豚耳とマインカンプ

このまえ渋谷に向かう地下鉄車内で、豚耳丸一枚にかぶりつく中年女性の隣にウッカリ座ってしまった。鼻をつく動物っぽい臭気を気にすることなくムシャムシャと完食し、煮汁の残ったジップロップをバッグにしまうと、今度はスマホで女ボディビルダーの写真を見始めた。おそらくこの豚耳携帯食の女性も肉体改造を趣味とする人で、常に高タンパク食品を摂取しなければならないといった強迫観念に駆られているに違いない。とはいえ車内マナーにはもう少し留意していただきたいものだ。と、かく云う私も、実は過去に隣席の乗客を不愉快にさせたことがあるのだが…。

それは3年前のこと、 井の頭線車中でヒ総統の『我が闘争』を読んでいたら隣に座っていた見知らぬ青年が、急に私の前に屹立し「そんな本を読んで面白い?」と義憤に満ちた眼差しで問いかけてきたのであった。そして「ええまあ…」という私の生返事を聞いたか聞かぬか、青年はスっと踵を返し電車を降りていってしまった。
戦犯書物を読む私への苛立ちが抑えられなかったのであろう正義の青年よ(もう二度と会うこともないが) まあ続きを聞き給え。質問への答えは無論「面白い」だ。この本には政治に不可欠な〈数〉の源である大衆をいかに煽動し愚民化させるか、その手引きが記されておりその方法は、単純でわかりやすい〈たった一つの敵〉を大衆に投入してやることだと、憎悪感情を利用した戦術が明記されている。かような悪徳の書にも、昨今の怪しい風潮への警鐘に役立つという利点が少なからずはあるというものだ。
だがしかし、第三者の気分に害を与えるのは本意でないのでヒトラーの本はお家で読もう(ミミガーは沖縄料理屋かご自宅で!)

(大獨逸)
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そういえば7月に取材を受けたドイツ国営放送のオリンピック番組は放送されたのだろうか?私と私の作品映像はドイッチュラントのお茶の間に流れたのか?音沙汰なく詳細不明