西に向かって読め!

田園都市線/半蔵門線/山手線/南武線/武蔵野線/西武新宿線と色々な電車車内で読んでる『発心集』は、タイトルにある「発心」の決定的瞬間のほか、仏道にまつわる面白エピソードが書かれたちょっとシュールな短編集です。
突如この世の無常に気づき、仕事も家庭も捨ててプイっと蒸発というのが発心逐電の王道パターンですが「心を発す(おこす)」衝動は人それぞれ…。便所で不意に発心し便所用下駄のまま軽装で行方不明/風に吹き飛ばされる葉っぱを見て発心、樵の仕事を辞めて息子と別居/ある朝突然「うちの田んぼは大きすぎる!」と手ぶらで家出/愛人の腐乱死体を眺めていたら虚しくなって乞食に転身/権力者から説法の依頼を受けたが行く途中でイヤになりバックレ…等で現代社会の通念では到底許されない無責任行為の数々も、最終的には「西に向かってお経を読んでるな〜と思ってたら座ったまま死んでた!」という超常現象的な往生さえ実現できれば衆人の羨望を集め、それまでの不審な挙動はサクセスストーリーとして帰結し許容されます。(南無阿弥陀仏の一語と死ぬタイミングが大事)

(ぶらり途中下車発心)
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問「もし私が授業に行く途中、通勤電車を降りてバックレたらどうなる?」
答「もう講師の依頼が来なくなる」