不老山を探して(4)

鷺ノ巣岩のことを不老山だと思い込んだまま我々は浜辺を離れ、鳴瀬川対岸にわずかに残る野蒜築港跡を目指し車を走らせ長い橋を渡る。(もちろん春海さんの運転。私は自転車すら乗らないから)
国内屈指の繁華な市街になる予定だった北上運河河口のデルタ地帯には薄茶色の草が繁りボーボーと強風に吹かれている。日本初の西洋式港建設の計画と失敗の記憶は流砂に埋もれて、妙に拓けた夢の跡は茫茫とし寂寥を誘って止まない。

(そして翌日も強風だったが)朝から徒歩で日和山に登り、山頂の鹿島御児神社で「ここ石巻で展示をしますが何卒お許しください」と拝んでから参道の長い石段を下りると、すぐ目の前に〈まねきショップ〉はあった。お店のご主人・本間さんは、かつて廻船業を営んでいた旧家のご子孫で、個人で郷土史を研究する生き字引的な存在なのだと伺い、初対面で図々しいけどお話を聞きにこちらを訪問したのだった。
さっそく持参した奥松島・不老山絵葉書を本間さんに確認してもらうと「これは不老山ではなく鷺ノ巣岩だね」と衝撃の事実を知らされる。どの絵葉書も「不老山」と表記されており、中央に写ってる岩山が不老山だと認識するのが自然だが…謎すぎる。推測するとこれは〈不老山頂上から見た風景〉という意味か、もしくは伊達政宗に由縁があり有名だからタイトルにしたのか?絵葉書に当の不老山は写っておらず、今も昔も冷遇されてかわいそう…。(私が作品にするから元気を出して!)

(野蒜築港遺跡)
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コンクリートで封鎖された北上運河河口に残るレンガ構造物

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不老山不在不老山絵葉書の数々…
現在は陸地にある岩山だが、昔は波に洗われていたことがわかる。

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津波に耐えた土蔵の中で所蔵品(古地図/和船の本/明治時代の百科事典/風水の見取図等)をたくさん見せていただいた。SPレコードまで聞かせてくださり「ハンスもこれと同じキャビネット型蓄音機でレコード鑑賞してたのか〜」と感激してたら「ハンス?魔の山ですね」と本間さん。さすが何でも良くご存知ですね!色々と勉強になりました。ありがとうございます!(蓄音機の音色が素晴らしかったので私も欲しくなりました)