…..「新しい時計が二時半 彼の時計も二時半 彼と私は そのうちに逢ふのです」…..
これは尾形亀之助の詩『彼は待つてゐる』の一部です。雑誌・アールヴィヴァンのマヴォ特集の記事の中から拾いました。同時性と偶然性と力強い予感…。叙情の入る余地のない簡素な文体なのにロマンチック!たった4行の詩の断片で、すぐに亀之助の詩が大好きになりました。
折良くヤフオクで文庫本が入手できたので、この詩の全体を読むことが出来ました。素敵です!
「尾形亀之助」については、大正時代の先鋭芸術グループ・マヴォの初期メンバーとして、モダニズム絵画「化粧」の作者としてしか認識していませんでした。こんなに優れた詩人の詩集が現行で発売されていないとは、勿体ないことです。
「不動の純化」….亀之助の詩を読んでいるとこんな言葉が心に浮かびます。コップの中の泥水がいつのまにか泥濘と水に分離していく。水は澄んでキラキラとしているが、一寸動かしただけでまた濁ってしまう….。居住空間に自らの身を定め、乳児のような不機嫌さを持て余しながらも、鋭敏な感性だけは自由に伸縮し幽体離脱のように浮遊します。スケッチのような文体の詩は、心象風景があたかも日常の出来事のように感じさせる不思議さがあります。
いつも座椅子の周りに散らかってる「死刑宣告」同様、「現代詩文庫1005尾形亀之助詩集」この本も私の「傍ら本」の仲間入り!ひねもすコタツに座りっぱなし「不動」の友です。

『化粧』1922年

1925年刊行 詩集「色ガラスの街」より『病気』
