きのう高倉健さんについて少し触れたばかりなのに、今日昼に起きて「高倉健さん逝去」の一報をテレビで知って本当に驚きました。昨年、NHKのドキュメンタリーで、健さんのストイックな健康管理(マウスピース着用の全力散歩に驚嘆!)を見て、まだ現役で映画に出続けるんだろうな〜と思っていたのに…急な訃報にただ呆然です。先きに述べましたとおり、映画のあらすじもロクすっぽ記憶出来ない私ですが、健さんの目…任侠映画の中で見せる、殺気を通り越した空虚な、何も無い空気を睨むような白い光を放つ目が大好きでした。
思えば、任侠映画にはずいぶんとお世話になりました。高校時代はテレビ東京の「2時のロードショー」を観てから登校してたので、映画館でもDVDでも観れないような70年代の変なアメリカ映画とか、任侠のシリーズものなど結構観ました。勿論ほとんど覚えてないけど!江波杏子の「女博徒」のお銀さんもよく放送されてた、かっこよかった〜。でもやっぱり藤純子のお竜さんの気高い凛とした美しさに勝るものは無い!一番印象に残っているのは「緋牡丹博徒一宿一飯」(あ、トラック野郎の鈴木規文監督ですね)のワンシーンです。賭場で出会った鶴田浩二演じる博徒・風間周太郎が、夜中に繕い物をするお竜の隣に座り「お竜さん…。お竜さんには長ドスより、お針の方が似合ってるぜ。」と語りかけ、博徒の道を諦めて普通の女に戻った方が良いと、優しい男気で諭すのですが、それに対しお竜は寂びしげな横顔を見せ沈黙で答えるのです。…この時、手に持った針に視線を落とし無言のままのお竜さん、その真白く冷たい頬のなんと美しいことか!博徒の宿命を背負った、女の悲しみと強靭な心意気が余す所無くその美貌に表されてます。
すぐに影響されやすい私は「よし!お竜が針のかわりに長ドスなら、私は長ドスがわりの彫刻刀だ!」と決め込んで、彫刻刀を懐に忍ばせた木版博徒の道を選んだという訳です。そしてこの映画で知った『一宿一飯』という言葉からも、人生(というと大袈裟ですが)の指針のようなものを得ました。ギャラリーや美術館での展示やら販売で世話になるという関係を、「草鞋を脱がせてもらっている」と置き換えて、今でも義理を果たす努力をしてる(つもり)です。…任侠映画の影響で学んだ「義理」なんてたかが知れてる、とお思いでしょうが、これといった縛りのないフワフワした渡世が美術の世界なので、自分一人の「戒め」を持つのには十分役立ってますよ。
「炭坑町だったから、喧嘩で殺られたホトケさんが道にころがってるのを、朝学校に行く途中でよく見ましたよ。」と任侠映画で喧嘩や殺しのシーンも自然に演じられた理由を、子供時代の思い出で語っていた高倉健。こういう道徳が希薄で、死の近い場所で育った俳優さんはもう居ないだろう。瞽女(ごぜ)の娘として幼少から苦労を重ね、任侠映画の世界観をみごとにカバーした藤圭子も既に鬼籍の人…闇と宿命を背負った、極北の表現者が去って行くのは寂しいかぎりです。昭和も遠くになりにけり、なんて月並みな言葉はいいたくありませんが。今夜は哀悼の意をこめて「網走番外地」藤圭子バージョン、高倉健バージョンを歌います!

