赤い丸の内

41年前に新玉川線(現.田園都市線)が開通し、路線の通る桜新町に住んでいる私は、幼稚園児のときからこの地下鉄を利用しています。真っ暗なトンネル奥から生暖かい風が流れてきて、轟音とともに電車がやって来ると、スリルと期待に満ちた風圧に小さな私は足を踏ん張ったものでした。新玉川線の銀色の車両と、タイル張りのお風呂みたいなホームがお気に入りで、このピカピカでコザッパリとした電車に馴染んでいたせいか、たま〜に乗る丸の内線の真っ赤なボディ(帯状に柄の入った車両)が私の目には不気味に映っていました。…何故か子供の時分は、このような有機的で抽象っぽい戦後のモダンデザインに恐怖を感じ、ほかにも三越の包装紙・オリンピック公園・岡本太郎グッズなども同じく薄気味悪い部類に所属でした。そして最近のニュースによると、幼い私に不気味な印象を与えた例の車体を元にした、赤く有機的な(イモムシ風)デザイン丸の内線新車両が来年2月に運行されるというのです。
赤い電車は戻って来る。けれども私は[朝日:俳壇歌壇]紙面を去る。晩秋の風情を乗せサヨナラを告げる地下鉄とともに、これでお別れです。朝日新聞ご愛読の皆様、担当者がうっかり挿絵を依頼をしてきたら…またお会いしましょう!

〈アデュー!東京所々〉
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何でも描いていい挿画連載は楽しい仕事でした。3ヶ月間ありがとうございました!

〈元祖・東京所々〉
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美術漫画第一人者G.パンターによる〈DAL TOKYO〉
東京とは(たぶん)無関係に展開していく断片とその集合体。英語でぜんぜん読めないので翻訳出版を熱望する