防コレ(2)

民間防空を国民にひろく啓蒙するための冊子類は往々にしてドギツいものが多い。それもこれも昭和8年に催された関東防空大演習でのカタストロフ感じる光景に由来している。炎と煙幕の街にさまよう防毒面、高射砲の勇姿など日常の風景を唐突に破壊するビジュアルは、非常時の切迫した空気というものを、まだ戦時下という実感のうすい国民に知らしめるに余りある。その大演習の時に広められたイメージをそのまま継承しているので「防空」は激しい絵面なのです。
今日ご紹介する『家庭防空』という家族全員で読んで学習する雑誌は一際ヤバい。狂ってる!昭和13年に発行されたこの本では、大演習時で刷り込まれた「毒ガス」に対する恐怖に、あらたな脅威「焼夷弾」による大火災が加わり大変なコトになってる!防空テキストの主旨は「正しい予備知識の学習で、冷静沈着に行動しましょう」で、それは騒ぐな落ち着け逃げずに鎮火という民防空法にのっとった国民統制です。だが、しかし。この本を見て落ち着けというのは何とムチャなことか!まずご覧あれ!

家庭防空
第十六師団編纂「家庭防空」昭和13年発行
燈火管制の暗ぼったいお部屋でお姉さんは編み物、坊やは防毒面でお遊び。

家防2
「備へあれば」とくれば次は「憂ひなし」であろう。
コラージュが秀逸すぎて不安だ!

家防1
「列國の空軍」かっこいい戦闘機や爆撃機がいっぱい!

家防3
「平時より準備すべきもの」
水、砂、防毒面に説明文はなくても私達はすでにその重要性を知っている(はず)

家防4
それは「焼夷弾は最初の三十秒間に消火が肝要/水と砂も有効」ということだ。
「木造家屋は焼夷弾に對して大なる弱點をもつている」それは燃えやすいということだ。
(デマゴーグや流言にまどわされるな、と言うけど、焼夷弾が水や砂で消せるというは最悪のデマ!)

学童用クイズ「コレナーニ」
家防5
「コレハ テフテフノ カムフラージュダヨ
ボクラノ オイヘモ コンナニスルト テキノヒカウキニ ワカラナイノダヨ」

なーるほど!私もこれを参考にお家の塗装をダズル迷彩にして敵機と近隣住民を幻惑しようかな?勉強になるネ。