エビフライと人工頭髪

『弥生』の建設された東海村は日本屈指の原子力村である。私がその東海村を訪れたのは、今から18年前の2002年2月のことであった。1999年9月30日、2名の作業員が被曝して亡くなった東海村JCO臨界事故からまだ日の浅かった当時、原子力産業への不信感を払拭すべく東電が主催した『東海村原発見学ツアー』に私は参加した(参加費1000円)。
ツアーの集合場所は東京電力新町支店(ここは2011年3月から来客を拒み続け現在も閉鎖中)で、ここから参加者30名ほどが貸切バスに乗って東海村を目指す。バスは日本電力東海村第二発電所に到着し、降りてすぐ無作為に選ばれた参加者5名にフィルムバッジが配られ装着を求められる。それから一行は原子炉建屋を案内され、エレベーターに乗り建屋最上階〈原子炉の真上〉のフロアに立たされる。そして頭髪が不自然に大きく盛り上がった案内係の電力会社職員(おそらくカツラ)は自信のこもった猫なで声で「胸のフィルムバッジを見てくださ〜い。どうですか〜?変化してませんよね!ここは原子炉の真上ですが放射線は一切なくて安全で〜す。」と説明し、一番の見せ場が終わると建屋を出てミーティングルームに通された。
大きな部屋の正面には啓蒙ビデオを視聴させるためのモニターが設置され、綺麗に並列したテーブルの席には原発のリーフレットと幕内弁当が用意されていた。私たち参加者はお昼をご馳走になりながら、ビデオを観て先ほどのカツラ男のお話を聞かなければならない。立派なお弁当の折を開くと、巨大エビフライがドーンと入っており、バス代とお弁当代それと原発見学後のお楽しみ〈水戸偕楽園で梅観賞〉を含めた参加費がたったの1000円ではおかしい!エビの大きさが怪しすぎる…と訝しく思いつつ食べ終わると「は〜い!聞いてくださ〜い。お弁当は美味しかったですか〜?皆さんお家に帰ったらご家族に『原発は安全だったよ〜、エビフライが大きくて美味しかったよ〜』って話してあげて下さいね!」と安全神話の語り部であるカツラ男が媚びるような声で最後のお願いをして原発勉強会は終了した。
(もちろん私は)楽しいツアーのあと実家の父と母に「大きなエビフライを原発施設内で食べたよ。案内係の男性のカツラが異様に大きかったよ!」と報告したのであった。

(安全神話の伝承)
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プルサーマルQ&A
「なぜプルトニウムを使うの?余っているから?」
(危険な副産物が余ってしまうのが問題では?)