石を養う

めずらしく早朝に目が覚めたので、自宅から徒歩40分の場所(目黒区柿の木坂)にある「松竹園盆栽水石販売所」というお店に行ってみた。冬枯れの木立よりも配石の多さが矢鱈と目につくこの吞川支流緑道が水石販売所に続くスト—ンロ—ドなのだ。と石との関連をこじつけ期待を膨らませつつ歩を進めると呆気なく到着!(案外近かった)少し立派な民家の庭先に、雨ざらしで痛み始めた木製の台が数台並び、上段には盆栽、下段には水石が多数陳列されている。だが「販売」してるふうには見えず「ご自由にお入り下さい」の看板がなかったら入店を躊躇したであろう。看板の文句どおり気難しいところのまったく無い老園主は「まだ勉強中で買えません」という面倒な客にも、水石についての知識を教えてくださった。
なるほどそうか、と膝を打ったのは「養石には五十年以上の歳月を要し、石を養い終える前に人間のほうがおっちんじまうので(養石済みの)石を売っている」という販売所の存在意義であった。この耳馴染みのない「養石」とは、この販売所の棚に並べられた石たちのように、山岳や渓谷で探石し採取してきた石を野ざらしにすることで「時代を付け」鑑賞石に育て上げる大切なフ°ロセスなのだという。この「時代付け」を加速させるために愛石家は毎日ホ—スで水をかけ日光に曝すのだという。自然界で風雪に曝された以上のストレスを大事な石に(敢えて)与えるのが愛情なのだから、なんだかヘンだ。

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園主の筆による気さくな看板

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私が気に入った石(10センチ程)はこんな石(だったような気がする)
この石は昭和33年に広島・太田川が土砂崩れし氾濫したさい、海岸まで流され発見されたのだという。そのような由来と六十年近い養石(時代)で1万5千円