裏表紙の罪と罰

一般的に名作とされていている本をほとんど読んでいないので、いつか赤っ恥をかくだろうな〜と恐れているのですが、でもそう思っていてなかなか読めないんです。さっき読み終わったドストエフスキーの『罪と罰』もそういう本のひとつでした。学生時代には年賀状の宛名が「カザマーゾフ君」で届くぐらいドストエフスキー先生の薫陶を受けていた、カザマーゾフ兄いちおしの推薦図書だったような気がするが、私は文庫本(新潮文庫)の厚みに負けた…。なんせ集中力が続かないから上下巻は無理とはなから挫折してしまった訳です。そしてもう一つの原因もある。
今一度挑戦してみようと思ったのは、以前ブログで紹介したジョン・キャロル著『水晶宮からの脱出』を読んで、そこで指摘されている、ドストエフスキーが小説(地下室の手記以降)に込めたとされる社会主義のユートピア、合理主義的決定論、功利主義の科学などに対する懐疑と批判って何だろう?と俄然興味がわいてきたからです。まあ手始めにと『地下室の手記』を読みました。これがまた超傑作!笑えました〜!!終始ハイテンションな憎悪と呪詛の独り語りが最高な第一部と、ボタ雪を見て「ああ、そういえば」で急に始まる第二部のロマンスの回想録も痛くて最高!私の好きな場面は、地下室の人(主人公)が娼婦の娘を相手に「娼婦だからこの程度の話で感動するだろうな」と見下げて、まだ自分も経験したことないのに「結婚と家庭生活の素晴らしさ」を演技たっぷり饒舌に語りあげ、どうだ感激しただろう?と娘の様子をうかがうと、その口から「あなたの話しは書物をよんでいるみたい」とズバリ指摘されて狼狽し焦った挙句、それを挽回しようと今度は「娼婦がたどる悲惨な末路」を大袈裟に語って娘を絶望のドン底に突き落とし号泣させるトホホなくだりです。経験不足の穴を知識で穴埋めしてしまう学習型人間の陥りやすい落とし穴!それをこんな面白い文章で暴き出すとは流石は文豪です。すっかりドストエフスキーが好きになりました。この本を入り口にしたのは我ながら正解でした。
そんなキャッチーな「地下室」からの「罪と罰」は、今までの及び腰が嘘のようにスラスラとあっという間に読破できました!(水晶宮の謎がどこに潜んでいるのか、探りながら前に進むことが出来た)…そして読み終わってみて正直、若い時に読まなくって良かったな〜と思いました。どうしてかというと、もし読んでいたら確実にラスコーリニコフに同調して感化されてた筈だからです。中学生の時だったらなおさらで、今だから中二病と笑えるが、本気で自分のことを「選ばれし民」と思って「天才に共同体は無用」と信じて学校に行かない理由にもしていたから…。私もボードレールやワイルドみたいな高等遊民(心の貴族)になれる!私をコケにする同級生たち(群羊)を黒魔術で抹殺!などなど、馬鹿げた夢想のオンパレードにてイジケた自尊心を保っていた時期にロージャ君=ラスコーリニコフと出会ってたら、そりゃあもう絶対に選民意識増長まちがいなし!そういえばカザマーゾフ(兄)もだいぶロージャ的な傾向があって母をビビらせてたが…しかし、今じゃ一家の主で私よりよっぽどマトモな生活をしてます。よかったね!私はといえば、キャベツを一日三枚ちぎっては食べ、ヤフオクで素敵な椅子を落札できずに落胆してる、とんだ立派な高等遊民ですよ!は、は、は!
…と。前置きがすっごく長くなってしまいましたが、今日何を一番言いたかったかと申しますと、それは新潮文庫の裏表紙のあらすじが「酷い」ということです。私がこの「あらすじ」のせいで本を読む前に「誤読」して読む気が失せたと言っても過言ではありません!ロージャ君の凡人、非凡人論を借りれば、これは凡人向けに解釈(曲解!)された道徳的なオチで納得させる手筈のストーリーですよ。特に下巻の「強烈な人間回復への願望を訴えたヒューマニズムの書」というのには笑わされるじゃありませんか!ヒューマニズムって言葉の一般受けは良かろうが、こんな言葉で総括するのは本当に「罪」だと思います。
…次回はこの「あらすじ」につっこみを入れてやろうかと思っております。(つづく)

2015-01-24 15.04.30
『ロジオン ロマーヌイチ ラスコーリニコフ』
こちらは引き裂く様なレタリングが青春してる大島弓子版「罪と罰」
ロマンチックな青春残酷詩に仕立て上げられてますが、キャラクター設定が原作とかけ離れてるので、読むと混乱します。

2015-01-24 15.11.24
この素敵な眼鏡男子はなんとポルフィーリイ予審判事!
私のイメージではどちらかというと喪黒福造でしたが…。
「青二才特有の思考地獄からの脱却方法は、生活(リア充)で思考するスキを与えないこと」てな感じの一幕であります。

2015-01-24 15.31.58
原作では「やっぱりそうだ!この狂信者!キチガイ女め!」とロージャ君がソーニャに「共感」する名場面。

2015-01-24 15.07.34
極めつけの裏表紙。
この血まみれの十字架を手にした悪魔的美貌の持ち主は誰でしょう?
答えは「スヴィドリガイロフ」!あの変態(ロリコン)ニヒリストです。
この漫画の中では「壁ドン」三回してます。