彩管報国

〈彩管報国〉の彩管とは絵筆のことで、すなわち「絵筆で国に奉公する」の意です。この言葉は林洋子さんの編著『藤田嗣治 戦時下に書く』で初めて知りました。私の死んだ祖父は、藤田と並んで〈彩管報国〉の双璧を成してた日本画の巨匠・横山大観に画材を届ける仕事をしていたので、間接的に〈彩管報国〉に協力していたのかもしれません。
戦地まで取材に行き戦争画のトップランナーとなった藤田にとって、画室で優雅に富士山ばかり描いていた横山大観はイケ好かない奴だったろうと想像がつきます。藤田はベッチャリと油絵の具を塗った前衛絵画や、富士山を通俗的に描いて稼いでる日本画がもて囃される世間に逆襲しようと、デッサン力を武器に実力勝負する戦争画に燃えたのか?活躍の場を提供してくれる軍部への阿りは、本心というより強かな「手段」のように思えます。そこまでやるか!と呆れつつ、軽薄な風潮を嫌悪する美意識高い系の気持ちもわからなくもないです。
….そんな藤田嗣治をめぐって林洋子さんとお話しするトーク会は、明日20日下北沢[本屋B&B]にて!(席はまだある・木戸銭¥2000/飲み物一杯付き) 是非ご来店くださ〜い。

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太平洋戦争末期の昭和19年。日本画材店「有便堂」店先から出征する祖父。
蘭印作戦に成功したセレベス島での思い出話はノンキなものが多かった。

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左下:座談会記録がハラハラさせる『戦時下に書く』
右下:何処の地に於いても美意識を堅持する『旅する画家』
そして右上:足立元さん最新著書『裏切られた美術』には、語られることの少ない藤田嗣治の漫画について書かれています。

『旅する画家 藤田嗣治』『予感の帝国』W刊行記念トーク
下北沢〈本屋 B&B〉
20日(木) 20:00〜22:00 (¥2000要予約)
〈歴史とアートのこれまでとこれからを考える・戦時下のフジタの活動を通じて〉
文化庁文化調査官でフジタ研究第一人者の林洋子さんと対談します。
詳細コチラ→〈本屋 B&B〉