死出のCD

先日の葬儀で、棺に眠るご遺体を花で埋めるセレモニーの際、故人の好きだった音楽を流していた。79歳で旅立つこの老婦人への選曲は美空ひばりで〈東京ブギウギ〉も流れたが「やっぱり笠置シヅ子の方がうまい」と思った。

一緒に参列する兄に「私のときはワーグナーの〈ワルキューレ〉がいいな」と言ったのは、私という自己完結な闘争に明け暮れた者の退場に相応しいと思ったからだ。しかし家に帰ってよくよく考えてみると、現世で死んだ戦士が戦乙女(ワルキューレ)の選別でヴァルハラ護衛の兵士に再雇用される無限の帰属関係はまっぴら御免なので、この選曲は却下した。

(死出虫ではなくカメムシ)
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花粉が入らないよう閉め切った部屋に何処からか侵入した虫は「これは出棺にぴったりだろう」と聴いていたCD『ロシア未来派音楽』の上でお散歩。この中で特に葬式向きだと思うのはグネーシン〈彷徨える兵士の歌〉だ。死後もさまよえる自由を我等に!