あとの祭り

「悪霊どもが豚の中に入る許しを乞うとイエスはお許しになった。悪霊どもはその人から出て豚に入った。すると豚の群れは崖を下り、沼になだれ込み溺れ死んだ…」ルカによる福音書の一節には、狂人に巣食う〈悪霊〉を豚に憑依させ悪魔祓いをしたイエスの奇跡が記されている。
八方塞がりの世情において、この悪魔祓いのごとく、あえて集団ヒステリー的な熱狂を誘発することでガス抜きする意図があったら…。そんな風に疑うとオリンピックは世にも恐ろしいお祭りだ。メダルラッシュと感染爆発の並走!感動と不安で興奮状態の豚の群れはトラックをグルグル周回し最終直線コースに突入。そしてゴール(死の沼)へとまっしぐら!・・・オリンピックというモルヒネで一時的に苦痛から解放され爽快な気分になっても、感染症や閉塞感が根治するわけではない。
美空ひばりの『お祭りマンボ』は、ピーヒャラピーヒャラ、ワッショイショイとテンポよく、陽気な下町情緒を歌っているのかと思いきや、実は、お祭りに熱狂するあまり足元で起きてる災禍(火事と空巣)を軽視した結果、痛い目にあってしまう愚かな民衆を描いた恐ろしい警告的歌謡曲だ。歌詞のように「いくら泣いても あとの祭りよ~」なんてシャレでは終われない現実が今ここにある。

IMG_1446
溺れる豚も久しからず、ただ夏の夜の夢のごとし…