カテゴリー別アーカイブ: 古本

どこへ?

暑いので扇風機を回していたら、本棚の雑誌がパラパラと風に煽られてハガキ大の紙片が一枚、畳の上にペロンと落ちた。
拾い上げてみるとそこには「お詫びとお願い 製本上の手違いから目次のあいだに広告4頁がはいってしまいましたが、この広告4頁を切り取って目次をご覧ください。読者のみなさまにはたいへんご迷惑をおかけいたしますことをお詫びいたします。思潮社・現代詩手帖編集部」とお詫びが印刷してある。そして裏面にはこの紙をメモがわりにした読者による「この気違いじみたすばらしい世界の、この気違いじみたすばらしい子供たち、哀れな燃えるみなしごよ ー我が名はアラムー」との走り書きがあった。
裏と表どちらが詩的かというと、走り書きは通俗的で好ましくない。むしろ編集氏からの「お詫びとお願い」に詩的レトリックを感じる、なぜなら(この詫び状には罠があり)指示どおり広告4頁を切り取ったところで…消滅した目次は戻って来ないのだ!「失われた誌面を想像してください」という真の指示に従い、消えた広告内容と尻切れトンボの目次の行方を四次元に探すことは、文章を詩的に作ること同様に難しい。(わたしにはそれができない)

〈現代詩手帖は風に煽られ〉
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中村宏先生の土星は揺れる

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「お詫びとお願い」

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どこへ?天沢退二郎…………..と辿っていくと
右ページには頁を示す数字ではなく、ミショー詩集の広告文がある。在るべき対のページを探してもこの本の中には存在しない。目次はどこへ?

詩人の死

昨日6月27日は詩人の石川善助の命日で、正確にいうと行方不明になった日である。1932年のこの夜、石川善助は酒亭・白蛾にて知人と飲み会をしたあと、一人で帰宅途中に雨で増水した側溝に転落。もともと足が不自由なところにお酒が回り、自力で這い上がることができなかったのであろう、と言われている。行方が分からなくなってから七日後、下水道で水死体が発見され詩人仲間に衝撃を与えた。享年32歳の若さだった。
石川善助の書いた北海の漁場風景を硬質な言葉で綴った詩には、鉱物や化学物質の名詞が多く登場する。でもなんだかそれが、ちょっと背伸びをして頑張ってるように見えて私はあまり好きではない。それよりも詩人仲間の尾形亀之助が書いた追悼文『石川善助に』が好きで、これは普段の善助の姿をスケッチしただけの淡々とした文章なのだが、その観察眼が友人に対する愛着を浮き彫りにし、泣けてくる。(生前に一冊の詩集も出せなかった一人の詩人の後姿を思い出す、梅雨らしくない風が強くて暑い夜です)

〈詩集・亜寒帯〉
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没後5年に逸見猶吉、草野心平、宍戸儀一らの有志によって刊行された。

(最後の詩に)
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子供、おまえのいであはいつも壊され、
にがい退屈のなかに坐って、一日悲しく泣くであろう…
(何物も生ずることも滅することも無いのだ。無生とは何ぞ?)

わたしは真悟

中学生の時、三軒茶屋アムスで楳図かずおトークショーが催され、私は恐怖漫画を貸借りする親友と連れ立って憧れの先生を観に行きました。そして質問コーナーでは勇気を出して挙手し「漫画において今後も奇形の表現は可能でしょうか?」という全く面白くない質問をしてしまい、今もそのことを悔やんでいます。(もっと14歳らしい可愛い質問をすればよかった!)

その楳図先生の作品『わたしは真悟』が、今年フランスの漫画賞を受賞されたという朗報を知り、文庫版全7巻をディスリンピック製作中にヤフオクで購入。しかし通読する時間が無いので「完成したら直ぐ読もう!」と楽しみにとっておいたのです。…そして晴れてディス体育大会から解放されて埼玉より帰京。家に戻り真っ先に読み耽りました。が、疲労困憊した精神には、殺人描写や天才的な電脳シーンが鮮やかすぎた!まるで悪夢のよう…。「エコエコアザラク」もそうだけど、元気な時に読むのをお勧めします。

『わたしは真悟』第1巻
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楳図先生のイメージする電脳世界…凄すぎる!
小学6年生の真凛と悟の汚れなき恋から「自我」の芽生えた赤ちゃんコンピューターの「真悟」
概念を学習してない赤ちゃんゆえの無垢さから暴走し犠牲者続出!コンピューターの知能向上、外部との接続(扉が開いてゆく感覚)を悟りになぞらえた傑作。

エコエコアザラク

先程ニュースで、恐怖漫画の第一人者である古賀新一先生がお亡くなりになったとの訃報を知る。享年81歳。先生の代表作『エコエコアザラク』は、むかしゴミ集積所で12冊拾って、20数年たった今も漫画用書棚に並んでいる。しかし、拾った当初から「なんで捨てたんだろう?」という薄気味悪さから、読むと呪われるような気がして、これらをちゃんと通読した記憶はない。先生の訃報をきっかけに、さっき試しに一巻だけ目を通して見たがすっごく怖くて残酷なので、こういう漫画は気持ちと時間にゆとりがある時に読むべきだと断念した。

(第1巻より)
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古代エジプトの黒魔術を用いて、
クラスメイト達に嫌がらせを仕掛けたこの学生(茨木くん)は、強力な呪力のはね返りを受けて、このような姿勢で何時間も鉄棒にぶら下がっているという。コワい!

