマ割、詩のような言葉。そして陰影を強調し「描かずとも存在を感じさせる」あの表現!白と黒のコントラストの目映さは、白黒世界の素晴らしいお手本です。

〈現代詩手帖と赤色エレジー〉
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裸電灯 舞踏会 踊りし日々は走馬灯….この美しく儚い歌詞の作者・あがた森魚は現代詩人として高く評価されるべきだと思う。

(本当は)
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当初推薦した漫画本は、杉浦茂シュールへんてこりん傑作集『イエローマン』だったが、絶版で仕入不可能とのことで断念…。永遠に敬畏され続ける杉浦茂先生。その超現実的ナンセンス作品群の粋を集めた良書『イエローマン』をぜひ皆様に読んで頂きたかった!

〈唯一者の漫画!!!〉
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これぞ創造的虚無!概念を破壊する天才よ!
変な顔をした不明の存在が次々登場し、異次元空間に突如放り出されたりするが、変な奴も異空間もお話とは特段関係無く、というより最初からお話は重要ではない。

推薦文(3)唯一者とその所有

〜推薦文(3)『 唯一者とその所有』〜

「僕たちは生まれながらの死産児だ!」この世に生を受け人間社会に放たれたその瞬間から、既成概念という死者に囲まれた日常が始まる…ドストエフスキー著『地下室の手記』の主人公は、長い引きこもり生活のすえに、このセリフを吐き悲嘆したのであった。
自動的に敬わなければならない、国家/宗教/経済/道徳/思想などの概念は、社会生活の便宜上、人間が捏造した存在で、霧に投影されたブロッケンのようなものだ。と、この『唯一者とその所有』には書いてある。「アートは社会のブロッケンに過ぎないのではないか?」という私共の疑問と不満を解消する糸口は、〈俺以外は全て無である〉とアッサリ決め込んだ冒頭の一文と、その俺〈唯一者〉が創造の核であると述べた《創造的虚無》に見出せそうである。

〈楽天的唯物論を超克するエゴイズム!
…….支配の論理に対峙するニヒリズム!〉
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『唯一者とその所有 上/下』
マックス・シュティルナー
片岡啓治: 訳  (現代思潮社  1970年発行)

*銀座蔦屋書店に於ける〈予感の帝国フェア〉は昨日2/28をもって終了しました。わざわざ見にいらしてくださった方々、たまたま目にしたという皆様有難うございました。

推薦文(2) 慈善週間

〜推薦文(2)『慈善週間または七大元素』〜

極めて謎めいたタイトル『慈善週間または七大元素 (小説)』に魅かれて手に入れた古書は、文章を読む小説ではなく、コラージュ作品に編まれた物語を読む作品で、マックス・エルンスト《コラージュ・ロマン》シリーズの三作目でした。巧みに切り貼られた銅版画の陰影と、そこに生じる不気味なぎこちなさは、睡眠時に見る整合性に欠いた映像を想起させ、ページを繰るたびにそれは甦る。……..
七大元素〈泥・水・火・血・黒・視覚・未知〉によって構成された一週間『慈善週間』とは何だろう?理性の昼から解放された不条理の闇。ブルジョア婦人の降霊術。変な夢を見た後ろめたさ…。古雑誌と七大元素の魔術的合成は、慈善家のようなお節介さで無意識を暴露する。〈見える詩〉の断片を繋いだコラージュは、滑稽でおそろしい夢の尻尾をとらえた物語(ロマン)なのです。

『慈善週間または七大元素(小説)』
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マックス・エルンスト
巖谷國士:訳  野中ユリ:装丁
河出書房新社 (1977年発行)

火曜日 元素—火 例—竜の宮廷
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入りたまえと彼は言ったが明かりがつくと誰もノックなどしてはいなかった.
(トリスタン・ツァラ『狼が水を飲むところ』)

