肺と告白

この悪事を今まで誰にも告白してないのですが…実は中学1年生の時に、わざと肺炎に罹りました。
そんな不正を犯したのも学校を完璧に休む為であり、夜間の発作で酸欠状態になり、昼間はボーっと気力なく怠惰に見える喘息では、如何せん病人の迫力に欠けるので、医者から「絶対安静」と告げられるように或る努力をしたのです。それは寒空の下での天体観測で体を冷やし、より体調を悪化させるという浅はかな計画で、毎夜双眼鏡で星を眺めた成果はレントゲンによって透写され、私の肺には白く不吉な星雲が出現した!これで学校関係者やご近所から仮病の嫌疑をかけられず正々堂々と療養生活ができるというものです。(今更だけど親不孝をお許しください…)

『魔の山』のハンス・カストルプ君は、結核の罹患証明(X線写真)を得たことで、いち見学者から正真正銘のサナトリウム住人に昇格したことを密かに喜んでいたが、私にはその気持ちがよくわかる。本日より自粛生活が解消され日常に戻る皆さまも、半病人のような暮らしに慣れて登校拒否児のような心境なのでは?とお察しいたします。

(肺病は深刻)
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(左)ニューヨーク・デンバー社の薬品広告冊子『肺炎』は、表紙の穴から肺臓が覗く不気味な作り。
(右)昭和14年発行/結核豫防會『療養讀本』からは結核治療の大変さが伝わる。
…「妄りに病気に罹るような巫山戯た真似は止し給え」と昔の私に忠告したい