朝用・昼用・夜用

かなり昔から化粧クリームに朝用・昼用・夜用が存在していたことを、昭和十五年刊行『學べ!独逸國民生活』本文の記述で確認された。これによると…ドイツ女性は美人ではないが、化粧を施さなくとも素晴らしい健康美を誇っている。それにひきかえ「白粉のない顔を見るのに苦しまなければならない日本では、朝のクリーム、昼のクリーム、夜のクリーム、練白粉、粉末、粉末も一色ではいけないとあって、白と黄、赤いのに茶褐、それに香水、香油、ポマード等が鏡台にヅラリと陳列されている。」とある。日本人が贅沢すぎることを批判するために、著者の思いつくまま化粧品を文章上にヅラリと並べてみたようだ。
いかにドイツ国民が質素倹約に努め(ケチくさく)堅実かを、まさか!?と思うほど誇張し賞賛しまくるこの爆笑古書には紹介したいエピソード満載!でも今日は割愛!「贅沢は国を亡す」と日本国民に警鐘を鳴らしクリームを全否定した著者だが、従姉妹がくれた夜用クリームを朝昼夜使いまわしている件ぐらいは見逃してくれるハズだ。

【キミから学ぶことはない】
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半ズボンで元気いっぱい!健康の秘訣はやっぱり菜食主義?(平和の王国かざまランドに肉食文化は無い!)

詩人とステマ

1938年、ヒトラーユーゲント訪日を祝して『萬歳 ヒットラー・ユウゲント/ 獨逸青少年團歓迎の歌』を作詞された北原白秋先生。その揚々たるレコード発売と時同じくして、まさかこのような闘病生活を送っていたとは知らなんだ。
この『絶対健康』という新聞には、国民詩人として国威発揚その意気軒昂やよし!と益々盛んと思われてた先生自ら、当時の病状を記した文章が掲載されている。そこには視力が著しく低下し、最早わずかな光と物象しか視えない近況と、その絶望を吹っ飛ばす救世主「ネオス」の存在が力強く報告されている。
…はて?
記事中に突如登場したこの「ネオス」とは一体何者か?もしかして眼の守護神か何か、そんな信仰の対象かな?と想像してたら、なんと!本から薬まで手広く商売する実弟・北原鐵雄の会社「アルス」の主力商品の名前ではないか!(この新聞の正体はアルス社のステルス広告だった)

大詩人の窮境にウッカリ憐憫の情を寄せてしまったら、何でも効く怪しい万能薬を買わされちゃうから気をつけて!

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半ば強迫的な『絶対健康』その下には国家の命題「體位向上」の文言も
昭和13年10月1日付 発行所:健康新聞社

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『視力を失ひて』おいたわしや白秋先生!
糖尿病から腎疾患を併発。それが原因で眼底出血し、両眼視力の回復の見込み無しと医者にサジを投げられたが「ネオス」服用で回復の兆しが…「奇跡的に糖も蛋白も出なくなったよ。此の分なら眼の方もいつか正しく光明を受け入れるものと信じてゐる。有難う。兄の弟に對する感謝は、ネオス・ネオスの百萬遍だ。有難う。」…この四年後にあえなく逝去。

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新強壮精力剤「ネオスェ-」の十大作用
結核菌を殺す/悪血を浄化/遺伝病毒を排除/発育促進などなどスゴい効能が…。

昆布の1500倍のヨード!?過剰摂取が病気の原因になるって当時は知られてなかったのかな?

ディスリン資料

構想約4年。ディスリンピック資料も4年間でこんなに増えました〜(写真参照)目を疑うような地獄郷!リアルディストピアの存在を証言するかのような書物に魅せられて、資料を口実に集めてしまった。読書が苦手なのでペラペラ見るだけという勿体ない蔵書の数々ですが、読み込まなくても酷い内容が伝わってきます。民族の花園は危険な香り!

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優生学のほかに、ナチス体育教本やらベルリンオリンピック写真集、エログロまがいの医学誌など盛りだくさん!

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「1940年制定の国民優生法はナチスの影響」だけではない。日本における優生思想の啓蒙活動は大正時代から始まり、マルサスの人口論/社会ダーウィニズム/サンガーの産児制限など、人為的淘汰の必要性が広く流布されていたことがこのような書物に見て取れる。昭和8年発行『プロレタリア産児制限法』が生々しい!

