リミテッドコンタクト+心眼

ブラインドサッカーは目隠しを装着して行うフットサルのようなスポーツですが、目の見えない選手たちがあたかも見えてるが如く動き回るために「音と声」のアシストが重要ということをパラリンピックを観て初めて知りました。金属片の入ったボールは転がると音が出る仕組みで、接触事故を避けるために選手は声を出して走り、ゴールでは目の見えるキーパーが大きな声で指示を与え、ゴール裏には敵チームのガイドがいて「ここを狙え!」とゴールの枠を棒でガンガン叩いて教えます。日本代表チームは今大会に向け、四角形のフォーメーション維持のため4人の体をゴムチューブで繋いで走る特訓やボイストレーニングを重ね、気配を察知する感覚をさらに磨き、各選手が上空からフィールドを鳥瞰してるのでは?と疑うほどの、まるでサイキック忍者のような驚異的な動きを見せました。

新刊『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』は、著者の川内有緒さんが全盲の白鳥建二さん、友人のマイティさんたちと一緒に美術館やギャラリーを巡った出来事を記した本です。大抵の展覧会は「見る」ことが前提なので、川内さんら同伴者が何が展示されているのかを白鳥さんに説明し、その言葉を受けイメージや解釈を紡いで、作品を介しての会話が始まったりするのです。これは目の見える人が見えない人をアシストしてるように見えて、見えない白鳥さんから別の見方を教えてもらえるガイドとも言えます。晴眼者と視覚障害者(或いは日常における他者と自分)の感覚には違いや隔たりがあるけれど、アートを会話の叩き台に、サッカーボールのように蹴って音を出し声を出しコンタクトすれば、闇のフィールドに(何か明るい)球筋が見えるかも?という可能性。解釈に正解の無い美術作品なら自由に転がるボールに持ってこい!(私の作品もどうぞ蹴って!)

社会的リミテッドコンタクトの習得は、相手と自分を知る声=言葉、そして察する力=心眼を磨くことにある。だがしかし、私達は肉眼から得る情報に依存しすぎて、心眼の鍛錬を怠っているのかもしれない。最近スマホの見過ぎで実際の視力も落ちまくりの私は深く反省するのでした。

昨日(9/3)発売!
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『見えない白鳥さんとアートを見にいく』
川内有緒 (著)
集英社インターナショナル(¥2,310 税込)

※私の展示も見てくれてま〜す↓以下詳細
https://www.shueisha-int.co.jp/mienaiart