日別アーカイブ: 2017年10月9日

詩人とステマ

1938年、ヒトラーユーゲント訪日を祝して『萬歳 ヒットラー・ユウゲント/ 獨逸青少年團歓迎の歌』を作詞された北原白秋先生。その揚々たるレコード発売と時同じくして、まさかこのような闘病生活を送っていたとは知らなんだ。
この『絶対健康』という新聞には、国民詩人として国威発揚その意気軒昂やよし!と益々盛んと思われてた先生自ら、当時の病状を記した文章が掲載されている。そこには視力が著しく低下し、最早わずかな光と物象しか視えない近況と、その絶望を吹っ飛ばす救世主「ネオス」の存在が力強く報告されている。
…はて?
記事中に突如登場したこの「ネオス」とは一体何者か?もしかして眼の守護神か何か、そんな信仰の対象かな?と想像してたら、なんと!本から薬まで手広く商売する実弟・北原鐵雄の会社「アルス」の主力商品の名前ではないか!(この新聞の正体はアルス社のステルス広告だった)

大詩人の窮境にウッカリ憐憫の情を寄せてしまったら、何でも効く怪しい万能薬を買わされちゃうから気をつけて!

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半ば強迫的な『絶対健康』その下には国家の命題「體位向上」の文言も
昭和13年10月1日付 発行所:健康新聞社

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『視力を失ひて』おいたわしや白秋先生!
糖尿病から腎疾患を併発。それが原因で眼底出血し、両眼視力の回復の見込み無しと医者にサジを投げられたが「ネオス」服用で回復の兆しが…「奇跡的に糖も蛋白も出なくなったよ。此の分なら眼の方もいつか正しく光明を受け入れるものと信じてゐる。有難う。兄の弟に對する感謝は、ネオス・ネオスの百萬遍だ。有難う。」…この四年後にあえなく逝去。

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新強壮精力剤「ネオスェ-」の十大作用
結核菌を殺す/悪血を浄化/遺伝病毒を排除/発育促進などなどスゴい効能が…。

昆布の1500倍のヨード!?過剰摂取が病気の原因になるって当時は知られてなかったのかな?