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「文化生活普及会」の機関紙『文化生活』創刊号(大正10年)の表紙には、中心人物の森本厚吉、有島武郎、吉野作造と並んで、優生学の権威 永井潜の名前が見える。意外なように思えますが、彼らの人道的啓蒙や真善美の理想と、優秀な遺伝子をもつ民族だけで構成するユートピア像は、不幸な貧困層を撲滅するという目的で合致していたようです。

南部へ!

3ヶ月半余りの地獄の季節(ヨコトリ制作期間)を経て、我が心の天国「南部古書会館」に出向く余裕がやっとやっとできた!今週末22か23日は久しぶりの遊古会へ…
ヨコトリ事務局からの新作要望を二つ返事で快諾したものの、己に課した成功への期待、それを待ってはくれぬ時間の制約が…。焦燥感は非情な泥濘のごとく足元を掬い、すっ転ぶ私をせせら笑うように時間は通り過ぎてゆくではないか!なるほど、作品の制作はヨコトリに限らず毎度似たり寄ったりの地獄の連続ではあるが、舞台が大きいほどその重圧は比例して大きい。…おお、しかし結果はともあれ烈火の季節は終わり(十円ハゲにも産毛が生え)心優しい自然の摂理において秋は訪れた!そして私は南へ向かうのだ。

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以前に南部古書会館で購入した「ホン」の一部です
やくざの生活/家畜人ヤプー/アナキズム藝術論/辻潤/魚の超能力/神曲物語/ゲーリング傳…などの多様な(支離滅裂な)本が格安で購入できる!

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「奇本・珍本・良書で人気 !! 」なので早い者勝ち!変な本を沢山買いたい人は五反田遊古会へ急げ!

陸自だより

前回のブロッコリ—精霊写真のように、人智の及ばない未知のエネルギ—体が、私達に親しみのある形を借りて突如あらわれることは珍しくない。本日ご紹介する写真もその良い一例であろう。
写真誌「ARMY」は隊員とその家族に向けた陸自の刊行物で、各方面隊の活動を写真でわかりやすく紹介している。私のような部外者でも駐屯地などに遊びに行けばタダでもらえる。
くだんの不思議写真は、ARMY2012年春号の特集記事「写真コンク—ル」授賞作品の中の一枚。74式戦車から勢いよく発射された砲火に、積極的平和の不死鳥が宿ったその瞬間を2等陸曹は激写した!

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「火の鳥 出現!」
王城寺原演習場での奇跡の一枚
選者評では「タイトルがださい」とあり、総評でも隊員全般の文学的教養の不足を指摘しているが、この不肖なにがし氏の批評のとおり陸自隊員は教養が無くダサいのか?

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これは隊員OB用の新聞「隊友」紙面、短歌/俳句/川柳コ—ナ—。どれも老年の味のある作品だが特に右端の歌が印象的
「萎ゆる気力鼓舞せんと詠む戦車にて荒野疾駆せし若き日の歌」
萎えた今を詠んだのか?戦車に乗ってた当時に詠んだのか?熟語の力強さが不安定な時間軸を揺さぶる!(教養と技巧ばかりが文学ではない)

ナハ°—ム弾ラビットと私

脅迫ホ°エムで云うところの「唯の火事」とはどのようなものか?その正体を知るために行われた実験は「写真週報/昭和16年3月3日号(防空服の婦人が表紙)」に報道されている。われらの水と砂と筵と闘魂で一泡ふかしてやらう!と鼻息荒く焼夷弾の猛火に挑んだその結果は?…被害の過小評価と黒焦げの惨状写真のギャッフ°がスゴい(酷い)爆弾が炸裂し理不尽さも炸裂!

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「大型焼夷弾はどうして消すか」
昭和18年2月14日 大阪府新淀川の河川敷にて爆弾投下実験を開催(観衆30万人!ほんとうかな?)

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黄燐20/50キロ弾、大型油脂20/50キロ弾(米軍のホンモノ)を使用。着弾点から5km/10km/20kmの地点に木造家屋、ウサギ等の「供試物料」を設置し爆風と燃焼被害と鎮火活動を検証。

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水と筵と砂を使って油脂50キロ弾を3分35秒で見事鎮火(たった3分で全焼したともいえる)防毒面を付ける間を惜しんで即時に消火活動せよ!ということで、今までしつこく押売してきた防毒面は登場しない。煙には害が無いと書いてあるが、ナハ°—ム弾の材料はベンゼンなどの有害物質でもちろん煙も有毒(もちろん唯の火事ではない)

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各地点のウサギを「一部火傷/半身火傷」と生存の確認をする。しかし写真のウサギは瀕死もしくは死亡してるように見える。
もしこのような実験がおこなわれたら。私は直ちにふるえるウサギ達を解放し、彼等とともに河原を走り、脱兎のように私も逃亡しよう(君も一緒に逃げよう)