最後のイチゴ

先日のパーティはお喋りに徹するあまり(目の前に鯛のお頭付きなど豪勢なご馳走が並んでいるのに) イチゴをたった一粒食べただけでお開きになってしまった。私はショートケーキ天辺の装飾イチゴは最後に食べる派だが、単体一粒では寂しすぎる。しかしまた、至福のときの終わりを知る最後のイチゴにも寂しさがある。
新年最初の荷として届いて以来、本棚に祀られている詩集『尾形亀之助全集』に収められた散文〈庭園設計図案(或る忘備帖)〉はまさに最後のイチゴのような存在だ。

何年間も欲しい欲しいと恋い焦がれつつ、高額書籍購入に二の足を踏んでるうちに更に価格高騰!大人気『尾形亀之助全集』の市場価格は2万円を超えてしまった。(ところが!!) 昨年末ヤフオクに100円スタートで出品されてるのを発見し(なんと!!) 6,546円で落札できた!(やったね!!)。
しかしあまりにも長い間この本に執着しすぎたため、入手したら有難味がありすぎて開くことすらできずにいる。特に全集にしか収録されていない〈庭園設計図案〉を読んだら積年の願望は成就しツマラナイ気持ちになりそう。なので未だ最後のイチゴは食べないままだ。

尾形亀之助全集 (思潮社 1970年 )
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己の感覚のみを尊重した偉大なる役立たず。
画家の才能がありながら役立たずの先鋒=詩人に転向した絶望的天才!