同姓同名のベーコン

30年前ムサビ学園在学中、油絵科のイクちゃんが「わたしフランシス・ベーコンが好きなの」と話すのを聞き〈ほほぉ、フランシス・ベーコン卿がお好きとは高尚な!〉と感嘆したが、イクちゃんが好きなベーコンは20世紀の画家でルネサンス時代の思想家のことではなく、とんだベーコン違いだった。その後ベーコンの絵は何度か見たが、ベーコン卿の本は全く読まずに月日が過ぎた。
それがつい先日『ニュー・アトランティス』という薄っぺらい本を図書館で借りて「ベーコン面白いなぁ」となり直ぐ購入。この本の125ページ中前半がベーコンの書いたユートピアSF小説だが、執筆途中で死んじゃったので未完。残りの半分は忠実な助手による回想文と訳者の解説文でどうにか文庫本のページ数をかせいでいる。
どんな物語かというと、大航海中に漂着した謎の超文明国家の島で、学会の長老からいろんな自慢話を聞かされるお話だ。太陽光や水力を利用した動力、遺伝子操作など、現代のテクノロジー及びバイオを連想させる予言、さらに引き篭もり人間と地底の活用方法など、17世紀とは思えぬ空想が書かれておりオーパーツを見るような不思議を感じる。

超御曹子だったベーコン卿の人生は、父親が風邪を拗らせて亡くなってから雲行きが怪しくなり、転落の末どうにか発明で身を立てようと〈鶏の長期保存法〉に挑戦し命を落とす。寒い日に行った鶏のお腹に雪を詰める実験で風邪をひいてしまい(父親と同じく拗らせて)痰を詰まらせ窒息死したというのだ(なんたる悲運!) 風邪をひかなかったらニュー・アトランティスが完成したのに残念。みんな風邪と疫病には気をつけようネ

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発売当初400円だったのが現在絶版で3倍の1200円に高騰(これでも最安値)。こういった愉快な書物を売れないという理由でどんどん絶版にするとはけしからん (安く大量に普及させよ)