カテゴリー別アーカイブ: 六本木クロッシング2013

六本木クロッシング(小品)

先日、大型作品の説明をいたしましたが、最後に小品6点をザックリ簡単に説明します!

『無防備要塞』
対岸の火事「原発事故」に対し、安全な場所からモバイルで「実況」を探る人たち。
『スピーディ:スローリー』
「SPEEDI」(予測情報緊急時迅速放射能影響予測システム)の情報を発表したのは事故後12日   後!情報操作を疑わせ、ちっともスピーディーではなかった。牛の眼孔が福島第一原発の場所を
ウジと黒いブチが「SPEEDI」の発表した汚染予測地図。
『幽体離脱』
ストリートヴューで5年間も見知らぬ視線にさらされてる我が家とボロ布団。
『ウォーター?』
震災後、飲み水の放射能汚染による安全が心配されたが、不安を抱きつつも目をつぶって生活せ   ざるおえない状況を表現した。(現在の汚染水だだ漏れも連想できます)
『移行係数』
野菜にセシウムが吸収される事実をはじめって知ったが、数字だけ提示されても、基準値以下と いう言葉を信用するしかない。
『捕食者』
米軍の無人偵察爆撃機MQ-1「プレデター(捕食者)」疑わしきは殺すという米軍の雑な指令と ゲーム感覚の「戦闘」でプレデターの餌食(誤爆による犠牲者)は増えてゆく…。

以上です。参考にしてください。…六本木クロッシングの会期も残り一月余りとなりました!
まだご覧になっていない方は是非是非ご高覧下さいませ!!

連作
上段 無防備要塞、スピーディ:スローリー、幽体離脱
下段 ウォーター?、移行係数、捕食者
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 Nonhuman  Crossing!六本木クロッシングよろしく〜!
六本木クロッシング2013

 

「獄門核分裂235」について

 

この作品もネタを寄せ集めたモンタージュ作品なので、ちょっと解説します。
まず中央の建物は霞ヶ関の経済産業省のビルで、その土台になっているのは戦前、戦中まで国民の統制を担って来た内務省(悪の枢軸!)の建物です。その左に国会議事堂、右に警視庁となってます。ちなみに経産省のビルの胸にあるのは「大政翼賛会」のマークです。
獄門化した経産省の背後にはアメリカがビキニ環礁で行った核実験で炸裂した「ブラボー」のキノコ雲。1954年3月1日に実験は行われ、ご存知のとおり第五福竜丸が被爆したわけですが、なんとその次の日に日本初の「原子力開発研究予備費」という予算が上程されたのです。しかも2億3千5百万、ウラン235に因んだゴロ合わせ!この感覚信じられません。世論が反核に向かう前に急いで成立させたのかもしれませんね….。
この予算を岸内閣で成立に尽力したのが中曽根康弘で、戦後すぐに原子力導入の道筋を作って来たのが正力松太郎と後藤文夫です。岸を含め4人は戦中は内務省の官僚で、正力、後藤は大政翼賛会の中心人物で後藤は内務省大臣でした。戦後、A級戦犯として巣鴨に拘置され、釈放後すぐに原子力導入に着手。結局の所は「原子力の平和利用」という建前のうしろにはアメリカとの取引があり、「国民は統制すべきもの」という変わらぬ理念があって今にいたるという事です。…..そんな背景を一つの作品にしてみました。

gokumon
中央にアイゼンハワー、左から時計回りに後藤文夫、小阪順造、中曽根康弘、岸信介、橋本清之助
正力松太郎。ドラゴンボールのような里見八犬伝のような…..。原子核と電子な仲間たち!

「人外交差点」について(4)

(その他のネタ)
説明が必要そうなものを紹介してきましたが、あとは簡単に列挙いたします。

「ブラックバード=SR-71/米軍の戦略偵察機」上空に飛んでる飛行機。
「防諜標語」戦時中に実際使用されてたポスターに伏せ字をしました。
「除染部隊」炎上、汚染したツイッター鳥を清掃中。
「魔法陣」フェイスブック、2ch、ツイッターのアドレスが呪文。
「マイナンバー人間」背番号がゴロ合わせ。意味はツマラナイので割愛!
「ルーズソックス」一昔前の渋谷の象徴。
「簀巻き幽霊」甘粕事件で殺害された大杉夫妻と甥の宗一君。
……などです。あとはヒカリエのビルがレーダー基地になってたり小細工がしてあります。
TOKKOU
TOKKOUは「特攻」ではなく「特高」です!

 

「人外交差点」について(3)

(ネタ:その2)
画面むかって左側の109メンズ館の街頭ビジョンには、望月桂の「遠眼鏡」という大正天皇のいわゆる「遠眼鏡事件」を未来派(ジャコモ・バッラ風?)の手法で描いた作品をはめこみました。
望月桂は大正時代に「平民美術協会」「黒耀会」を主催し、アンデパンダン展の先駆け的な展覧会を開催した画家です。この「遠眼鏡」も第二回黒耀会展に出品され、そして警察に撤回を命じられた作品だそうです。第二回黒耀会展の展示の参加者というのが、堺利彦、大杉栄、荒畑寒村、尾崎士郎、生田春月、辻潤、添田唖蝉坊 etc……とそうそうたるメンツ!しかもアナ系ボル系ごっちゃで美術家というよりか思想家が目立ちます。しかも誰でも参加OK。計140点の作品が展示され、その内の28点が撤回命令!警察の指導を無視しして展示してたら6点が押収されたということです。しかも押収された作品の「盗難届」を押収した警察に提出!ナイス・アイディア!
……そんな気骨あふれるアナキスト望月桂に敬意を表して作品に投入しました。遠眼鏡の絵柄もバッチリです。(戦中、翼賛に賛同した氏の変節には大ショック….。また後に触れようと思います。)
109
小さくて分かりづらいですが….。右上に「遠眼鏡」、チョットマテ標語のオバケは小早川秋声の
「国之楯」をイメージしてます。ヘイトスピーチの連中、八咫烏サポーター(足三本)隣組、憲兵
歩きスマホで合体!などなどです。

