逃げ、破壊する。

千種総合教室の洋裁指導者が敵視する《着崩れ》とは一体なんなのか?
…それは『手を挙げると上着の前が開いてしまう』現象のことなのだ。

日常生活での何気ない動作、例えば電車の吊革につかまる、バンザイをするなど、そんな腕の上げ下げによって生じる「前とじの開き」を指導者は、〈逃げ破壊する〉着崩れた醜態だと糾弾している。私たちが腕を上げたその時、上着の左右の前合わせは「逃げ」そしてだらしなく開き「破壊」してしまう…無意識に繰り返されてきた現代衣服の敗走と破壊活動。世紀末的なこの状況を打開し勝利せんと、かの指導者が発明したのが『特許』であり、いまだ着崩れを許す大衆にむかって革命(特許)を宣傳したのがこの看板群である。

〈ハイセンスな羨望の素敵な魅力〉
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「此の開きを変える事出来る」
素敵な明日が見えてくる
あらゆるヒントと答えに出逢える
深く、美しく本物、時が贅沢に流れる
(上着を閉じれば…そこから理想郷が広がる)

〈逃げ 破壊する〉
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(理想を謳う革命家は、白を黒だと断言する勇気を持たねばならない。)
左の現代悪を示す破壊した着衣例と、特許スタイルのポーズは明らかに違う。
悪=一般の女性は手を頭より高く挙げ、善=特許の女性は脇を締め気味に、手は肩付近までしか挙げていない。要するに、条件が違うので全く比較になっていないと言えるが、これより腕が上がらない設計の (窮屈な) 上着である可能性もある。

〈人生勝利の源泉〉
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ちょうどこのとき自作の上着を着ていたので、門を叩き指導を仰ぐべきだったような気がする…(がそんな勇気は無い)。細かい採寸で体にピッタリ (窮屈) なこの服は、腕を上げても逃げ破壊しない!