魔の山登頂(すぐに下山)

ハンス・カストルプ君は音楽好きだから、療養中にレコード鑑賞できたらさぞ楽しかろう。…と案じていたが、やっと終盤〈第7章 楽音の泉〉でレコードの聴ける環境が整った!サナトリウム当局の計らいで遊戯室に最新型蓄音機が導入されると、彼は進んで蓄音機係に立候補する。そして備品のアルバム集(12枚組12冊.合計144枚)を全て試聴し、名盤/イマイチな盤/ジャンルなど分類整理。遊戯室に集う客のレベルに合わせて(高飛車に)選曲するDJとなったのだ。(ハンス選曲ベスト5も紹介)

小説はここからどんどん終末に加速する。次の回では霊能少女エリーが登場し、彼女の能力を試す実験会が行われる。ハンスは好奇心から死んだ従兄ヨーアヒムの召喚をリクエストしてしまう。難航する降霊術の最中、ハンスの提案で愛聴ベスト5のうちの一曲(劇中の勇敢な兵士に従兄の姿を重ねていたから)をかけることに…。すると。あれ変だぞ?参加者が一人増えてる。変な軍服を身につけた亡霊…あの懐かしいヨーアヒムが!(涙…)
このようなオカルトブームを先触れに、禍々しい空気がサナトリウムを支配し始め、一触即発のヒステリー状態が蔓延する。理性では制御不能な感情の嵐にハンスの2人の先生・セテムブリーニ氏とナフタ氏も飲み込まれ、いよいよ山上の空論はピストルで決着が付けられることに!
…それは下界で起きている不穏な世界情勢変動の波が、無意識下で山頂にまで波及しているかのようだった。第一次世界大戦の勃発と同時に、時間を無くした芒洋の園は、真っ逆さまに現実へと雪崩れ落ち、7年の修養は突如終了しハンスは戦場へ…。ドロドロの平野に砲弾の雨が降っている。3千のうち千人生存の見込みの兵団。ハンスは何処に?あそこにいる!「菩提樹の歌」を口ずさんでる…もう見えなくなってしまった。(完)

・・終わった。さよう、読み終わった!お正月から231日もかかって、やっと昨日の朝にツァウバーベルクの登頂に成功!次なる挑戦は展覧会 Magic Mountain(略してMM展)の頂きだ。がんばろう〜

(ダヴォス・夏)
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幻覚のような悪夢のような絵葉書の絶境