上高地ビスケット

『DER ZAUBERBERG』の山岳地帯を描きながら「そう言えば昔、上高地に行ったなぁ」と思い出す。昔というのが小学高学年だったか中学生のときか定かではなく、この曖昧さは(やはり)観光バスでの乗り物登山だったことに起因する。唯一ハッキリと記憶に残っている事象は土産店で購入した〈上高地ビスケット〉のあまりにも淡白すぎる味で、見た目はマリービスケット似だが、マリーを更に脱脂し甘味を抜いたような大変モソモソしたお菓子だった。
一目で気に入った〈上高地ビスケット〉のパッケージは子供の私でも魅了されるほど美しく、横長のビニール包装には穂高連峰のパノラマ写真が総天然色で印刷され、片隅に優秀な銘菓として金賞を授かった過去を誇る勲章のようなものも印刷されていた。幻想的な大正池や雄大な穂高の思い出を胸に帰宅し、金賞受賞の実力を期待して食べたが、表徴の煌びやかさとは裏腹な素朴すぎる内面(ほぼ無味)に私は絶句した。(誉の勲章は偽りか?)

『DER ZAUBERBERG』下絵
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アルプスの山々を整合性なくツギハギした不気味山脈ツァウバーベルクから上高地ビスケット(穂高連峰/日本アルプス)からブラックモンブラン(アルプス山脈)へと連想の山脈は続く…
「ブラックモンブラン(チョコアイス)が食べたいよーー!」
私がこの東京砂漠で九州銘菓ブラックモンブランを熱望し叫んだとしても、虚しくビル山脈にこだまするだけ…。いつでも美味いアイスバーが食べられる九州人が羨ましい。