日別アーカイブ: 2018年1月23日

ぼた雪にちなんで

昨日は昼から霰が降り、霰から小雪へ、そして夕方には窓から見える景色一面が雪化粧。私は相変わらず外出せずにこの面白い景色の変化を室内から終日見ていたのです。

先日の回で少しふれたドストエフスキー『地下室の手記』という小説は、社会と断絶し自室にこもった中年男の、外界への尽きることの無い呪詛を記した手記です。実在しない読者を恰も存在するかのように「諸君」と呼びかける一方通行なスタイル…まるで自己完結ブログ「窓外の黒化粧」と、それを書いている私のようではありませんか!近代悪や自分の過去を呪ってハイテンションに雑言を吐き続けるこの男に対し、嘲笑と共感を捧げずにはいられません。(友達にエントリー)
手記は第一部『地下室』と第二部の『ぼた雪にちなんで』で構成されていて、自分の過去(地上での生活)の失態を回想する『ぼた雪にちなんで』は声を出して笑えるほど可笑しいのでオススメです。特に、大通りの往来でいつも道を譲ってしまう将校に憎悪し「今度こそアイツに道を譲らせてやる!」という決闘じみた大袈裟な決意を抱き(その手段として)コートの衿をアライグマからビーバーの毛皮に買い換えるくだりは最高です。

自己完結な狂人の独白のように見えて、実はスルドい(現代にも当てはまる)社会批評が展開されている『地下室の手記』。この彼の激憤の源は、ドストエフスキー本人が旅先のロンドンで見学した水晶宮を「合理主義、功利主義の権化」と見傚し、憤り震撼したその感情にあり、それを彼に投影し表現しているのだろう。と…ぼた雪にちなんでそんなことをボンヤリ考えてみました。

【玄関を開けると…】
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まるで異界への入口のような光景が…(夜明け前の庭)