脱腸構築

「こ、これはお尻からチューブが出ている様な…」「まさに脱腸構築」「ダサい…」審査員の口から否定的な、失笑にも近い意見が続出する中「この流線型こそ未来を象徴する祝祭的カタチだ!アスリートの躍動、観客の歓声が融合し一つの大きな鼓動となって、このハートスタジアムに響き渡るのが聞こえてくるようじゃぁないか!」という国民的建築家一人の賞讃によってアッサリとこのコンペ審査は終了した。この権威の意見に、同席していた元総理も「そうかな?」と0.01秒で納得したのであった。(多くの政治家は審美眼を必要としてない)
ところが、コンセプトとインパクトを優先し、建築科学的、経済的検証をせずに進めたハートスタジアム計画は、建設工事を目前にして怪しい雲行きになってきた。コスト、工期すべてが追っ付かず、肝心のお尻のドームがオリンピックまでに「間に合わない」という悲しい未来予想図が早くも描かれる状況に陥ってしまったのだ。おお!肉の付いていない臀部になんの魅力があろうか?肉のない臀部などクリープのないコーヒーに等しい!「え〜マジで?そんなら超シャビーでミッドセンチュリーな旧国立競技場に屋根でも乗っけて代官山のお洒落カフェな感じにリノベーションした方が良かったんじゃね。」今更そんなこと言ってももう遅い、あのネオクラシックを踏襲しながらも戦後モダニズムの若々しさを感じさせ、質実剛健でシンプルな美しさ備えた重厚なコロシアムは、天文学的な量のコンクリート片となって、どこぞの四次元空間に投棄され、既にこの世には存在しないのだから…。このように、滑稽劇ディスリンピックの序章は始まっているのである!
(以上、一部フィクションです。)

2015-05-22 21.44.56
新国立競技場「ハートスタジアム」通称:お尻ドーム
(脱腸構築の第一人者、カザ・マディド氏による設計)