思い出せフォト

不定期に、しかし必ず朝の8時に送信されてくる恒例の〈この日の思い出を見てみよう〉が今朝もスマホに届き目を覚ます。今回は4年前の今日6月15日の思い出写真で、そこには青森ACACのアトリエ棟と松の切株に集う青虫の姿が写っている。私はボンヤリとはっきりしない目でこれを見て、先日あった出来事を一気に思い出し朝から憂鬱になってしまった。

(どんなことかというと)3日前の午後、買い物に行く途中に、アスファルト路面に親指の先ほどしかない桃色のヒナが落下したのを見たのだが、天を見上げても営巣できそうな場所はないので、おそらくカラスの落し物に違いない。私には為す術もなくまだ息のあるヒナをそのままにし、遺骸を見るのが怖くて帰りは違うルートで帰宅したのであった。
一方で2015年の青森ACAC滞在制作中にも、様々な小動物の死を目の当たりにし、その大部分はこの八甲田山山腹に建てられたアトリエ棟が舞台であった。写真に撮られたフワフワ青虫(蛾の幼虫)のモヘアちゃんを誤って踏んでしまったり、また違うモヘアちゃんはこの巨大建築に錯乱したのか、自分を包む球状の繭を作らず、コンクリート床に生春巻きの皮みたいな変な物体を作り、糸を吐き尽くし剥き出しのまま死んだ。またある日の朝アトリエ棟に向かうと、外の長い廊下にガラス窓に集まった大量の昆虫の死骸とともに、一羽の小鳥の亡骸があった。清掃員のタミエさんによると、夜間飛行中の鳥にはアトリエの大きな板ガラスが見えず激突してしまうのだという。「ここで死ぬ鳥はみんな可愛い鳥だよ」と亡骸の始末をしながら言ったタミエさんの言葉が印象的で、なお一層小鳥の死を悲しいものにさせた。
美しい自然との対比と調和に成功したかのように見える名建築も、小動物にとっては危険な障害物でしかないことを思い出させ、死ぬとわかっても何もできない不甲斐なさに痛打する〈この日の思い出〉通信よ。送り主グーグルフォト様の思惑とはなんなのか?と雨なので外にも行かずに私は静かに考えているのだ。

2015年6月15日
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確かに私は青森にいた。