コロシアムの行方

「新しい建築物を建てるということはオムレツを作ることと同じです。卵の殻を割らなければオムレツは作れないのです。」と新国立競技場の設計を勝ち取ったザハ・ハディドの事務所の人は言っていた。クラッシュアンドビルドを「オムレツ」に例えたわけだが、そりゃあ巨大公共事業のデッカイ仕事をゲットしてなんぼの建築家にとっては、古い土地に残った建物や歴史、地域文化なんて割って捨てるだけの卵の殻かもしれませんが….。
先日、ほんとうに遅ればせながら解体前の国立競技場を見てきました。さよならイベントも終了し閉鎖されてましたが立ち入り禁止の看板は見てみないふりで、入れそうな所を探して周辺だけでも見ることが出来ました。東京に40年以上もいるにも関わらず、スポーツイベントもコンサートも無縁な暮らしで競技場にくる用事もなかったので、この期に及んでやっと!ああ愚かな私!はじめて間近に見る国立競技場は思いのほか大きく、古色を帯びたコンクリートに風格がありました。部分的にしか見れなかったけど一番かっこいいと感じたのは一階のファサードです。楕円の競技場の土台にあたる地上階部分で、玄関まで導く柱が通りと通りを一直線につっきる形で林立してます。柱も細めで高さもないので、ナチス建築のネオクラシック的な偉容とは程遠いですが…オリンピック=ギリシャ=ネオクラシックというのもベタでありながら、競技場にはこういうスタイルがやはり合いますねー。そしてまた、解体を待つ姿に「遺跡」の雰囲気が漂い素晴らしいです。
TBS「ひるおび」でも件の新国立競技場建設の問題点を特集してて「旧競技場は改修して使って、新しいのはお台場に建てた方が似つかわしいのでは?」というコメントに私も賛成!ハディドの未来風デザインはお台場、バブル大鑑巨砲主義のパビリオン残像建築群のひとつとして馴染むはず!古きを尊び新しきを全否定するものではないが、「未来」はデザインで強引に引き寄せるものではないと思っています。ゴリ押しな未来風があっという間に時代遅れになるさまは、すでにお台場で実証されているではありませんか!建築費1600億円以上、年間維持費46億円、キャパが大き過ぎて通常の競技大会では「空席」が目立ってしまうこと必至の巨大競技場。もう誰得だよ?建て壊す国立競技場に残されている壁画13点の保存は、予算5億円の支出ができず、日本スポーツ振興センターが選んだ6点しか保存できないらしい…。建築費用には青天井でいくらでも出せても、文化財の保存には出し渋る文化に冷遇クールジャパン!今になってだけど国立競技場の60年代の力強いコンクリ感が超クールだと思うけどな。

国立競技場1
国立競技場の一階入り口。五輪のマーク輝いてます!
国立競技場2
道路に面している場所。独特の暗ぼったいムードと威圧感があります。そこが良い。
健康美
健康美を誇る青年よ!君は何処へ行かん。

給水塔夕.
去る7日に、我が最愛最強コンクリート駒沢給水塔の電球に明かりが点きました。
民家の間にのぞく給水塔。電燈を楽しむにはまだ早かったようです。
給水塔夜.
雨に潤む赤い電燈。ルビーを頂いた王冠のよう!