〈麺紀行〉ムショと長シャリ

「日中は夏日」の予報で、本日予定していた高崎の旧陸軍火薬工場と古墳見学は中止し、前橋のみ散歩することにして、手打ちうどん→朔太郎記念館→文学館→アーツ前橋の順で移動することに。両毛線新前橋駅に着くと群馬特有の熱風が吹いていてかなり暑い!群馬の森計画を縮小して正解だった。専門学校は多いが人影のない大通りを抜け徒歩20分、小相木にある屋号の無いお店、ズバリ『うどん屋』に到着。昭和の食堂風の店内は昼前だというのにほぼ満席で、客の多くは常連と見受けられる。黒装束でいかにも余所者の私は、隣席の客が白い皿に盛られた「もりうどん」にオプション天ぷらを添えて食べている様子をマネて「もりうどん」と「ゲソ天」を注文。手打ちの乱切りうどんは、いろんな太さや形状が混在し歯ざわりのバリエーションが一皿で堪能できる。そして「ゲソ天」がうまい!ゲソの概念を覆す肉付きの良い発達した脚!普段よく食す白い棒状イカより俄然うまい。これで440円安い!

感動の余韻を残しつつ高速回転のうどん屋を出ると利根川はすぐそこだ。朔太郎が憂愁をうたった利根川は、想像以上に大河でコワい感じがした。時折畝りを立てる翡翠色の川面を恐る恐る覗きながら大橋を渡ると、レンガ造りの城壁のようなものが眼前に現れた。「刑務所の敷地です」の看板で、この美しい壁が実はムショの塀であることを知った。刑務所では麺類のことを「長シャリ」と隠語で呼ぶときくが、前橋刑務所で出される長シャリは、やはり上州うどん…なのだろうか?

(人間の見えない町)
IMG_8566
小相木ではブロック塀もネクタイをする

(打ちたて茹でたて)
IMG_8567
濃いめのつゆが合う。もりうどん370円 ゲソ天70円

(地獄の番人)
IMG_8584
城塞の佇まいに相応しく巡らされた堀には、大きな鯉が多数生息している。
人間の気配を察知しワーっと集合するが、エサをくれない人だとわかるとアっという間に去る。(私はグミしか持ってなかった)