絹の夢

家畜化された養蚕種のカイコは、桑の葉を敷き詰めた平坦な箱で飼育されるため、脚力が退化し木の枝に登ることができないという。そして成虫になる前に蒸焼きになるので、羽を動かす筋肉も退化し、たとえ羽化するチャンスが巡ってきても飛翔することは不可能であるという。美しい絹糸はカイコの労力と生命の犠牲の上に生まれた繊維で、空を飛ぶ未来を持たない幼虫たちの夢の残滓であるとも云える。
私は昨日、その絹の着物をまとい横浜美術館開催「石内都・肌理と写真展」のオープニングレセプションに出席。この会のドレスコードが「和服か絹洋品」だったので、箪笥の肥やしと化した着物を久々に着用したわけです。戦前趣味ワードローブの中からとっておきの、錦紗の中振袖(壺垂れ柄)を引張り出し、改めて先人の美的感覚に感動!良心の呵責を凌駕する美しさよ!美食然り、多くの残酷を黙殺するのが人間の業よ(近々きっと罰が下る)。私はカイコの夢を着て石内さんの作品「絹の夢」を見た。


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展示室「絹の夢」にて
大量のサナギ死体は鯉のエサや釣り餌に利用される南無阿弥陀仏…

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着物一式並べるのは楽しい(けど着るのと片付けが大変)

☆力強く且つしなやかでカッコいい(わたし憧れちゃう!)石内都さんの『肌理と写真』展は、横浜美術館にて来年3月4日まで開催で〜す☆