LUNGENWALD

さあ大変! (予想どおり)緊急事態宣言が延長されそう!TCAA展が再開できるのか、ますます不透明に…いや若くは中止となり幻の第6回ディスリンピックになってしまう可能性だってあり得る。
今日も明日も観客の来ない灰色の四角い部屋は閉ざされ、私のZauberbergや肺の森たちはひっそり眠り続ける…。今回は幽閉中で暫く会えない「肺の森シリーズ」について解説しよう。

環境問題を語るとき、森林地帯のことを「地球の肺」と比喩することがある。樹木はCO2を吸収し、生物の生存に必要なO2を大気に放出する「肺」のような働きをしてくれるので森林を伐採したり燃やしたりしたらダメだヨということだ。やりたい放題の人間様が何を今更だが、新型コロナウイルス感染症で今はその人間様自身の肺が一大事!肺炎が重症化するかしないかが生死の境目。森林大火災よりも肺の機能死守が喫緊の死活問題に…。

LUNGENWALD
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「肺の森シリーズ」6点の1作目のタイトル『LUNGENWALD』はドイツ語の肺=Lungenと森=Waldを繋げた造語で、各肺葉をくまなく巡る血管を樹木の細かい枝に、それを護る甲冑のような肋骨と背骨を幹に見立てた絵になっている。枝葉が枯れると光合成や呼吸ができず死んでしまう「地球の肺」同様に人間の肺葉も、血管や肺胞などが炎症でやられると呼吸ができず死んでしまう。

LINDENBAUM
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『LUNGENWALD』と同じ版木を利用した『LINDENBAUM』では、枯れた肺の樹がハート型に転倒し再生とLOVEを象徴してる。これはトーマス・マン『魔の山』のハンスが雪山で見た幻視によって「二元的な
対立より愛」だと(一瞬だけ)開眼したことと、青春の儚さと過去への執着、そして諦めを連想させる作中登場のシューベルト「菩提樹の歌」をイメージした作品で、素朴でロマンチックな図像は、20世紀初頭ドイツの印刷物から引用している。