推薦文(1)未來のイヴ

今年は閏年でないので2月は28日が最終日。そしてこの日をもって銀座蔦屋書店で展開していた〈予感の帝国:かざまランドフェア〉も終了します。特設コーナーでは作品集『予感の帝国』をはじめ、缶バッヂ/階級ハンコ文字の布袋/サバイバルこけし等が展示販売され、私の推薦図書5種も書下ろし推薦文とともにディスプレイされてました。これらはあと2日後には書架から姿を消すと思われますが「陳列に気がつかなかった」或いは「読むのが億劫」などの理由で未読の諸氏の為に、改めてここに(無理やり読ませる魂胆で) 文章を掲載しま〜す。

〜推薦文(1)『未來のイヴ』〜
人命よりも発明を優先する冷酷な科学者エディソン博士は、唯一恩人と敬う青年貴族エワルド卿の〈恋人が絶世の美女なのに頭が空っぽ〉という深刻な悩みを解決すべく、完全無欠の人造人間「ハダリー」に、恋人の外見をそっくりそのまま複写する計画を実行に移すが…(さて如何に?)。
….究極の知性を持つ高貴な霊体・ソワナを甲冑に宿した機械の貴婦人ハダリーは、目には見えない「無限世界」を雄弁に語り、現世的な「理性」と「常識」を罵倒する。彼女にとって俗世に生きる者、生みの親である博士も(愛するエワルド様ですら!)軽蔑の対象である。元恋人の美貌を完コピしたハダリーが、人間エワルド様のプライドを傷つけて逆上させる場面は最高です!優美な文章に織り込まれた、合理主義に対する痛烈な皮肉と笑い。その先見性は、SF小説の先駆け以上の価値があります。

《 無常ヲ觀ジテ以ッテ永遠ヲ探求セヨ 》
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電氣學者の手は何物かの上に壓しあてられたが、エワルド卿にはそれが何であるか、しかとは見分けがつかなかつた。……..
——ハダリー!(と遂に彼は大聲で叫んだ。)

『未來のイヴ』
ヴィリエ・ド・リラダン
齋藤磯雄 :訳(創元ライブラリ)

ポーランド予習

遠い遠い見知らぬ土地、ワルシャワに渡航するにあたり、私はパスポート更新を済ませ、そしてポーランドの歴史と文化を予習するためにポーランド装甲車図鑑を入手しました。
1930年代、ソ連の次に装甲列車を所有していたポーランド共和国は、自動車を武装改造した装甲車も豊富!この本では第二共和国時代 (1918〜1939年)の素敵な装甲車の数々が、ひどく不鮮明な写真で紹介され、私には読むことのできないポーランド語で解説が書かれています。(暗い写真を見よう)

(最近ヤフオク戦利品)
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装甲車図鑑と恐竜図鑑キーホルダーとポーランド装甲列車ハガキ
鉄板と砲塔で武装した装甲列車は、兵士/兵器/物資などの輸送で活躍したが、軌道上しか移動できないのでレールを破壊されただけで走行不能になり、また恰好の爆撃対象になる長い巨体がたたり(恐竜のように)絶滅。灰色の装甲列車車両が、不気味な流線型列車とともワルシャワ鉄道博物館で屋外展示されているという(が、たぶん見にいく時間がない)。

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魅惑のポンコツ感

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不安感を誘う造形

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伝書鳩を収容する車ではない、側面の方眼は何か?

新年あけましておめでとう。

皆様あけましておめでとうございます!旧年中はひとかたならぬご厚情ご支援を賜り誠にありがとうございました。本年も妄言御免の『窓外の黒化粧』ご愛読のほど何卒よろしくお願い致します。
…大晦日は紅白歌合戦を見ないで〈年忘れにっぽんの歌〉で宮路オサムの健在ぶりを確認したのち、「今年は最高速」と評判のN響第9を鑑賞。そして2019年はマイスタージンガー(抜粋)で幕を開ける。ニュルンベルク歌合戦、歌う親方の「迷妄を利用して高次元の仕事を成し遂げよう」という決意表明は芸術を生業とする我々が肝に命じるべき金言といえましょう。

