クリスマス休戦

いつも微笑みを絶やさず、自身の神経を擦り減らしてまで誰にでも優しく接する不思議な友人がいる。あるとき本人の口から「私には性別の意識とか恋愛感情が無くて、他人への関心も薄いので、その欠落を補充するために常に親切を心がけている」と聞いて私は深い感銘を受けた。
人間はもとより他の動物も、愛情は生まれついての本能だと疑わないところがあるが、彼女は生来の超ニュートラルな性質に粘り強く肉付けをし続け、現在の博愛的人格を形成したのだ。もちろんそれは意識的な演技から始まったものかもしれない、しかし長年の自覚と鍛錬により「真心」となって定着し、その人の周りには平和がある。

『Xmas truce』は、不穏な『Ypres fog』を平和的場面に改竄した作品だ。くたびれたドイツ兵とイギリス兵が煙草の火を分け合っている中央の絵は、第一次世界大戦中の1914年冬に奇跡的に発生した「クリスマス休戦」を記録した報道写真が元になっている。この心温まる名場面が国際社会向けの演出(ヤラセ)なのか、今となっては定かではない。だが、憎悪広告でないことは確かだ。(たとえ偽りでも)束の間の寛容さを何度でも繰り返し重ねてゆけば、いつかはこの107年前の光景のような友愛精神が定着するかもしれない。

Xmas truce
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薄っすらと刷った『Ypres fog』に樅の木を描き足して木版画をシールのように貼ってみたヨ。

(謎のハの字座り)
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第一次大戦期のドイツ兵集合写真では、かなりの確率で前列の2~3名がハの字のような横座りしている。男同士で肩を寄せ合う姿はとても微笑ましいが、何か伝統的な意味でもあるのだろうか?

(サンタさん有難う)
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クリスマスの朝、こんな木製Mark.1が枕元に置かれていたら…子供は歓喜の声を上げるだろう!