暗黒の園

昨日をもって練馬区の遊園地「としまえん」は94年の歴史に幕を降ろしたという。私は高校生時代に、西武の社員だった父がくれた大量のタダ券を利用しここで何度も遊ばせてもらった。内臓が背後に置き去りになる感覚の絶叫マシーンが苦手なので、チビッコでもOKな乗り物で遊ぶのが常であったが、中でも一番お気に入りのアトラクションは『アフリカ館』だ。
これは博覧会のパノラマ館を継承したようなマネキンを陳列した見世物で、軌道を流れるジープに乗って、未開の暗黒世界アフリカを探検する仕掛けになっている。エジプトの王族やマサイ族に歓迎されながら暗くカビ臭い館内をジープが進んで行くと、次は野生の王国が待っている。すごく暗くてよく見えないが、密林に潜む動物が単純な動作を繰り返し、突如ジャガーが「ガオー」と叫びながら頭上を飛んで消えていくのがアフリカ館唯一のドキドキ場面だ。カバの池が発する湿気と匂いでだんだん息苦しくなるが(安心しろ)出口はすぐそこだ!…眼前が明るくなると何故かそこは空港のゲートで、4~5人のスチュワーデスがへんな発音で「サヨウナラ・サヨウナラ・サヨウナラ」と手を振りながら見送ってくれる。当時この機械的なサヨウナラを口真似するのが大流行(私とトヨミの間だけで)。原住民や動物の自動人形が醸し出すうら寂しさと、モワっとした空気が懐かしい。

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サヨウナラ・サヨウナラ…