幻の二番館

芸術新潮1月号・映画特集をみんな読んでくれたかな?私が寄稿した〈アーティストが選んだ3本〉のプロフィール欄には「初めて観た映画は何か?」という質問への回答が書いてあり、「9歳の頃、兄妹3人で映画館に行った『ブッシュマン』『エレファントマン』の2本立て。」が私の答えだ。しかし観たと言っても内容は全くわからず、ただひたすら怖い感覚しかなかったが…。

マンと差別が共通項の大人向け映画2本立てをなぜ子供だけで観に行ったんだろう?まだ小学1年生だった幼い妹が、長時間座って理解不能な映画をガマンできたとは思えず色々謎だらけで、もしかしたら夢と現実を錯誤してるのかもしれない。そうだったら、芸新の記事はウソということになってしまう。(憶えてるか兄妹に確認してみよう)

(芸新1月号より)
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昔は二子玉川園駅前に〈二子東急〉という二番館があり、おそらくバスか地下鉄に乗って兄妹と3人でそこに観に行った。
できたばかりの新玉川線(現.田園都市線)の駅〈二子玉川園〉の名称は、古い遊戯機械がギーギー軋む怖い遊園地・二子玉川園がここにあったから。当時はチンドン屋が奏でる『美しき天然』がよく似合う川っぷちの場末で、私の中ではガロの鈴木翁二が描く陰影の濃い漫画のようにセンチメンタルな映像で再生される。