さて今年の《新春お楽しみ古本コーナー》は…

かざまランドで注目度No.1『やくざの生活』をご紹介!お正月に相応しくないアンタッチャブルな題名ですが、これはコンビニで売ってる『実録!!!〇〇組』のような下世話な本ではなく、明治以前の任侠社会を研究した学術書です。賽博奕(丁半)、親分子分の盃、旅人/的屋、隠語辞典、やくざ列伝など(知っても得しない)専門知識満載の一冊に記された、難解な博奕のルール、仁義という名の掟に付随するミステリアスな儀式は、古代の神事に近いものを感じます。
関の弥太っぺ、番場の忠太郎のように生き別れた親兄弟を求めながら旅をする人情話や、三味線弾きや横綱になる夢を喧嘩をきっかけに失い、やくざ稼業に身をやつす「流転」「一本刀土俵入り」の物語は(すべて架空で)、小説、お芝居、浪曲、演歌などで広く親しまれおり、私もよく聴いています。しかしこの『やくざの生活』を覗いてみると〈情に厚い自由気ままな旅鴉〉という印象はガラリと変わるはず。厳格な仁義、土着的なタブーと迷信などに支配され、時には非情な喧嘩や制裁で命を落とすことも…。大喧嘩を前に女房と離縁した美談を歌われている実在の侠客・吉良の仁吉ですが、本当は独身者で〈恩人のシマを荒らされた報復に加勢して斬られて死んだ〉との実話だけではあまりにも殺伐としてるので男気エピソードで脚色したようです。強固なシガラミは怖いネ!私は今年も親分子分の存在しないエゴイスト迷妄王国(かざまランド)にて美術道を邁進する所存です。(どちらさんもよろしゅうたのんます)


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『やくざの生活』田村栄太郎著
昭和44年 雄山閣出版

(呪術的な盃配置図)
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「喧嘩仲直りの盃」という謎めいた儀式もある

(♀ 東京に逃げた)
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泥棒が信仰する阿太の神の名は、アッシリアで雷光を意味する「アダ」を語源とし、これらの暗号はアッシリアならびにユダヤの古代文字に由来する(というのは本当か?!)

地球の音

(いま何処を飛んでいるのか私は知らない。)41年前に太陽系外を探査するために飛ばされた無人惑星探査機ボイジャーには、地球と地球人の存在を知らせるためのレコードが搭載されているとの報告も、この『UFO異星人大百科』に書かれている。この記述によると、アルミ製ジャケットに納められた銅製レコードには、地球の環境と文明をつたえるメッセージとして多様な音声が収録されており、60カ国語での挨拶から始まり、これが終わると〈人の足音・笑い声・動物の叫び声・雨音・波音・火山の爆発音・雪崩の音〉が流れ、続いては各国の音楽…クラシックからジャズ、そして日本の尺八楽曲などが90分も録音されているのだという。
もし仮に、異星人がレコードを発見し再生できたとしよう。おそらく彼等はこの支離滅裂な音源を聴いて危険と恐怖を感じるに違いない、そしてこう感想を述べるであろう「狂っている!」と…。左様、過日終了した『予感の帝国展』特設会場にて流された私選曲CDと同様にである。


「応答せよ!」と呼び掛ける狂気のレコード
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レコードには115枚の写真や図も添えられたという。森/砂漠/高層ビル/乗り物/バリ島の踊子/太陽系の図/原子記号/人体の解剖図など、
異星人に好印象を与えるか甚だ疑問だ。

(4枚のみ)
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ナディッフ貸出CD12枚のうちクラシック音楽のみ [カザマ] シールが貼られていた。推測するに、おそらく店内に類似するCDが存在し、混同防止のため店員さんが貼ってくれたのだろう。(その他へんなアメリカ音楽とヤサグレ演歌は心配ご
無用)