「人外交差点」について(2)

今年も残すところ一月余りとなりました。2013年がどのような年だったかというと、関東大震災から90年、その後の動乱に乗じた甘粕事件から90年、小林多喜二が拷問死してから80年….という節目の年(ホワイトテロル怨年!)でした。
大正12年、関東大震災の直後「治安維持ノ為ニスル罰則ニ関スル件」の緊急勅令がくだされ、その二年後の大正14年に治安維持法が制定されました。….奇しくも東日本大震災から二年後の今、「特定秘密保護法」が成立しようとしています。
この「人外交差点」を製作中はネット渦の問題、排外主義、スノーデン氏の暴露事件などの話題に注目してて、「秘密保護法」というような悪法が虎視眈々と準備されているとは知りませんでしたが、このタイミングで戦前、戦中の言論、思想弾圧をモチーフに組み込んだ作品を展示できたのは我ながら良かったな〜と思います。…..歴史は繰り返す。そんな言葉がよぎりますが、分かっていながら止められないのは何故か?治安維持法制定後の歴史をかえりみるとゾッとします。

(ネタ:その1)
画面むかって右側。東急の駅ビル壁面の「××××」のデザインを利用して発禁本の伏せ字大量のページを飾りました。このページの出典は昭和5年に発行禁止処分が下った(処分の21日後に改訂版を刊行!たくましい!)貴司山治著「ゴー・ストップ」というプロレタリア大衆小説です。
伏せ字の最も多いページ(工場労働者が警察に拷問される場面)を選んだのですが、これは発禁になったから×××になった訳ではなく、処分を予防する為にあらかじめ伏せ字が施してあるのです。
このように判読不可能なほど大量な伏せ字で文章を潰しても「発禁」になります。当時は「革命」「共産」「社会主義」などという『悪思想』を連想させる言葉はすべてNGです。
言論統制の厳しさが視覚的にわかるモノとして使ってみました。
発禁本
「殺せツ!ブルジヨア×××!」×××で伏せてるのは「犬畜生」か「豚野郎」かな?
手前の編み笠集団は3・15事件で連行される共産党員。それとケルベロス・ハチ公。

 

「人外交差点」について(1)

ただいま森美術館にて開催中の「六本木クロッシング」展に参加しております。

中村宏さん、赤瀬川原平さんと同じ空間(なんたる光栄!)で新作7点と旧作1点を展示してます。….横幅が4m近くある新作「人外交差点」について少しお話しします。この作品タイトルは、皆さん薄々お気づきであろうかと思いますが、弘兼憲史先生のマンガ「人間交差点」を元ネタにさせて頂きました。 渋谷のスクランブル交差点という日本一「見られている」場所に集まる「監視」にちなんだモノノケの群れ、いわゆる「百鬼夜行図」のような絵つくる。というのが一番最初のイメージです。 ざっと見、ゴチャゴチャしてて何が描かれてるか分かりづらいのですが….。私自身、下絵つくる段階で小ネタを集めすぎて収拾がつかなくなり、ストレス性蕁麻疹のかゆさで涙を垂らしながら制作したぐらい、それぐらいにゴチャっとしてます。 ネタの紹介をする前に、ひとまず今日はこの作品用に書いたテキストを紹介します。….大概の場合、テーマを決めてから取材や資料集めをして、それをもとに文章やレポートのようなものを書いてから絵を制作してゆきます。今回もテーマである「監視/相互監視」のモチーフを散文風にまとめて、この文章を下敷きにして絵を構成しました。….作品を完成させるまで「怒りの導火線」の火が途中で立消えしないように自分自身を煽る「アジビラ」的な役割もあるので、少々大仰でありますがお許し有れ!

—————————————————————————————————————————-               「新暗黒時代のイーヴィルアイ」

街角には、憲兵も、特高も、スパイも秘密警察もいない!…….白色テロルもない!今、私達を監視しているのは、冷徹なカメラの目と隣人諸君の鵜の目、鷹の目、イーヴィルアイである!

3・11後、錯綜する情報の中、真実の情報を求めて暗中手探りで彷徨った。戸惑いはやがて「疑心暗鬼」という黒い影となって残った。流言蜚語、罵詈雑言。……関東大震災後の狂気のような黒い雲!分厚い雲のはるか上空、成層圏のかなたに「絆」の星が蒼白くまたたく。 ……

『自由』の歴史は血なまぐさい!今はただ、無色無臭の空気のように透明な「自由」に満ちている。(無色無臭のガスは警告を発さない!!) 白昼の闇黒。無色無臭の空気に漂う邪眼!視線が生気を奪い、言葉が足下を掬う。

…..かつて、呪詛を避けるために本名を明かさない時代があった。「防諜」という号令のもと口をつぐまなければならない時代があった。禁忌は信頼の存在しない暗黒時代の代物である。
隣組の模範的国民のように独善的な目玉を光らせて、クチバシでつつき合う相互監視!自らが体制(エセ体制)を築く新暗黒時代…..!

街角では、憲兵の、特高の、スパイの、秘密警察の白い亡霊が叫ぶ!「新体制万歳!」「新暗黒時代万歳!!」「われらの不自由万歳!!!」……..。

                               2013年風間サチコ

じんがい
人外交差点です。