推薦文(4)赤色エレジー

〜推薦文(4)『赤色エレジー』〜

親がつけてくれた「幸子」という昭和っぽい名前は、ハタチの頃に、呪術的な由来のある古代言語「サ・チ」の方がカッコいいと思って、漢字幸子を捨てて片仮名サチコにしました。まだ私が幸子だった子供時代に、あがた森魚の『赤色エレジー』を父親の調子っ外れな歌声で聞かされて「幸子の幸は何処にある…」の切ない歌詞から、名前とは裏腹に幸薄い幸子の運命をさとり、まだ世間を知らない幼心にも暗~いワルツの調べが重たかったです。…………
その後、だいぶ大きくなってから原作の漫画『赤色エレジー』を読み、「小梅ちゃん」の林静一が芸術漫画家だと初めて知りました。ヌーベルヴァーグのようなコマ割、詩のような言葉。そして陰影を強調し「描かずとも存在を感じさせる」あの表現!白と黒のコントラストの目映さは、白黒世界の素晴らしいお手本です。

〈現代詩手帖と赤色エレジー〉
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裸電灯 舞踏会 踊りし日々は走馬灯….この美しく儚い歌詞の作者・あがた森魚は現代詩人として高く評価されるべきだと思う。

(本当は)
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当初推薦した漫画本は、杉浦茂シュールへんてこりん傑作集『イエローマン』だったが、絶版で仕入不可能とのことで断念…。永遠に敬畏され続ける杉浦茂先生。その超現実的ナンセンス作品群の粋を集めた良書『イエローマン』をぜひ皆様に読んで頂きたかった!

〈唯一者の漫画!!!〉
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これぞ創造的虚無!概念を破壊する天才よ!
変な顔をした不明の存在が次々登場し、異次元空間に突如放り出されたりするが、変な奴も異空間もお話とは特段関係無く、というより最初からお話は重要ではない。